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【やり直し軍師SS-604】知られざる戦い(4)

いよいよ明日、新刊発売!


 キツァルの砦が防衛拠点として回復するまでに、およそ半年の時間を要した。


 それでも完全な修復ではない。どうにか最低限の機能を回復させたに過ぎず、本格改修はまだまだこれからだ。


 これだけの時間がかかったのには理由がある。一つは人手、もう一つが敵。


 人手に関しては仕方がない。こればかりは時間をかけて新兵を育ててゆくしかないこと。

砦の修繕技術だけではなく、戦える戦士を育てていかなくてならないのだ。


 しかしそれを阻む敵がいる。ゴルベルである。


 あやつらは非常に厄介な手を打ってきた。近隣に潜伏する野盗を利用し、こちらを翻弄する作戦を繰り出してきたのだ。


 ゼッタ平原の周辺は、他の地域に比べて野盗が多い。それはゼッタ平原特有の理由に由来する。


 すなわち商業的な要因である。


 大陸最大の大港、ゲードランドを擁するルデクでは、海を渡った諸国から日夜様々な品が持ち込まれている。


 商人たちはそれらの商品を売りさばくため、ゲードランドを起点として、北の大陸の各国へと散らばってゆく。


 ゲードランドから各国へ向かう方法は、海路と陸路に分かれる。この辺りの選択には様々な理由があるらしいが、そこはボルドラスの専門外。


 ともかく、山に囲まれたルデクでは、陸路で諸国へ向かう場合のルートは限られている。


 ルートの多くは山道を抜けねばならず、距離は短縮できても効率が悪い。そこでゼッタ平原だ。


 広く平坦なゼッタ平原であれば、まとまった量の品を運べるため、多少遠回りになっても利幅は大きい。


 商人が集まるということは、すなわち金が集まるということ。そして金が集まるところには、悪党も集まる。


 ゼッタ平原の南北の山裾には広い森林地帯があり、野盗どもはその中に潜み、日々、平原を通る商人の荷を狙っていた。


 もちろん第四騎士団も定期的に野盗狩りを行ってきた。だが、いくら潰しても湧いてくるのが野盗というもの。イタチごっこであることは否めない。


 ゴルベルはそんな野盗どもを利用することを思いついたようで、挑発行為に近い野盗の出没が活発化している。


 もちろん敵は野盗だけではない、ゴルベルの部隊とも再三に渡り小競り合いが続く。


 キツァルで大きな攻防戦があったばかりで、流石に大規模な兵を動かしてはこないが、周辺の小砦を狙った激突はすでに幾度かあった。


 第四騎士団はその都度駆り出され、翻弄されているのだ。正直、後手後手の状態である。


 いやらしい事に、野盗の討伐かと兵を差し向けてみれば、ゴルベル兵が待ち構えていた、という事例も出始めた。


 余剰な兵を出せない状況下で、それら小さな戦いが、見逃せない被害を重ね始めている。


 野盗という不確かなものを利用しながら、繊細で細やかな戦略。まるでこちらの呼吸を読んでいるかのように、実に厄介な動きだ。


 相当な策士が裏で動いているように思うが、その顔が見えてこない。


 ゴルベルの有名どころといえば、ローデライト=エストがまず思い浮かぶ。しかし、このような手口はあの者のやり口ではないように感じる。


 尤も、何事も決めつけるのは良くない。まずは冷静に状況を見極める必要があった。


 敵にだけ視線を向けているわけにもいかない。この状況下において、第四騎士団には大きな課題が浮彫になっている。


 新卒兵の多さも相まって、現在の第四騎士団は些か機動力に乏しいのだ。


 できれば、こんな時に細かな動きで迅速に対応できる、独立した騎馬隊が欲しいところだ。が、まっさらな状況から優秀な騎馬部隊を作るには時間も実績もない。


 騎馬隊ならば第二騎士団を頼りたいが、この戦時下では状況的に難しいだろう。


 ならば例えば、通常の騎馬隊ではなく、装備を固めることで練度をカバーするのはどうだろうか。


 いや、まず中央から予算が出ない。今、中央の視線は東に向いている。一応それとなく打診しておいても損はないが……。


 いずれにせよ、今すぐにどうこうできる案件ではないな。ないものをねだるより、今ある戦力で、ゴルベルを弾き返す方法を考えたほうが建設的。


 そんなことを考えていた頃。


 日々をどうにかやりくりしていたボルドラスの元へと、一つの朗報が届いた。


 帝国の二度目の侵攻。それをあの若き指揮官、レイズが再び防ぎ切って見せたのである。


「大したものだ!」


 報告を耳にしてすぐ、ボルドラスも思わず大きな声を上げた。


 これは西側の戦線においても大きな出来事だ。


 ゴルベルは帝国の侵攻をあてにして動いた部分が少なからずある。帝国が思うように行っていなければ、ゴルベルの動きにも影響が出るはず。


 ボルドラスの予想通り、その後しばらくゴルベルの攻めはやや勢いを減じたように見えた。一方で野盗どもの挑発行動は未だ旺盛。


 ゴルベルの動きが鈍い今、野盗どもを一網打尽にしておきたい。だが、野盗討伐に注力しすぎると、ここぞとばかりゴルベルが大きな動きを見せるやもしれず、もどかしい時間が続く。


 キツァルの砦に珍客が訪れたのは、そんな折であった。


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― 新着の感想 ―
 皆書いているけど、これはサクリだよなぁ。ホントいやらしい策だ。野盗にしてみても対ルデクという意味では利害が一致しているので、ケツモチ的にゴルベルがいるならノリノリでやるだろう。
これ重装騎兵の成り立ちってことなのかな?
さすがサクリ、嫌らしい策だわぁ笑 サクリがドラクの下にいたらえげつないことなってただろうなぁ
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