【やり直し軍師SS-605】知られざる戦い(5)
SQEXノベル書籍版 第五巻
ガンガンコミックスUP!(GGUP!)コミック 第二巻
本日無事に発売いたしました!!
今回もお手に取っていただければ嬉しいです!
書籍版は4万文字の大幅加筆によって、あの戦いがより重厚に!
コミックは主要メンバーが次々登場!
ちなみに2年前の4月7日は書籍版一巻の発売日でしたので、ひろしたよだかデビュー2周年になりました。
これも皆様の温かいお言葉やご支援のおかげです!
3周年もお祝いできるように引きづづき精進して参ります。
どうぞよろしくお願い申し上げます!
「来客? 誰だ?」
ボルドラスの問いに、報告に来た部下はやや困った顔をする。
「それが……騎士団の関係者とだけ……」
普段、そのような曖昧な情報で、知らぬ相手と会うことはない。というか相談に来る前に、城門で追い返すような内容だ。
しかし部下は、わざわざボルドラスの元までやってきた。そのことにボルドラスは興味を覚える。
詳しく話を聞けば、其奴はすでに執務室のある建物の前までやってきているという。どうやら、言葉巧みにそこまで押し通ってきたらしい。
豪胆なことだ。
もし今、ボルドラスが捕らえよと一言命じれば、逃げ道などなかろうに。だが、この行動が、敵意がないということを暗に伝えているようにも感じた。
「……一人か?」
「はっ!」
「……よし、会おう。連れてこい」
「……よろしいのですか?」
「うむ。もちろん、武器などの携帯は許すな。きちんと預かってから通せ」
ボルドラスが指示を出してから、さして置かずに客人はやってくる。その姿を見て驚いた。
「なんと、貴殿でしたか!?」
姿を現したのは、先日帝国の侵攻を食い止めた指揮官、レイズである。
「お忙しい中、失礼する」
「いやいや、それよりも一体どうして……いや、まずは祝いの言葉が先ですな。先の勝利、実にお見事」
「いえ、皆様の協力あってのことです」
そつのない答えを返すレイズへ座るように促しながら、ボルドラスは考える。なぜレイズが名乗らずにこの場にやってきたのかを。
部下がレイズの顔を知らなかったのは無理もない。帝国との戦いに第四騎士団も参加したとはいえ、レイズはあれが初陣。遠目から見ただけで顔を覚えるのは無理というものだ。
だが知名度云々は、名を名乗らぬ理由にはならない。
レイズは穏やかにボルドラスを見ている。挑発的な視線ではないが、同時に、どこか己を見透かされるような心地が胸をよぎった。
もしや、品定めされたか。
ボルドラスがレイズを詳しく知らないように、レイズもまた、ボルドラスをはじめとした各騎士団長のことを詳しくは知らぬだろう。
わざわざ一芝居打つような真似をしたのは、このボルドラスがどのような反応をするかを、観察しようとしたのでは?
あの帝国の侵攻を、すでに2度跳ね除けるような男だ。十分にありうる。
ひとつ、かまをかけてみよう。
「……貴殿には、不用意な騎士団長と映りましたかな?」
ボルドラスの言葉に、レイズはわずかに頬を緩ませた。
「今のお言葉で、むしろ、冷静かつ豪胆なお方とお見受けいたしました。さすがはボルドラス様」
品定めしたことを否定もせぬか。これはまた、強烈な個性よ。
しかし、こういった人間は嫌いではない。何かを成し遂げようとする強い意志があるからこそ、己の行動にブレがないのだろう。
まあ、そのような男でなくては、帝国との戦いという責務を負えぬ。
それにしても、ゼウラシア王もよくこのような人材を見つけてきたものだ。このルデク存亡の危機に現れた傑物。運命の巡り合わせというものは面白い。
ボルドラスが余計なことを考えて微笑むと、レイズは少し不思議そうな顔を見せる。
「……失礼、いや何、豪胆という言葉、そっくりそのままお返しいたそう。それで、一体どうしてここに?」
「王には視察と伝えて来ました」
「視察? それは随分と悠長な。帝国の方は大丈夫なので?」
「帝国は先だっての敗北を受けて、軍容を見直すことでしょう。さすがに無策で三たび攻めてくることはない。むしろ今でなくては、各地を見て回る機会はないと」
「なるほど、一理ありますな。それでも良く、王が許可されたものです」
レイズの言い分も理解できる。帝国もこれ以上の連敗はさすがに威信にも関わるはず。一旦、ルデクに対して戦い方を見直す可能性は高かろう。
だがそれは、あくまで予想の範囲に過ぎぬ。
ボルドラスがそうに指摘すると、レイズはイタズラをした子供のように笑う。
「……実は、西に行くとは伝えておりません。陛下は私が部下と共に、東の視察に向かっていると思っていることでしょう」
「なんと。では王を騙してここへ?」
「騙してはおりませんよ。王には確かに『視察に出る』とお伝えし、許可を得ましたし、部下は実際に東へ向かいました」
あまりにも堂々としているので、ボルドラスもつられて笑ってしまった。なるほど、先ほど名前を名乗らなかったのは、こちらの性格を見定めると同時に、名を明かせぬ事情があったか。
「それは確かに嘘は言っておりませんな。しかしいずれにせよ、どうしてそこまでしてわざわざ?」
「ゴルベルが宣戦布告した以上、戦場は東だけではありません。特にこのゼッタの重要度は大きい。継戦のためには視野を広く持っておきたい。そのために一度現地を見てみたかったのです」
ああ。今確信した。この者はやはり非凡だ。帝国という強大な相手を正面にして、ルデク全土を戦場を見定めようとしている。そして自分にはそれができると信じておるのだな。
「……なるほど、では、ここには案内を頼みにいらしたのか」
「可能でしたら」
協力してやりたいところだが、今はともかく人手が足りていない。せめて、野盗の動きが静かになれば、多少は余裕もできようが。
と、ボルドラスはそこで、改めて目の前にいる若き異才を見る。
「……ところでレイズ殿、案内の代わりと言ってはなんだが、少々相談があるのですが……」
使えるものはありがたく使わせてもらう。それがボルドラスの流儀である。




