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7   学者→使用人

 数日後。

 食堂で朝食を済ませた後、研究室に行こうとしたら、汐音に止められた。

「流華様、今日はパーティーでございますよ」

「え? あ、そうだった……」

 廊下を覗いてみると、執事さんスタイルの学者さんたちがいた。

「さて、流華様もメイド服に着替えますか~」

 楽しそうな汐音に、わたしは心の底からげんなりした。


 今日は、三ヶ月に一回ある、王宮でのスプリングパーティーの日だ。

 夕方から夜にかけて春の花々を見ながら正殿のホールと南の庭で、王族や王国中の貴族が集まって催される。

 一応伯爵家なのでシャネリア家も毎回招待されていて、わたし以外の家族はみんな行っていた。わたし? わたしはいつも通り図書館に入り浸ってたけど。社交界に出たくなかったとか、面倒だったとか、人と関わりたくなかったなんてことは絶対にないよ? でも、今回は母から手紙が来て、参加するように命令された。

『ゴメンねぇ、悪いんだけど王宮のスプリングパーティー出てくれない? 今回はちょいと仕事が立て込んでてお父様も斗真トウマも行けそうにないの。そんなんだしあたしと梨菜だけってのもナンだから流華も出てくれると嬉しいんだけど。出てくれるなら、前欲しがってた綺麗な羽根ペンあげるわよ? お母様より』

 ちゃっかり羽根ペンに釣られたわたしだから、伯爵家の長女としては関係ある。

 でも、そのパーティーが学者であるわたしたちになんの関係があるのか、ってところなんだけど。

 実は、人手が足りないそうなのだ!

 ……まったくもって意味が分からない。だけどみなさんは慣れっこのようで、面倒臭がるよりむしろ嬉々として執事さんの服を着ている。

 王宮にはたくさんの使用人がいる。だから、普段のパーティーで学者を駆り出すなんてことはない。だけど、一年に四回あるこのパーティーは、盛大すぎてたくさんの使用人でも足りなくなってしまうほどなんだそうだ。

 その結果、忙しいけど不規則に休める学者が助っ人として使われる、らしい。

 それだけならまだいいんだけど。

 わたしは、はっきり言ってちっとも乗り気でない。

 

 なぜなら、メイド服を着なければならないからだ!


 それを凍砂さんに愚痴ったらものすごく笑われた。

 リトポールさんに文句をぶちまけたら吹き出された。

 だって、メイド服って短いじゃない。足がスースーすると落ち着かないし、気持ち悪いし、だいたいわたしが着たら似合わないよ。変だよ。だから嫌だ!

 と、汐音にも言ったんだけど、どうせなら男装の執事にさせてくれと頼んでもみたんだけど、

「流華様は可愛くてお美しいですから絶対似合いますよ!」

と断言された。お世辞は嫌いなんだけどなぁ。

 てなわけで、拒否権のないわたしはメイド服・・・・を着て使用人に紛れ込むのだ。嫌だなぁ。


 汐音に渡されたのは、典型的な黒と白のフリフリのメイド服だった。ほんと、嫌だなぁ。

 スカートが短くてそわそわしているわたしに、何が楽しいのか、汐音は嬉々としてわたしの髪を綺麗に巻いたうえツインテールしやがった。頭の上で揺れる髪がものすごく邪魔だ。ムカつく。普通のメイドさんでもこんなことしないと思うんだけど。なんで巻くのなんでツインテールなの。

 さんざんあれこれしたくせに、ほとんどメイクはしないで準備は終わってしまった。ノーメイクツインテール。面白い響きだけどちっとも笑えない。凍砂さんが見たら笑うに違いない。リトポールさんが見たら馬鹿にするに違いない。はぁ。

「わあ、流華様お可愛いです!」

 汐音が頬を緩めまくって言った。嘘つけ。

 わたしは汐音に連れられて部屋を出た。執事さんがくしゃさんはもう行ってしまったみたいで、廊下はがらーんとしていた。このまま侍女さんたちに紛れられたらいいのにな。……こんな派手なやつが、無理か。これならどちらかというと長いパーティードレスの方が絶対良いに決まってる。


 わたしが汐音に言われて行ったのは正殿だった。今だけはメイド服の侍女長さんに従ってあくせくと働きます。あ、侍女長さんのスカート、膝より長い……。

 あれこれ指令を出され、テーブルを用意したりお掃除をしたり。正殿にいるのは侍女さんが中心だったので、まだ学者さんたちにこの格好は見られてない。このまま終われるかな~?

 と思った矢先、執事さんがやってきた。

 正確には、執事スタイルのリトポールさんですねー。

 わたしはさっと身を隠したが、あっさり見つかってしまった。

「あれー、シャネリアさん?」

 そして、わたしの格好を見るなり変な顔になるリトポールさん。これは笑いを我慢してる顔だ。ムッ。

「すいませんねーこんな格好でー」

「いやいや、似合ってるよ。なかなか可愛いと思うけど」

 不貞腐れたわたしに半笑いで弁解するリトポールさん。いいよ別にお世辞とか言わなくて。

「それより、用事があったんじゃないんですか」

「あ、そうそう。では、またね!」

 そう言うと、リトポールさんは颯爽とどこかへ行ってしまう。

 はぁ、嵐が過ぎ去ったようだ。


 なけなしのプライドを捨てて頑張ったおかげか、午後の三時を過ぎたあたりで仕事が終わった時には達成感が半端なかった。服装以外は意外と楽しそうな使用人ライフ。これは学者さんたち楽しいでしょうね。

 もう終わっていいと言われて学者棟に戻ったわたしは、ベッドにダイブしそうになって汐音に止められた。とりあえず風呂に入れとタオルを渡される。言うなり、ドレスでも取りに行くのか部屋を出ていく汐音。そういえば、これからは伯爵令嬢として動かねばいけなかったんだ。わたしもはやくお風呂入ろっと。

 今日はすごく、忙しい。

注)斗真は流華の兄です。

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