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きっかけは【漢字辞典】〜名前の長い孤児が生きる、漢字が魔法になる世界〜   作者: 七瀬
第一章

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9.収穫のない帰り道


孤児院への帰り道、司祭様から聞いた話を整理しながら歩いた。


・魔力は器

・必要とする人に与えられる

・救う者に与えた

・成長する人もいる?

・400年前に賢者が居た

そしてあの【漢字辞典】は大賢者が持っていた。


俺はこの世界で生まれ、父さんも母さんも居る。だから俺がここに居るのは【転生】ということになる。


じゃあ、大賢者は?


漢字辞典が過去に実在していたなら、それを持った状態でこの世界に来たことになる。

そうなると転生ではなく転移という事か?


いや…漢字辞典って普通持ち歩くか?

辞書なんて、受験生でも家かロッカーに置きっぱなしだろ。何キロあると思ってんだ。しかも【国語辞典】じゃなくて【漢字辞典】だぞ。

そんなん学生時代に使ったっけな?


俺は、おぼろげにしか覚えていない前世の学生時代のことを思い出す。


後ろの黒板の下がロッカーになっていて、そこに荷物を入れていた。中に辞書もあった気がするけど、国語辞典とか持って帰るのが面倒な資料集だった気がする。

漢字辞典ってちゃんと見た記憶が無いかも。


漢字オタクか?辞書で読書するタイプの人間か?

誰だよ、漢字辞典持ち込んだ大賢者!!


「だあぁーーっ!! 賢者の名前!聞いとけば良かった!! どうせ佐藤とか田中とかそんなんだろ。」


名前を聞いたところで何がわかるわけでも無いが、日本人だという確証があれば希望が持てる気がする。結局ルナ姉ちゃんが魔法を使えるようになる手がかりは得られなかった。


頭をボリボリと掻きながら後悔していると、道の先を1羽の鳩が歩いていた。

むしゃくしゃした気分のまま俺はさっき司祭様が見せてくれた『刃』を指先で描いた。


手裏剣の様なイメージで鳩にそれを投げつけると、意外にも一発で頭に当たり、地面に倒れた。


「出来ちゃった、、、。 でもこれで今日は肉が食える‼」


日本の記憶を思い出していた俺は、どうしょうもなく腹が減っていた。

カレーにハンバーグ、オムライス。自分の名前も思い出せないのに、好きな飯はどんどん出てくる。


仕留めた鳩に近づくと首元から血がドクドクと噴き出していた。

うわっ…  グロくね…?


え? 俺これ持って帰るの?

動いたりしない?


試しにそばに落ちていた木の棒で突いてみたけど動かない。

つか俺これ捌けるの?


ムリムリムリムリムリムリ! 絶対ヤダ!!


でも仕留めた責任としてここにこのまま放置する事は出来ない。そんなのただ殺しただけになる。


とりあえず孤児院には持ち帰る事にして、足を指先でちょんと触ってみようとしたが、どうしても無理だった。

仕方なくその辺にあった大きめの葉っぱて足を包み、恐る恐る持ち上げた。


ビタビタと足元に血がにじみ、汚れた靴をさらに汚した。

俺は鳥肌をたてながら、それを持って孤児院までの帰りを急いだ。

ご覧いただきありがとうございます。


次回明日17時頃投稿予定です

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