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きっかけは【漢字辞典】〜名前の長い孤児が生きる、漢字が魔法になる世界〜   作者: 七瀬
第一章

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7.蒸かした芋とアンの忠告

洗濯物を取り込んだ俺は、ルナ姉ちゃんがトム兄ちゃんに凭れて眠っているのを見つめていた。


額から汗が滴るほど集中していたルナ姉ちゃん。書き順も合っていたなのに発動しなかった。

【才能がない】【いらない子】そう呟いた言葉が何度も頭の中をぐるぐると回っていった。

イメージ、書き順ほかにも発動条件があるのかもしれない。

それが【才能】【魔力】なのか? では成長と共に少しずつでも伸びるものなのか?


ーカンッ、カンッ、

ふと、我に返って音のなる方向を見つめると、またかまどに火をつけようとしていたアンと目が合った。

「エル、もう一回着けてくれる?」

隣にしゃがみ込み、俺は今朝と同じようなに『火』を指先に描いた。


「本当に上手に使うわね。……ルナ姉ちゃんにも教えたの?」

「うん。でもルナ姉ちゃん『糸』が発動しなかった。俺の教え方が良くないのかな。」


薪に燃え移る火を見つめながら呟くと、アンは俺の頭をなでてくれた。

「去年もその前の年もそうだったの。私もルナ姉ちゃんもトム兄ちゃんも魔法が使えなくて、洗礼後に口減らしでここに来たでしょ?魔法が使えるようになったら家に帰れるかもしれないって、新しく魔法を習った小さい子や院長先生に習って何回も練習したけど…。だからエルが悪いわけじゃないの。」

「…でも、、、。」


「私は『火』も『水』も使えないから魔法の才能はないんだって諦めてるけど、ルナ姉ちゃんはまだあきらめ切れてないのね。毎年洗礼を受けて働き口を見つけた子たちはここを出ていくけど、年上組はもう私たち3人だけになちゃったし。」


そういってアンは俺の手にほんのりと温かい芋を手渡してくれた。

「みんなには内緒よ。 さっき蒸かしたの」

拳よりも小さい手の上の芋からアンに目線を移して俺は聞いてみた。

「もうルナ姉ちゃんに魔法教えないほうがいいのかな?」

「そうね…。頑張れば絶対にできるようになるなら、いいのかもしれないけれど…。」


前世の日本を、漢字を知っている俺なら教えられると思った。現にフィリップもそうだった。でもルナ姉ちゃんは違った。


集中もしている、書き順も合っている。でも発動しない。

【才能がない】ルナ姉ちゃんがさっき言った言葉がまた頭の中でぐるぐると回った。


アンはその後何も言わなかった。

ただ、かまどの火を見つめながら小さく笑った。

ご覧いただきありがとうございます。


次回明日12時頃投稿予定です

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