表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
きっかけは【漢字辞典】〜名前の長い孤児が生きる、漢字が魔法になる世界〜   作者: 七瀬
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/54

48.ルナバッグ工場③



「さーて、今日も始めるわよ!」


作業場にカストルさんの声が響き渡る。

ルナバッグの生産が軌道に乗るにつれて、噂を聞きつけた人たちが次々と集まり、働く人たちの数はついに50人まで増えていた。


30人の縫製班と、20人の刺繍班に分かれてエミルダさんの作業場のスペースを最大限に借りている。

そのため、これ以上人を増やすのは物理的に不可能だったが、人数が増えたことで生産体制は完全に最適化されていた。



その結果、一日の生産数は目標としていた100個のペースでしっかりと落ち着きを見せるようになった。

700個という途方もない数字も、この調子でいけば一週間足らずで達成できる計算になる。



俺の日常のルーティンもすっかり定着していた。

午前中はエミルダ先生のそばで木箱に付与魔法をかけ、ノルマを黙々とこなす。そして昼からは、刺繍班に合流して魔法の固定作業を手伝うのが日課になった。



さらに、嬉しい助っ人も加わっていた。

作業場の一角にある託児スペースには、孤児院の小さな子供たちを連れたアンが、手伝いに来てくれるようになった。

普段から下の子たちの世話に慣れているアンがいるおかげで、母親たちはより一層安心して針仕事に集中できている。


アン曰く、「5人見るのも、10人見るのもそう変わらないわ」という話だった。

絶対にそんな事は無いだろうとは思うが、アンの優しい提案を俺は嬉しく受け取った。



しかも今日は日雇い仕事として、カイも魔法班の一員として、手伝いに駆けつけてくれていた。


作業場が活気に満ち溢れる中、いつものように主婦たちが手を動かしながら、楽しげな井戸端会議を始めている。

今日の話題の中心は、僕らの雇い主であり、ギルド長のカストルさんだった。



「ねえ、カストル様って本当に素敵よねぇ」

「あの洗練された美しい立ち居振る舞い……鮮やかなドレス……見惚れちゃうわよね」

「分かるわぁ。気さくに声をかけてくれるし、おまけにあんなにお洒落で……」



主婦たちにとって、凛とした美しさと強さを併せ持つカストルさんは、すっかり憧れの的となっていた。


「あたしたちの親の世代は、男のクセに女のドレスなんか着てって言う人もいるけれど、あれだけの似合ってたら…ねぇ」

「何というか…私たち女性にはない色気、みたいなものがあるわよね…」



そんな中、針を進めながら、ルナ姉ちゃんがふと会話に混ざった。


「……そういえば私、この間すごくびっくりしたんです」


話を進めるその頬は、夕焼けの様に少し赤らんでいる。


「どうしたの、ルナちゃん?」


「カストル様、この鞄の件で刺繍協会の会長の貴族のご夫人にお会いした帰りに、孤児院にいらしたんです。


いつものドレスも、もちろん素敵なんですけど、あの時は、男性の騎士服を着ていらして……。

黒い大きな馬に乗っているのが、すっごくかっこよくて、まるで物語の王子様みたいでした……!」


ルナ姉ちゃんは両手で自分の頬を包み込み、うっとりとした表情でそう呟いた。

惚れ惚れするようなカストルさんの姿が、ルナ姉ちゃんの心に強く焼き付いていたようだ。


「まぁ、実際あの時は別のことに驚いて、それどころじゃなかったんですけどね…」


最後に少し照れた様なルナ姉ちゃんは、また針を進め始めた。



その会話を、少し離れた作業台から聞いていた俺は、「へえ、ルナ姉ちゃんカストルさんのこと、そんなふうに思ってたんだ…」と、なにげなく思っていた。



だが、その隣で同じように手を動かしていたカイの様子が、少しおかしかった。


「……フンッ―」


カイは手に持っていた布を雑に置き、ぶっきらぼうに鼻を鳴らした。いつもは飄々としている彼の顔に、なんとも言えない不機嫌そうな、拗ねたような色が浮かんでいる。



―あれ、カイ、 どうしたんだろ……?



首をかしげる俺をよそに、カイは視線を窓の外へと向けた。



ご覧いただきありがとうございます。

次回、明日17時頃投稿予定です


★や評価、ブックマークなども

本当にありがとうこざいます。


励みにしておりますので、よろしければポチッとしていただけますと幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ