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きっかけは【漢字辞典】〜名前の長い孤児が生きる、漢字が魔法になる世界〜   作者: 七瀬
第一章

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32.裁縫教室と青白いドラゴンの記憶



翌日の休息日、一緒に洗濯をしながらルナ姉ちゃんに声を掛けた。



「ねえ、ルナ姉ちゃん軽量魔法の刺繍って出来る?」



手元の水桶に視線を落として、手を動かしたままルナ姉ちゃんは答えた。



「うーん…刺繍自体は出来るから教えてあげられるけど…


糸魔法が出来ないから、私がやるのは無理ね。」


「そっか…」



なんて言っていいか分からなくて、そのまま手を動かしていると、ルナ姉ちゃんが薄く笑ってから息を吐いた。


「そうね、とりあえず教える事はできるから、やってみる?」


急に顔を覗き込まれて一瞬びっくりしてから、俺は頷いた。



洗濯を終えた俺達は、食堂の椅子に横並びになって針を持った。

どちらも目の前には布切れと、俺が魔法で出した糸が置かれている。



「さて、まずは針に糸を通してみて。」


「はーい」


―えっと…… なかなか入らないな…



「ふふっ ゆっくりでいいわよ。」


頬杖を突いたルナ姉ちゃんが俺の手元を見ながら、コロコロと笑った。


「ルナ姉ちゃんこれ入らなくない?」


「そんなに焦らないで。ゆっくりやれば入るわよ」



―ヤベッ! どんどん先っぽがボサボサになっちゃう!糸通しがほしい〜!!






「えっと…まだ?」



何度やっても針に糸すら通せない俺に、痺れを切らしたルナ姉ちゃんがため息を吐いた。


仕方なさそうに、いつの間にかルナ姉ちゃんが糸を通した針と、俺の手元の針を交換して裁縫教室がスタートした。


「まずは並縫いね。

いきなり刺繍は難しいから、エルは針と糸に慣れる所からやったほうが良さそうね。」


そう言うと、ルナ姉ちゃんはお手本を見せてくれた。

布の表と裏に交互に針を動かして進めていく。


日本の記憶で、家庭科の授業でやったはずだけど調理実習でふざけて怒られたのしか覚えてないな…


そんな事を考えながらぼーっとルナ姉ちゃんの手元を見ていると声をかけられた。


「さあ、やってみて。最初は裏からよ。」


そう言われて針を裏から表、表から裏と交互に動かしていく。


10針ほどすすめてから、ルナ姉ちゃんのと比べると違いが一目瞭然だった。


「えっと…俺の汚いね……」


一針一針の幅が揃って真っ直ぐ縫ってあるルナ姉ちゃんの布と見比べると、長さも角度もバラバラで、ガチャガチャした縫い目になってしまっている。


「最初はみんなそうよ。

私の妹のカメリアも最初はそうだったわ。


何度も練習するしかないのよ。」


薄く笑いながら布から糸を抜き、もう一度 と促されるまま、まっすぐになるまで何度も練習をした。


夕陽が傾いて、手元が見づらくなっても、俺の縫い目はガチャガチャしたままで俺は大きくため息を吐いて天井を見上げた。


その間ルナ姉ちゃんは、俺が書き順毎に木札に描いた『軽』の魔法陣を練習しながら笑っていた。



その夜、俺はベッドの中で日本の家庭科の授業を思い出していた。


―エプロンは作った覚えがあるんだよなー

なんか青白いドラゴンが書いてあるやつ。


それ着て調理実習してたんだよな…


あとなんか、リュックみたいなのも作った気がする…

エプロンとか入れてた巾着みたいなやつ…


あれ名前なんて言うんだっけ…?

あれあったら便利そうだけど、どう作るかだな…


俺が作れる様になるには、何年係ることやら…




そんな事を考えながら俺は眠りについた。






ご覧いただきありがとうございます。

次回も明日17時頃投稿予定です


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