3.父さんの行方と孤児院への帰り道
「お前もしかして、エル坊じゃねぇか?エルなんとかとか言う長い名前の」
先ほどまで教師役をしていたおじさんが帰り際に声を掛けてきた。
ぽかんとしているとおじさんは目線を合わせるように膝を着いてくれた。
「まあ、覚えてねえのも仕方ないか。お前の父ちゃんが働いていた鍛冶場で一緒だったんだ。
あの頃、産後の肥立ちが悪かったお前の母ちゃんが死んじまって、鍛冶場の隅の箱に入れてお前を寝かせてたんだ。
だけど、お前の父ちゃんが夜の見張り番の時に右腕を野獣に持っていかれてな。剣も、トンカチも握れなくなったって言ってお前を孤児院に預けたんだ。お前の爺さんに会いに行くって」
「俺の父ちゃん知ってるの?脚も悪くなかった?母ちゃんも知ってる?」
初めての両親の手がかりに、はやる気持ちが抑えられず矢継ぎ早に問いただした。
「そうだな、左足だったかな。お前の母ちゃんとこの街に流れ着く間に腱を切ったんだと。
母ちゃんも知ってるぞ。うちのカミさんなんか、とんでもない美人さんが駆け落ちして来た!って毎日のように噂話にしてた。そっからうちの鍛冶場にお前の父ちゃんが入ってきたんだ。」
どうやら、俺の父と母は元々この街の人間では無いらしい。
母は産褥で亡くなり、父は悪い片脚を引きずりながら、昼夜を問わず働いて俺を育ててくれていた。
そして3年前、片腕をなくしたことで俺を育てられないと思い、孤児院に預けた。
恐らくもう、迎えは来ないのだろう。なくした右手と引きずる左足では杖をついて歩くのも難な状況だ。3年というのは長すぎる答え合わせだった。
「今度鍛冶場に顔出せよ。お前が貰い乳してた向いの肉屋の女将さんにも声かけとくから。」
最後にもう一度頭を撫でておじさんは去っていった。
おじさんと別れたあと、カイ、フィリップと共に孤児院に戻った。
風魔法が使えなかったフィリップはカイに何度もコツを聞いている。
2人の頭の向こう側に見えてくる孤児院の門を見ながら俺はあの日の父さんの背中と揺れる袖を思い出していた。




