29.みんなのため息
「それで? 何をしようとしたんだ?」
腕組みをしたトム兄ちゃんとルナ姉ちゃんに見つめられながら、俺は背中を丸めた。
「いや……フィリップが軽量魔法練習してたから…
この間習ったヤツ、俺も復習しようと思って……
そ、それに鞄が軽くなったら皆も買い物とか楽になるかなって……」
―嘘です、ほとんど興味本位です……
もう一段背中を小さく丸めて本音がバレないようにしながら答えると、こめかみに指先を当てながら今度はルナ姉ちゃんがため息を吐いた。
「はぁーー。 あんたホントに変なとこ常識無いわね。
軽量鞄は魔力糸で刺繍をして、その上から軽量魔法をかけるのよ。
軽量箱だってそうじゃないの?」
チラリとルナ姉ちゃんと目線を合わせたトム兄ちゃんも頷いた。
「いつも俺らが彫り込みした木箱に魔法かけてるだろ?」
少し眉間にシワを寄せたトム兄ちゃんが、またため息を吐いた。
「はい。そうです…」
叱られた犬のようにショボンとしていると、台所でスープを作っていたアンが声をかけてきた。
「もう、お説教はそこまでにして、そろそろ夕飯にしない?」
器を持ってアンの前に並ぶと、俺の番になった時にスープを注ぎながら、ポツりと囁いた。
「無茶するのもいい加減にするのよ。
ルナ姉ちゃんが怒ると、一番手強いんだから。」
片方だけ見えるえくぼをうっすら見せながら笑った。
夕飯を食べ終わってもトム兄ちゃんの鞄は、ぷかぷかと天井近くに浮いたままで、今度は俺がカイとフィリップにニヤニヤと笑われた。
次の日の朝になっても、まだ浮いていた鞄にため息を吐いた俺の肩を、ガシッとトム兄ちゃんが掴んだ。
「エミルダさんに剝がしの魔法習ってきてくれ。
あれじゃ使い物にならん。」
俺は目を左右にうろうろ動かしながら「はい…。」と一言だけ答えた。
ホウキを使ってやっと手元に持ってきた鞄を持って、エミルダさんの所に向かう俺をギルドや町の人がジロジロ見てくる。
あんぐりと口を開ける人と、クスリと笑う人と様々だけど多分魔法を知ってる人ほど、滑稽な様子なんだろう。熱くなった耳のままで作業場に向かった。
その証拠に作業場の扉を開けた瞬間、エミルダさんは大きくため息を吐いて、右手を額にあてた。
「ホント……あんたって子は…」
「トム兄ちゃんが、剝がしの魔法習って来いって…」
エミルダさんが右手を額にあてたまま、左手で手招きをしてくれた。
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次回も明日17時頃投稿予定です
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