28.空飛ぶ鞄?
遅くなりました!
翌日から俺たちは、毎日ギルドに行ってはそれぞれ仕事を始めた。
船乗りになりたいフィリップは、川辺の船着き場で冷却魔法や凍結魔法をかけながら、船乗りの見習い奉公先を探していた。
毎日のように、売り物にはならないからって弾かれた食べ物なんかを貰ってきてた。
カイもいろんな日雇いの仕事をしながら奉公先を探してた。
建設現場や屋台を何軒も回ったりして、顔を覚えてもらっているうちに指名で仕事を貰えるようになってるみたいだった。
俺は、毎日エミルダさんの所に通って午前は冷却箱や凍結箱を作りながら、午後は魔法の修行をさせてもらっている。
冷却箱や凍結箱だけじゃなくて、重さが軽くなる軽量箱や、中の物が小さくなる縮小箱も習った。
俺は、エミルダさんがくれた、紙を紐で括った手づくりのノートに、教わった魔法を一つずつ書き留めていった。
カイとフィリップも、日雇いの仕事で習った魔法を何回も練習していて、皆で教え合ったりしてた。
そんなある日、帰るとフィリップが唸りながら魔力を指先に込めていた。
「フィリップ何してんだ?あいつ」
隣で見てたアンを見ると「しー!!」と指先を口元で立てた。
「帰ってきてからずっとあの調子で集中してるのよ。
あれが出来るになったら、来月から住み込みで船乗りの奉公先が決まるんだって。」
アンがニコニコしながら自分のことの様に嬉しそうに教えてくれた。
フィリップの指先では『糸』の文字が金色に光ったり消えたりしながら、チカチカと点滅している。
糸へんの漢字の魔法らしい。
―クイズの解答ランプみたいだな…。
そんな事を考えながらフィリップを見てると、よほど集中してるのか額から玉のような汗が滲んでは、顎へ流れていく。
「フィリップは何の魔法練習してんだ?」
「軽量の魔法。 これが出来ないと奉公先で雇って貰えないんだって。
俺とエルは覚えてるけど、フィリップは寝たら忘れたらしいぜ。
でも、すぐ教えたらまたすぐ忘れるから、もうちょっと泳がしとこうぜ。」
隣で見ていたカイに聞くと、ちょっとニヤニヤしながら教えてくれた。
フィリップの手元を見ると金色に光る指先はずっと『軽』ではなく『経』と描こうとしている。
だから糸へんか…
―惜しいな…
漢字の書き取りテストみたいな間違いだな。
俺はフィリップが忘れない様にするにはどう覚えればいいのか考えながら、アンに頼まれたニンジンと豆を鞄から出してアンに渡した。
この前、木箱にかけた軽量魔法を思い出しながら、目の前にある借りたトム兄ちゃんの鞄の前で、俺は指先に魔力を集中させた。
―これ鞄に掛けたら中の物が軽くなるマジックバッグみたいなの出来んじゃね?
わくわくしながら指先で『軽』を描き金色の漢字が鞄にすぅっと吸い込まれた時、ふわりと鞄が浮いた。
「へっ? なんで!?」
風船の様にふわふわと浮かぶ鞄を見て、あんぐりと口を開けるアンと俺、カイとその反対側でいつからそこに居たのか、ルナ姉ちゃんとトム兄ちゃんがため息を吐いた。
「あんた、変なとこで常識無いわね。」
「エルお前………エミルダさんのとこで何を教わってんだよ。」
口々に2人に言われながら、俺はまだふわふわと浮かぶ鞄に理解が出来ず、呆然と見つめた。
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次回も明日17時頃投稿予定です。
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