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きっかけは【漢字辞典】〜名前の長い孤児が生きる、漢字が魔法になる世界〜   作者: 七瀬
第一章

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18/31

18.初めての給料と陰口

この国の通貨について


小銅貨:10円

大銅貨:100円

小銀貨:1,000円

大銀貨:10,000円

小金貨:100,000円

大金貨:1,000,000円


魔法が使えない、貧しい平民の月収が

大銀貨2枚(20,000円)程度です。

小銅貨5枚(50円)程度で1食分の小さなパンが買えます。


「まだあるから、足りない子はおかわりにおいで」


エミルダさんが声をかけると、わらわらと子どもたちが集まってくる。


俺らは、アンのサンドイッチがあるからお腹いっぱいだけど、スープだけの子たちは足りないみたいだ。


サンドイッチに齧りついていると、エミルダさんが俺たちに声を掛けてきた。


「お前たち明日も来れるかい?来れるなら指名で出してやるから、明日は食器持ってくるんだよ。」


「はい!」

フィリップが元気に手を挙げて答えると、エミルダさんはにんまりと笑った。


午後からはさっき習った凍結の魔法の実践が始まった。

俺は冷凍庫をイメージしながら、指先に魔力を集中させていく。


日本の冷凍食品って美味しかったな…

餃子とかなら作れねえかな?

またも日本の冷凍庫を思い浮かべて、金色に光る指先で魔法陣をなぞっていく。


その文字が、木箱に染み込むようにして消えると、指先に痛いくらいの冷気を感じた。


―よし。 成功だ。


そう思ってわくわくしながら箱を開けると、中にびっしりと霜がくっついている。


エミルダさんは呆れたようにため息をついた。

「あんた、これじゃ売りモンにならないじゃないか。」



一人暮らしの安い冷凍庫のイメージが強すぎて、箱のスペースの四分の一ほどが霜に覆われた箱が出来てしまった。


「あんた凍結箱、見たことあるのかい?

これじゃ、管理の悪い状態で使い続けた凍結箱だよ。」


「無いけど、吹雪の事考えてたら…」


日本の冷凍庫をイメージして…、なんて言えるわけもなく濁すと、エミルダさんは、またため息をついて指先を金色に光らせ『温』を木箱に描いた。


木箱が温まり、じゅわりと中の霜が溶けていく。

水を捨てもう一度『凍』の魔法陣をなぞるように言われ、今度は新品の冷凍庫をイメージして指先に意識を集中させた。


また、指先がキン―と痛いほど冷たくなり、一瞬冷たい風がふわりと流れた。


そっと箱を開けると、白い冷気が汗ばんだ首筋を冷やした。


「―っやった!! できた!!」


顔を上げると嬉しそうな顔をしたエミルダさんが、しわくちゃの手で頭を撫でてくれた。


カイは今回も一発成功で、既に2箱目の魔法陣をなぞっている。


一方フィリップは、やっぱり書き順があやふやみたいで、気持ちの悪い書き方をしているのを、エミルダさんに注意されている。

5回目でやっと成功した時には、既に俺とカイで10個の凍結箱を完成させていた。



「そろそろ、おしまいにしようかね。

今やってるのが終わったら紙持っておいで。」



エミルダさんの声かけでふと顔を上げると、既に窓の外の夕陽が傾き始めて、少しだけ手元が暗くなり始めている。


ギルドから貰った依頼票を持った子どもたちがエミルダさんの周りに続々と集まりだした。



今朝はちゃんと見なかったけど、紙には今日の報酬が書いてある。


俺たち4人は同額みたいで、日当の欄に【小銀貨1枚】と書いてある。


ふと、前の方に居る子達を見ると手元の紙には【大銅貨5枚】と書いてあった。


―魔法が使えないと、見習いの時点で半額になるんだ…

ベテランのトム兄ちゃんと、初めての俺らが同額ってことは、やっぱり魔法が使えると食うには困らないんだろうな…



そんな事を考えていたら、エミルダさんが僕らの依頼票にもサインをくれた。

この後ギルドに行って報酬を貰うらしい。



帰り際、エミルダさんはトム兄ちゃんにお金を渡していた。

明日の朝来るときに、川の向うの牛飼いから牛乳を買ってくるようにお使いを頼まれたみたいだ。


加工場を出てすぐのギルドは、沢山の人に溢れていて、土埃と汗の匂いに包まれている。


「あら、初仕事ね。お疲れ様。 報酬の小銀貨一枚よ。」


カウンターに並び、綺麗なお姉さんにニコリと微笑まれドキドキしていると、手に少し歪な銀貨が乗せられた。


100円玉ほどの小さな銀貨の初任給に、わくわくとソワソワした気持ちになる。

財布もカバンすら持っていないんだから、無くしそうでちょっと怖い。


ギルドに預ける事も出来ると言われ、俺たちは全員一旦預ける事を決めた。


その後ろで、何人かの男の子がこちらを見ながらコソコソと話をしていた。さっき作業場でトム兄ちゃんと一緒に、魔法陣を掘っていた子達だ。



「いいよな。魔法が使えるってだけで、初日からトムのアニキとおんなじ額だってよ」


「まあ、親に捨てられたんだから、女神様くらいには愛されてないと可哀想だろ。」


見覚えのある赤毛の子も、その中で口々に俺たちの悪口を言っていた。



―トム兄ちゃんには懐いてるみたいだけど、それトム兄ちゃんの事を一番悪く言ってるの気付かないのかな…?


チラリとトム兄ちゃんを見ると気にもしていない様子で俺たちはギルドを後にした。


隣のカイは黙ったまんまで、夕焼けのせいか、耳が赤く染まっていた。


ご覧いただきありがとうございます。

次回も明日17時頃投稿予定です


★や評価、ブックマークなども

本当にありがとうこざいます。


励みにしておりますので、よろしければポチッとしていただけますと幸いです。

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