最強の人間
焔騎士団拠点団長室。
「セイン、お前はうちの騎士団についてどれほど知っている?」
フレアはセインに聞く。
「あんまりです。」
焔の拠点は、セインが住んでいる村とは反対方向で、セインが見かけることは無い。そもそも王都とは少し離れている村なので、情報があまり回らない。
「そうか。ならば説明してやる。うちは主に炎の魔法を持つ人間で構成されている。」
フレアがセインの瞳を真っ直ぐ見て話す。
「俺の魔法は炎の属性ではないですよ。」
疑問に思い、言葉にする。
「大体は炎魔法持ちだが、私が気に入った者は直接私が入団を推薦、そして許可しているのだ。」
フレアは説明を続ける。
「お前みたいなのは結構多いぞ。」
セインはそれを聞き、少し驚く。
「うちの騎士団は炎魔法なら誰でも入れる。平民だろうが貴族だろうが、分け隔てなく入団できる。」
「第一祝福魔術の炎魔法は被りやすく、数が集まりやすいしな。だが、その分能力に差がつくが。」
「少し話が逸れたな。うちの騎士団についてだな。うちの騎士団の信念は救済だ。誰でも平等に救う。それがうちの信念だ。お前はそれに当てはまっている。だから推薦したのだ。」
フレアは淡々と言う。
「次は騎士団としてすることについて。うちの騎士団は主に魔獣と魔族の討伐などの戦闘依頼を専門にしている。」
フレアはそう言うとニヤッと笑い、
「強くなりたいお前向きだろう。」
セインはその言葉に動じない。
「はい。俺は強くなります。」
セインは本気で変わろうとしている。
その言葉をフレアは信じてる。
「当たり前だ。じゃなければ困る。」
セインは期待されている。だから応えないといけない。
「騎士団の拠点について案内しよう。私が案内すると言いたいところだが、私は団長として忙しい。だから、ジール、入ってこい。」
そう呼ばれると、部屋の扉が開き、ジールと呼ばれた男が入ってくる。
「ジール、セインに拠点内のことを教えてやってくれ。」
そう言うとジールは一礼。
「承知いたしました。私がセイン様に拠点内をご案内いたします。」
ジールは礼儀正しくフレアに言う。
そしてセインに目を向け、また一礼。
「ではセイン様、私にご同行いただけますでしょうか。案内いたします。」
セインは、素直に礼儀正しい人だなと思う。
だが同時に、敬語を使われると少し気まずいと思う。
「その、俺には敬語とか使わないでください。俺の方が騎士団として経験は浅いし、まだ弱いと思うので。」
セインは人に気を遣われるのが苦手だ。
ありとあらゆる人に見損なわれ過ぎて、人付き合いがあまりないからだ。
「そっか、わかったわ。おっけー、んじゃ付いて来い。」
急にフラットになった。フラットすぎてびっくりするくらいフラットだ。さっきまで敬語を使って礼儀正しくしていた男とは思えないくらい、距離が近づいた。
「え?」
セインは情報量の多さに驚嘆する。
「すまない。ジールはこういう人間だ。対話能力が高いから、いい交友関係が作れると思う。」
フレアがジールについて説明する。
「あと、俺、騎士じゃないから、そこんとこよろしくー。」
ありえない。
「は?騎士団の人間じゃないってこと?なんで騎士団の拠点にいるんだよ?」
正直言って意味がわからない、この男だ。
「こいつは私の従者、執事なんだ。」
フレアは説明を追加する。
「そそ。俺はフレア様の執事なの。身の回りのことをするから、フレア様がいる時は拠点内にいるよ。」
この男はなんて奴なんだ。
「執事?もしかしてフレアさんって……」
フレアには威厳がある。正直言って強面だ。
だからあまり見た目で判断できない。
「うん。フレア様は公爵家のご令嬢だよ。だから従者の1人や2人は当たり前だよ。」
この男はなんて奴なんだ。
当たり前のように言う。
「え?フレアさんが公爵家の令嬢?公爵家って貴族の中でも1番高い爵位ですよね?」
フレアに向かい言う。
フレアは目を晒し、一度深呼吸する。
どうやら公爵家について言いたくないようだ。
「そうだ。私は公爵家の令嬢だ。あまり言いたくないんだ。女が、しかも公爵家の令嬢が騎士団長なんて、舐められるからな。」
神妙な表情で言う。
「何言ってんですか、フレア様。もう国中が知ってることでしょうに。」
この男は本当に軽い。マイペース過ぎる。
「ジール、うるさい。そんなこと私も知ってる。それでも嫌なんだ。」
フレアもペースを崩されている。
「はーい、わかりましたよ、フレア様。」
さっきまでの礼儀は、もう消え去っている。
「さっさと行け。」
ジールを睨んで言う。
「御意〜。」
セインはジールの態度に困惑している。
「よっしゃ、セイン。行くべ。まず一階からな〜。」
ほんとに軽い。とにかく軽い。
「まず一階について。一階には礼拝堂と食堂、あと武器倉庫とか医務室なんかがある。」
どんどん紹介されていく。
「んじゃ二階な。」
階段を上がり、見渡す。
「二階には、さっきみたいな団長室だったり、騎士団の中で役割を持つ騎士専用の部屋がある。あとは討伐だったりの戦略を組む会議室だったり。」
色々と連れ回され、
「わかったか、セイン。」
セインは一応覚えた。
騎士団拠点について、この男について。
「うん、大体わかったよ。えっと、ジール。」
セインがそう言うと、
「おう、ジールでいい。それじゃ今度は外行くぞ。」
笑顔になり、そう言う。
「え?外?」
外の紹介もあるなんて思ってなかった。
「おう。外も丸々騎士団の敷地だから、外には騎士団の訓練場だったり、模擬戦をするための決闘場がある。」
「俺がまず案内するのは、騎士団の人間が生活をする寮だ。」
「寮?」
「セインは多分、近くにある宿かなんか宿泊施設に住んでるだろ。あそこらへんだと遠い。いざって時に間に合わないからさ。それに寮なら大体タダだから、出費を削れるよ。」
それはありがたい。セインは村で働いて自立して生活していたが、村の人の手伝いが大半で、仕事量に比べればタダ働き同然だったから、お金があまりない。
「寮は徒歩数分の所にあるよ。多分見かけてるでしょ。」
見かけてる。そう言われると、そんな建物があったな程度に思い出す。
「ここが焔騎士団の寮。」
結構大きい建物だ。
「ここに住むのか。」
少しワクワクしてきた。
「とりあえず中を案内するよ。」
セインは理解する。この男はふざけた男だが、やる事はやる男だと。実際、細かい所で気が利いているし。
「うん、わかった。」
セインは返事をする。
「おっけー。とりあえずまた一階から。一階は騎士団拠点の方と変わらず、礼拝堂とか食堂とかの騎士団全員の共有スペース。」
「そして二階と三階。こっちは騎士団の生活スペース。二階は女性の騎士の部屋があって、三階は男の騎士の部屋がある。」
セインは男女分けられていることに少し関心する。
「そして三階のここがセインのお部屋です。」
「え?」
「1人騎士団に入ってくるって聞いて、一応部屋をとっときました。」
「使ってない部屋は大体物置にされんだけど、俺が掃除しときました。」
この男はなんて奴なんだ。
ふざけた印象しか持たないが、ジールはやる事はやる男なのだ。執事なだけあって気も利く。
「ここが俺の部屋か。」
そう呟く。
「そうです。ここがセインの部屋です。」
ドヤ顔で言う。褒めろと言わんばかりの表情で。
「その、ジール。色々ありがとう、助かった。」
セインは素直に感謝の言葉を述べる。
その言葉を聞き、ジールは照れたような顔をする。
「当たり前だよ、セイン。これからよろしく。」
「あぁ、よろしく。」
セインは、新しく友達ができたみたいで、少し嬉しかった。




