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祝福  作者: 素人
7/8

最要は仲間

「よし、次はいよいよ訓練場。今はちょうど騎士団の連中が訓練してる頃だ。挨拶回りと行こうじゃん。」


セインはこの言葉を聞いて、ジールについて理解する。

本当に気が利く男だと。


セインは人付き合いが苦手だ。魔術学校にいた時は、生徒のほぼ全員に下に見られていたから。

セインのことを知らない人はいない。


ジールもそうだ。おそらく人付き合いが苦手なことも知っていたんだ。だから挨拶を一番後にした。


「わかった、ありがとう。」

セインは返事に感謝をつけ加える。


「おう。」

ジールは笑顔でそう返す。


訓練場は寮とは反対側にある。

騎士団拠点を挟む形で設置されている。

これも、いざという時に間に合わせるようにするためだろう。


そんな事を考え歩いていると、訓練場が見えてきた。

音が聞こえてくる。魔法の音だ。


おそらく炎系の魔法が爆発しているような音。

ジールにも聞こえているはずだが、顔色が変わってない。


この音は日頃から鳴っているんだろう。ジールはもうすでに慣れているんだ。


訓練場に入る。

周りを見渡すと、騎士一人一人が訓練をしている。


火球を的に打ち続けてる人もいれば、炎を武器の形に変形させていたり、複数人で一つの魔法を作り出していたり。

人それぞれでやる事はあまりまとまっていないが、全員が努力しているのが感じられる。


「よっ、グラン。調子はどう?」

「いつも通りだよ、ジール。」

「切れ痔のだよ。」

「そっちは最悪さ。」


ジールはグランと呼ばれた男と話す。


「ジール!団長は今どこにいるの?」

「多分、団長室だと思う。仕事中だと思うから行かない方がいいよ、カレン。」

「わかったわ、ありがとう。団長はいつも仕事熱心ね。」

「本当にね。」


次はカレンと呼ばれた女性と話す。


「よう、サボりか?バレット。」

「彼女と別れてナーバスなんだ。話しかけるな。」

「お前の浮気性が100悪いだろ。」

「それはそれ、これはこれ。」


今度はバレットと呼ばれた顔の良い男と話す。


「ドイル、魔法はどんな感じ?」

「いつも通りだ。」

「嘘つけ。少し弱くなってないか。」

「仕方ないだろ。今朝、竜狩りから帰ってきたばっかりなんだ。」


ドイルと呼ばれた屈強な男と話す。


「「ジール聞いて!またコイツが間違ったのに言いがかりつけてくんの!」」

「はいはい、2人揃ってうるさいよ。ミランダ、ミライア。」

「「あたし間違ってない!うるさいのもコイツ!」」

「仲良くしろって前にフレア様に言われてただろ。また叱られるぞ。」

「「それはやだー!」」


息が揃ったそっくりな双子の姉妹と話す。


それからもジールは、騎士団の人達ほぼ全員と世間話をし続けた。

対話能力が高い。フレアさんの言っていた通りだった。

それにしたって高いと思うが。


「それじゃ、みんな聞いてくれー!」


ジールは大声で、訓練場全体に聞こえるように言う。

その声を聞いた騎士達が、ジールの方を見る。


「新しい仲間だぜー。」


ジールがそう言う。


「よし、セイン。自己紹介よろしく。」

小声でセインだけに聞こえるように言う。


「わかった。」

セインもジールに聞こえるよう言う。


セインはちゃんと準備している。

だって、嫌われたくないから。


(焦るな、俺。ちゃんと名前と心意気と、あと趣味とか言う。)


セインは心の中で覚悟を決める。


「新しく焔騎士団に入団する事になりました!!名前はセインといいます!!騎士団に本気で努力するために来ました!!趣味は人助けです!!」


そう言うと、深く一礼。


ジールは隣で腹を抱えて笑ってる。


「趣味が人助けって、ふふ。」

カレンが笑う。


「「ブハハハ!あいつバカだ、ブハハハ!」」

双子は爆笑してる。


「ドイル聞いたか?途中まで良かったのに趣味言ったぜ。しかも人助けって。」

「ああ、面白い奴だな。あいつはうちの騎士にお似合いだ。」


2人で笑っている。


「面白いガキだな。シゴキがいが有りそうだ。」

グランがニヤリと笑ってる。


そんな中、セインは、

(やばい、ミスった……笑われてる。)


俯き、心の中で頭を抱えている。


「セイン!やっぱり最高だ、お前。」

ジールはセインの背中を叩き、笑いながら言う。


「え?」


内心ミスとしか思ってないが、違うみたいだ。

頭を上げ見渡すと、みんながセインを見てる。


セインのズレた言動を笑っている人がいれば、セインを見て期待を向ける人がいる。

少なくとも、指で差して蔑む人がいないのが気楽だったし、皆の第一印象が良かったみたいで嬉しかった。


そんな時、ドイルがセインに近づいてくる。


「セイン、良い自己紹介だった。焔騎士団に快く迎え入れよう。私はドイル。この騎士団の副団長をしている。」


「はい、ありがとうございます。」


「そう畏まるな、セイン。」


「はい!ドイル副団長!」


やっとスタートラインに立てた。それがすごく嬉しい。


そこでジールが前に出て場を仕切る。


「よし、訓練おわり!!セインに質問しまくって困らせよう、イェーイ!!」


なんて奴だ、この男は。


「おいおい、勝手に訓練を終わらせるなよ、ジール。」

バレットが言う。


「さっきまでナーバスがなんとかとか言ってサボってた奴が言うなよ。」

ジールがつっこむと、バレットは笑い、


「なら仕方ねぇや。今日は終わりだ。」

と言う。


「おいおい、ガキども。何仕切ってやがんだ。」

グランが凄む。


「まず俺が一番に質問だよ、ガキども。」


一瞬でふざけた笑顔に変わり、ふざけた言葉を言う。


「「年功序列サイテー!ふざけんなジジィ!」」


ミランダとミライアが、ある意味子供らしい口調で抗議する。


「なんだと、ガキ2人。ジジィ舐めんなよ。」

グランも子供みたいに反論する。


「ミランダ、ミライア。それとグランさんも意地汚いですよ、全く。一番に質問するのは私です。レディファーストです。」


カレンが3人を宥めると思いきや、ちゃっかり一番をとる。


そんな光景を見て、セインは個性豊かな人達なんだなと思う。

これから一緒にいて楽しい生活ができると考えたら、舞い上がるような気持ちだった。


「全員静かに。まず私の言葉を聞け。」


ドイルが仕切る。

みんな、それを聞こうと黙る。


「副団長権限で、私が最初に質問だ。」


結局この流れだった。


「ドイル、ふざけんなー!!」

「「副団長辞めちまえ!」」

「ドイルさん、失望です。」

「やんのかガキー。」


たくさんの反対の声が聞こえる。


そんな時、


「うるさいぞー!!貴様ら、訓練はどうした!!」


フレアが訓練場に来て、早々に叫ぶ。


セインに集まっていた人だかりは一瞬で散り、

まるで何事もなかったように訓練に戻る。


セインはそれを見て、

(切り替えはやっ。)

と思った。


フレアはセインに近づき、

「なんでこんな事になっている。」


圧が凄い。

完全に怒ってる。

声が怖い。


セインは素直に言う。

「ジールがみんなのこと煽てました。」


全てを擦りつけたのだ。これが最適解だと信じて。


ジールを横目で見ると、青ざめていた。


「は?ちょ、待て。違います、フレア様。本当に違います。俺、悪くないです。」


「全員答えろ。ジールが煽てたのか。」


ドスの効いた声で、訓練場の全員に聞く。


「「「はい、そうです。」」」


騎士の全員が同じことを言う。


ジールの顔がさらに青ざめる。なんなら目の焦点も合ってない。


「フレア様、確かに煽てましたが、それに乗るみんなが悪いと思います。」


ジールも必死に言い訳を述べ、そして全員に擦りつける気だ。


「ジール、私と約束しただろう。訓練の邪魔をしないと。お前は調子に乗りやすいから、何度も厳しく言っただろう。後で私の部屋に来い。」


セインはジールを見る。

ほぼ死にかけみたいな顔している。


「ほんとにアレだけは嫌です、やめて、いやぁぁぁ!!」


びっくりするほど叫んでる。

アレと言うものはわからないが、きっと凄いものだろう。


みんなの為に死んでくれてありがとうと、セインは思った。

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