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祝福  作者: 素人
4/8

最純の謝罪

目が覚める。

見慣れない天井。


体を起こし、周りを見渡す。

知らない部屋だが、どこか病室のような雰囲気だった。


セインは記憶を振り返る。

溢れる記憶は、腕がなくなり、胸から血が吹き出す光景。


その記憶が蘇ると、全身から汗が出る。


自分の体を見る。

そこには腕があった。


ちゃんと動くし、感覚もある。

安堵が体に流れる。


その時——


ガチャ。


扉の開く音が聞こえる。


「セイン!?」


リアだった。

顔には涙を浮かべ、悲しそうな目をしている。


「うん、おはよう」


セインはそう返す。

泣いている彼女を安心させたかったからだ。


リアは目を丸くし、安堵するが、また悲しそうな顔を見せる。


「ごめんなさい、セイン」


突如、頭を下げて謝った。


セインはそれに驚き、その行為に疑問を浮かべる。


「なんでリアが謝るんだよ」


セインは頭にある疑問を声に出す。


「セインの村に魔獣が出たのは、私の……私達のせいなんだ」


セインはその言葉を飲み込めない。理解できない。


リアは説明を続ける。


「私は仕事で来たって言ったでしょ。その仕事は魔獣の討伐で、私は派遣された王都の騎士団の支援職として来たんだ」


セインは思考するが、まだ理解できない。


「その時、騎士団の包囲網から抜け出した個体がいて、それが村に逃げたんだ。私達は気付けなかった」


セインはやっと理解する。


なぜリアが謝ったのか。

なぜリアが悲しそうな顔をするのか。


「そうなんだ」


ただ一言だけ、セインは言う。

その言葉には怒りはない。


それに、リアはまた目を丸くする。


「なんでそれだけなの? セインが傷ついたのは、私達のせいなんだよ」


罪悪感と、セインの言葉への戸惑いがこもる。


「多分そうなんだろうけど、俺は生きているし、それで十分だよ。切り落とされた腕は、何故かくっついてるし、胸に傷もない」


セインは優しい。人一倍お人好しである。

だから今は、リアを慰めたい。それしか考えていない。


その言葉が、かえって彼女の心を抉るとは知らずに。


「なんで、そんなこと言えるんだよ……セインは」


リアのその言葉には、切なさや哀れさ、それどころか憤りすら感じられた。


その時、セインとリアのいる部屋に人が入ってくる。


人数は一人。


セインとリアは同時に目線をその人物に向ける。


その人は大柄で、セインよりも大きく、緑がかった黒色の長髪を一つにまとめた女性であった。


女性はセインを見る。

燃えるような赤い瞳が、まっすぐに。


「すまなかった!! セイン青年」


頭を下げて謝る。


「今回の事件、私の騎士団の驕りと油断が招いた。本当にすまない」


セインは理解する。

この人も、リア同様に罪悪感で謝罪してくれているのだと。


「謝らないでください。俺は不満なんてないですし」


その言葉を聞いた女性は怒鳴る。


「お前は何故怒らない! 死傷者が出ているのだぞ!!」


怒りをたっぷり込めて声に出す。


セインはその言葉を聞き、理解する。


その時、記憶が溢れ出す。

魔獣と遭遇したあの場を思い出す。血と肉が飛び散る光景を。


思い出せば、その惨状に吐き気を催す。


吐くのを必死に抑え、質問する。


「何人、死んだんですか」


女性は怒りを少し鎮め、答える。


「死者は三人。傷を負いながら生き残ったのは、お前だけだ」


セインはその言葉に、ただ悲しみだけを感じる。

怒りも、憤りも生まれなかった。


「ごめんなさい。それでも俺は怒れません」


女性は不服そうな顔をし、再度問う。


「何故だ」


深く、心に響く声で。


それに対してセインは、質問で返す。


「俺のことを知っていますか?」


リアはその質問の先が読めたのか、悲しそうな顔をする。


女性は頷き、


「第四祝福魔術を持つ、稀有な人間だ」


セインは薄い笑顔を見せて答える。


「そうです。俺は神に選ばれたんです」


女性はその言葉を聞いた瞬間、再度怒りを顔に出す。


「だから怒らないと言うのか!!」


セインはまた、薄い笑顔を向ける。


リアはそれを見て、さらに悲しそうな顔をする。


「違います。俺は神が嫌いです。僕なんかにこんな力を与えた神が嫌いです。恨んですらいます。だから、今更他人を怒れないんですよ」


セインのその言葉は、もう何もかも諦めたようなものだった。


女性は怒る。先ほどとは違う意味で。


「私はお前のような奴が嫌いだ。生きてるくせに、腕も足も自由に動かせるくせに、何もかも諦めたような言葉を吐く奴が嫌いだ」


セインはその言葉を聞く。聞き慣れた言葉だ。


見損なわれ、見下されてきたセインには、もう意味のない言葉だ。


「私は、王族直下の騎士団『焔』の団長、フレアだ」


「お前を叩き直してやる。私の騎士団に来い」


セインは驚く。

今まで会話していた女性が、国の、しかも王族直下の騎士団長だとは思いもしなかった。


そして、その人が、自分なんかを勧誘しているなんて

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