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祝福  作者: 素人
3/8

最低な生物

少しグロいです









リアがいなくなり、時間が経った。

もう外は暗い。


田舎の村なので、街灯なんてないし、それがより一層、夜の暗闇を際立たせる。


セインはすでに仕事が終わり、自分の家でくつろいでいると、村の警鐘が鳴る。


「魔獣が出たぞー!!」


村の見張りをしていた一人の男が、大声で叫ぶ。


それを聞いて、たくさんの村人が家から飛び出す。


村は魔獣騒動が起きた時、魔法を使える者が撃退、討伐するようになっていて、また、それが出来ない場合は隣村まで避難することになっている。


魔獣自体あまり出ないこの村にしては、今回のケースは珍しいことだ。


セインは外に出て、村を見渡す。

村人の中に困っている人がいないか確認するためだ。


セインはかなりのお人好しだ。

実際、セインがする仕事とは、村の住人の手伝いが大半だ。


セインは村を走りながら見回る。


そんな時——


「うわああ!!」


たくさんの村人の悲鳴が聞こえる。


セインはそれを聞いて、焦って走り出す。

そして、悲鳴が鳴り響くその場に着く。


セインは、その光景に驚愕する。


村人の血で赤に塗れた魔獣の姿。

かつては人であっただろう、その肉塊。

そして、血の海。


二足歩行の狼型魔獣。

大きさは、人間の三倍はある。


セインは当然、恐怖する。

実戦経験はないし、魔法は使えるものではない。


恐怖して当たり前だ。

セインは弱くて脆い、出来損ないなのだから。


魔獣はセインを一目し、すぐに視線を逸らす。

雑魚には興味がない——そんな目だ。


それはセインにもわかる。

そして今は、それに安堵する。殺されないとわかったから。


だが、すぐに勘違いだとわかった。

視線を逸らした先は、少女だった。


セインに興味がないのではなく、殺される順番が違うことに気付いた。


(まずい、まずい……)


セインの思考は、それに染まる。


自分より幼い子供を、目の前で殺されるわけにはいかない。

セインはそう思う。誰よりもお人好しだから。


「助けて……セイン……」


そう、泣きながら言う。

悲鳴を必死に抑えた、途切れてしまいそうな弱い声で。


セインは、この少女について知っている。


名前はマリア。

この村の村長の孫娘で、村人中からとても愛されていて、セインもこの少女と時々遊んだり、おしゃべりしたりしていた。


セインはこの状況で、その記憶が押し寄せる。


だから、身体が動いた。


彼女には将来性があるし、この先、たくさんの大切なものができる。

セインより、生きる価値がある。


咄嗟に、魔獣の前に出る。

マリアを守るために。そして、死ぬために。


セインに与えられた祝福は、第四祝福魔術。


その力は、魔法を消す——それだけだ。


消せると言っても、魔法の大きさによる。

セインは、手のひらサイズの魔法しか消せない。


その大きさを超えると、セインの魔法は一切発動せず、ただ魔力のみを大量に消費する。


それを使う。

セインの、浅はかで微かな抵抗だ。


セインは今、死ぬ瞬間にいる。

人生で一度しか味わえない「死」が、まさに今、目の前に来ている。


極限に研ぎ澄まされた視覚が、魔獣だけを見る。


手を前に出す。


「第四祝福魔術、展開」


その行為には意味がない。

なぜなら、消すことができるのは魔法のみ。


魔獣は魔法ではない、生物だからだ。


——突如、魔獣の顔半分が消える。

まるで、抉られたように。


だが、死んではいない。魔獣が叫ぶ。


魔獣には核があり、それが損傷しない限り死なないからだ。


魔獣はセインに突進し、腕を振り上げ、セインの胸を鋭い爪で切る。


セインは咄嗟に腕を上げ、ガードする。


意味はない。


その爪はあまりにも速く、鋭い。

人間の皮膚や筋肉、骨など、なんの盾にもならない。


腕が落ちる。


胴に、左肩から右脇腹にかけて血が吹き出す。

どう見ても致命傷。


後ろにいるマリアは、悲鳴をあげて泣き叫ぶ。


セインの意識は消えかけ、身体から温かみが抜け落ちる。

感覚はなくなり、視界は薄れ、音は聞こえない。


マリアの悲鳴すら、届かない。


その時——


「すまない、遅れた。よく頑張ったな、勇気ある青年」


セインには聞こえない。


だが、薄れた視界は赤で染まる。


炎の赤だ。


魔獣は消滅。


セインはそれに安堵し、気絶する。





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