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アイシャの忠誠と、新たな火種

「私たちは頭が悪すぎて教会の教えは理解できないけど、王家が……エリス王女殿下が偉大だということは理解できた。だからこれからは、エリス王女殿下に忠誠を誓う」

アイシャの堂々たる発言に、公爵は目を見開いて絶句した。

周囲の貴族たちからも感嘆の声が漏れる。

「歴史上ただの一度も王家に従わなかった亜魔族を配下にするとは……」

「さすがは王女殿下だ」

形成が逆転しかけたことに焦ったのか、公爵がさらに大きな声をあげる。

「そなたたちが王家に服従したとしても、邪法は許されん! 邪法を使った王女殿下にラグナ戦域の統治権は認められない!! そうだな、大司教殿!?」

「え、ええ。聖教会としてはそちらが問題です」

二人の追及に対し、アイシャは再度淡々と告げた。

「それも誤解がある。エリス王女殿下はあなたたちの言う邪法は使っていない」

「誤魔化すな! 王女殿下は戦場でお前たちと同じ術を使っていたはずだ! 何人でも証人を集められるぞ!!」

公爵が勝利を確信したように顔を歪めるが、アイシャの次の言葉がその表情を凍りつかせた。

「エリス王女殿下が私たちの術を使ったのではなく、私たちがエリス王女殿下の術を使った。エリス王女殿下は戦場でスキルを習得し、私たち亜魔族に居場所を与えるために、慈悲深くもその秘技を授けてくれた。私たちが戦場で使った術は全て、偉大なる王女殿下が教えてくれたもの」

その場にいた誰もが耳を疑った。

公爵や大司教だけでなく、俺も、カティアも、そして当のエリスでさえも驚きを隠せなかった。

俺は今回の功績をきっかけに、亜魔族と彼らの魔女魔法を王国に正式に認めさせようと考えていた。

だからこそ、ここで事実を曲げるべきではないと口を開きかけたが、アイシャがこちらを見ずに、ほんのわずかに手で制する合図を送ってきた。

黙っていろということだ。

「スキルはあなたたちの教えでは、神によって授けられるもののはず。それなら……エリス王女殿下から私たちが授かった術も、神からの授かりものでは?」

「馬鹿な!」

公爵が顔を真っ赤にして叫んだ。

「スキルを別の者に教えて行使させるなんて、そんな話は聞いたことがない! 嘘をつくな!! この場で私がスキルを授けるように言えば、お前たちの使った術が使えるようになるというのか!?」

公爵の怒号にも、アイシャは涼しい顔で脅しめいた嘘を重ねる。

「王女殿下からスキルを授かるとき、頭の中に声が響いた。『真の忠誠を誓うか』って。王女殿下に忠誠を誓うなら、授かるんだと思う。私たちの一族で王女殿下に従うことに反対していた者は、あれ以来目覚めていないけど、それ以外の者は全員が授かったから……王家に忠誠を誓う公爵閣下なら、きっと授かる」

王座の間に戦慄が走った。

他人へのスキル授与を可能とするが、真の忠誠を誓わない者を永遠の眠りにつかせる。

アイシャの大嘘であり、そんな話は誰も聞いたことがないはずだが、役に立たないと思われていたエリスの祈りが大きな戦果を挙げ、王国の人々のスキルへの理解不足を証明しつつあることが、その嘘に説得力を持たせていた。

エリスはアイシャの意図を完全に理解したのだろう、静かに一歩進み出ると、光を失った深紅の瞳を公爵のほうへ向け、白い手をかざした。

「アークライト公爵、他の者の証言に納得できないのであれば、自身で授与の儀式を試してみますか?」

魔女魔法を拒絶し続けてきた王国の人々には、魔女魔法が誰にでも習得できるものだという、正しい知識が無い。

エリスが授けたという形にして習得させることは、実際に可能だ。

アクセルのような強力な魔法は消費する魔力も大きいため、指導の中で意識を失わせて、そのまま暗殺することもできるだろう。

公爵がどのように答えても、手を打てる。

「……公爵閣下、本日私たちのために集まってくださった皆様をお待たせするのは、申し訳なく思います。授与の儀式の中で公爵閣下の身に何かあった時の備えが無く、危険かもしれませんが、エリス王女殿下の功績をより堅固な、疑いのないものにする必要があるとお考えなら、ご決断を」

こちらの自信を察したのか、公爵の顔から血の気が引いていくのが見えた。

「……本日は報告の確認だ。問題なければそれでよい」

言葉を濁し、公爵は後ずさった。

大司教も気まずそうに目を伏せ、それ以上追及しようとはしなかった。

こちらとしても、こんな大勢の前での暗殺の実行は避けたかったので、ほっとした。

その時だ。

重厚な扉が乱暴に開かれ、急を告げる文官が転がるように駆け込んできた。

「申し訳ございません。緊急の報告がございます」

息を切らし、顔面を蒼白にさせた文官のただならぬ様子に、国王陛下が身を乗り出した。

「よい。何があった」

「先ほど、帝国から書簡を受領し……アラン王太子殿下とご学友のステラ殿の身柄を、領地侵入と破壊工作の容疑で拘束しているとのことです! 無事に解放してほしければ、先日奪還したラグナ戦域を割譲せよと、条件が出されています!」

その言葉が響き渡った瞬間、これまでとは比べ物にならないほどのどよめきとざわめきが、王座の間を嵐のように吹き荒れた。

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