1-5 VS竜
「「「ギェー、ギェー」」」
この音は突然聞こえた。何の予兆もなく、いきなりだったわ。
「竜だっ!詳しい種類は不明!飛行している。数は5、森の方から来るぞ!」
ニレンさんが声を張り上げた。
「指示を出すぞ。メッテミは弓で援護、モイズとイトロンはヤナギさんとミナラさん、それからメッテミの護衛。ニレンは俺と前線だ。」
サイラさんもすぐに指示をだした。昼食の楽しい時間は一瞬できり替わってしまった。
サイラさん達の動きは早かった。ミナも剣を抜いていた。
「あぁ、クソォ。よりによってぇ、飛行系の竜かよぉ。相性が悪いなぁ。」
そう言いながらモイズさんは短刀を抜いた。近くにはオオカミもいる。1匹だ。オオカミは鎖を持っていて、モイズさんはそれで2本の短刀を繋ぎはじめた。珍しい武器を使っているわね。
メッテミは弓を構えて、イトロンさんは私達の近くに寄ってきた。
「心配してる?安心して。大丈夫よ!皆強いんだから!冒険者としてはまだまだ駆け出しだけど、実戦経験はたくさんあるから!なぜって?私達の村が森に囲まれていて、と〜っても田舎だったからよ。基本的に自分達の食べ物は自分達で採っていたから、獣とかとよく戦ってたのよね。どんな獣だったかっていうとね、それはそれは―――」
イトロンさんの話は9割聞き流して良さそうね。
適当に相槌を打ちながら、ニレンさん達の方に意識を向けてみる。
「行くぞ!合わせろ、ニレン。」
「最初からそのつもりだ。好きに動け。」
そう言いながら、2人も剣を抜いた。やっぱりすごく似ている。持ち手から切先まで全部灰色の剣だ。
サイラさんとニレンさんが走り出す。オオカミも一緒だ。それぞれ2匹ずつ。それを追いかけるように、矢が放たれた。メッテミの方を見てみると、こっちにもオオカミがいる。数は3匹。1匹は矢筒を背負っている。
メッテミの放った矢は先頭の竜の羽を貫いた。バランスを崩した竜が高度を下げる。つられて他の2匹も降りてくる。他の2匹はこっちに向かってくる。統制が取れている。竜は私の想像以上に賢いのかもしれない。
「―――しっ!」
「―――ハァッ!」
メッテミの矢とモイズさんの短刀付き鎖が向かってくる2匹目掛けて飛んでいく。
メッテミは続けざまに打っていく。首、腹、右目、左の翼…
打つのが早いし、正確だ。竜が高度を落とす、落とす、落とす。メッテミのオオカミが動いた。2匹だ。落ちてくる竜に飛びかかる。オオカミは急所をえぐっていく。竜から血が出る。
竜も抵抗するが…命が尽きるのも時間の問題だろう。
モイズさんの鎖は竜の左の翼の付け根に巻き付いている。
「っ、りゃあぁぁーーーー」
モイズさんが力業で竜を地面に叩きつけた。こっちもオオカミが動く。一拍遅れてモイズさんも走り出す。
竜は鎖の巻いてあった方の翼がほとんどもげている。
オオカミは後ろから回り込んだ。モイズさんは短刀付き鎖を手元に戻しつつ、正面から向かっている。
「ギェーーーーッ」
突っ込んでいくモイズさんに対して、竜が噛みつきに行く。
短刀付き鎖が投げられる。けど、それは竜には当たらない。オオカミに飛んでいく。両端をモイズさんとオオカミがそれぞれ持っている状態だ。
鎖を噛み付いて来る口にかけるようにに動き出す。
鎖が引っかかったらそのまま尻尾の方に引っ張っていく。
―――ゴギィ゙
嫌な音を立てながら竜の首が折れた。
サイラさんとニレンさんは遠くてよく見えないけど、1匹はもう動いていない。最初にメッテミに撃たれた個体だ。2匹がまだ空から威嚇していたけど、1匹が今、落ちた。人影も一緒だ。茶色っぽい髪だからニレンさん、かな?なかなか高いところを飛んでいたと思うんだけど…
最後の1匹が2人目掛けて急降下していく。そこに2本の灰色の線が伸びていった。サイラさんとニレンさんだ。
竜は首から血を流しながら、落ちていった。
すごい突然だったし、怖かった。けど、サイラさん達と一緒で良かったわ。




