1-3 いよいよ出発!
「サイラぁ、今いいかぁ?」
「ん?どうした、モイズ?」
「さっきの…あー、なんて言ったかぁ。ちっさい方だぁ。」
「ヤナギさんのことか。」
「ああ、多分そいつだぁ。そのヤナギってやつ、いやな感じがしたぜぇ。凄ーぉくなぁ。なんか企んでるってわけじゃなさそうだがぁ、今まで会ったことない感じがしたぁ。」
「――そうか。わかった。僕も気にしておくよ。探してるやつではないと思うけど…皆にもそれとなく言っておく。ありがとな、モイズ。」
「ああ。念のためぇ、俺の狼を後ろに着けとかぁ。」
「そうだな、それがいいかもな。頼むよ。」
―――――――――――――――
「ミナ、マラマラを連れてきてくれる?」
「承知しました。」
マラマラは私たちの馬のこと。白と茶色のまだら模様でとってもかわいいの!『まだら』から取ってマラマラ。いい名前よね。私がつけたの。
さて、ミナがマラマラを連れてくる前に私は馬車の確認を済ませておかなくちゃ。
私達は商人として、肉や魚、作物なんかの鮮度が大事な物を取り扱おうと思ってる。なぜかって?それはもちろん、私の能力を最大限活かすためよ。
今、鮮度を保つためには、少量を早く運ぶか、過去に『基本系能力−万物創造』を保持していた人が作った道具を使うしかない。ちなみに過去の道具は、魔法のような道具、略して魔具と呼ばれているわ。
で、どうやって気象掌握を活かすのかって言うと、魔具の力だって言い張って馬車の荷台の温度を下げるの。グーっとね。魔具については分かっていないことのほうが多いから、この言い訳が使える。父や母にも許可は取ってるから、ここで使うぶんには怒られる心配がないわ。
ちなみに能力は保持者によってできることが違うらしい。大まかには一緒だけど。
私はなかなか才能があったらしくて、気象に関することならだいたいできる。器用貧乏やら広く浅いなんて言われるかもしれないけどね。
「よしっ。問題なさそうね。」
温度は低いまま維持されていた。あんまり離れすぎたりすると、調整できなくなるから気をつけないと。
「ヤナギ様、マラマラを連れてきました。」
「ありがとう、ミナ。こっちも問題なかったわ。それじゃっ、移動しましょうか。」
マラマラと馬車をつないでから、動き始めた。
サイラさん達のところまではスムーズに移動できた。さすが大都市。馬車置き場も広い。
「すみません、皆さん。お待たせしました。」
「僕達も荷物の確認をしていたところです。気にしないでください。」
サイラさん達は荷台に荷物を積んでいるところだった。
サイラさん達は馬を使わないのかな?荷台があまり馬車らしくない。
そうだっ。忘れないうちに――
「サイラさん、先ほどは自己紹介だけだったので忘れていたのですが、報酬の話をしてもよろしいですか?」
「ああ、そうですね。そこは決めておいたほうが後々楽ですね。
うーん…そうだな、ソピエロ手前までの案内と護衛。それから、野営のやり方を教える。これら合わせて、金貨1枚と銀貨5枚でどうでしょう?」
「えっ、そんな安くていいんですか?」
一夜護衛する場合の相場は金貨2枚だと思うのだけど…。しかも、野営についても教えてくれるって言うし。
「いいんですよ。僕たちはまだ駆け出しですから。いっちょまえに相場の値段は取れませんよ。」
「あっ、それならこれ受け取ってください。もちろん報酬とは別で。紫牛の頬肉です。それから…これ。金貨1枚と銀貨5枚です。前払いさせてもらいますね。確認してください。」
「えっと、料金は間違いないですが、紫牛の頬肉までいいんですか?そこそこ値段すると思うんですが。」
「ええ。私達だけでは食べきれませんので。それに野営についても教えてくれるとのことですし。」
「ありがとうございます。これはいつも以上に頑張らないといけませんね。
もう少ししたら出発しましょう。最後の準備をしておいてください。」
「分かりました。」
さあ、いよいよ出発だ!




