第9話 お土産としきちゃんのお礼
お土産でお菓子もらえると嬉しいですよね。
「……ふぅ」
佐藤直人は、会社のデスクで小さく息を吐いた。
時刻は19時過ぎ。
今日は打ち合わせが多く、気を張りっぱなしだったせいで、肩はじんわり重かった。
「佐藤さん」
声をかけられて顔を上げると、同僚が紙袋を持って立っていた。
「出張のお土産です。よかったらどうぞ」
「ありがとうございます」
差し出されたのは、かわいい猫の形のクッキーだった。
「甘いもの苦手じゃなければ」
「大丈夫です。ありがたくいただきます」
同僚はその後、他の人にもお土産を渡して回っていた。
直人は手の中の包みを見る。
丸くて、小さなお菓子。
普段なら、すぐに食べて終わりだった。
でも。
「……しきちゃん、好きそうだな」
ふと、そんなことを思った。
フレンチトーストやケーキを食べたときも、すごい嬉しそうにしていた。
きっと、これも喜ぶだろう。
直人は小さく笑うと、鞄へお菓子をしまった。
その日の帰宅は、21時少し前だった。
「ただいまー」
玄関を開ける。
すると、いつものように。
「おかえり、おじさん!」
元気な声が返ってきた。
赤い着物姿のしきちゃんが、ちょこんと待っていた。
直人は鞄から小さな包みを取り出した。
「これ、会社で同僚の人からもらったお土産。しきちゃんにあげるよ」
「おみやげ!」
しきちゃんの目がきらっと輝く。
「……しきちゃんにくれるの?」
「うん。甘いもの好きそうだったから」
「わぁぁ……!」
しきちゃんはお土産をもらう前から嬉しそうだ。
「どうぞ」
「ありがとう!」
しきちゃんはわくわくした様子で包装を開けると、かわいい猫の形のクッキーが現れた。
「おぉ……!ねこちゃん!」
しきちゃんが感動した声を漏らした。
直人は思わず笑う。
しきちゃんは猫の形のクッキーをしばらく見とれた後、半分に割った。
「はんぶんこ。いっしょにたべよ?」
「うん。ありがとう」
「「いただきます」」
しきちゃんは、そっとひと口かじる。
次の瞬間。
「……!」
ぴたりと動きが止まった。
「どうした?」
「……あまくておいしい!あと、ふわってする!」
「バターの香りかな?」
「ばたー、すごい!」
語彙は少ないけど、全力で美味しさを伝えようとしてくれる。
直人も一緒にクッキーを食べる。
疲れて帰ってきても。
こうして誰かが嬉しそうにしているのを見ると、少し気が緩む。
「おいしい?」
「おいしい!」
満面の笑みだった。
それからしきちゃんは、大事そうに最後のひと口を食べた。
「ごちそうさまでした」
しきちゃんは、なにか思いついたみたいに「あっ」と声を上げた。
「おじさん、ちょっとまってて」
「ん?」
とてとてと部屋の隅へ走っていく。
そして、何かを持って戻ってきた。
「これ!」
小さな折り紙の鶴だった。
赤い折り紙で、少しだけ不格好。
羽も左右で微妙に大きさが違う。
でも、一生懸命折ったのがすぐ分かった。
「しきちゃんが作ったの?」
「うん」
しきちゃんは胸を張る。
「しきちゃんがつくった!」
直人はそっと受け取った。
しきちゃんみたいに小さくてかわいい折り鶴だ。
「いつももらってばかりだったから、おれい!」
それから、しきちゃんは小さな声で付け加えた。
「あとね、おまもりでもあるの」
「お守り?」
「しきちゃんのおまもりだから、うんきよくなる!」
どや顔だった。
直人は思わず吹き出す。
「座敷童製かぁ。効きそうだな」
「きくもん!」
むっと頬を膨らませる。
「そっか。じゃあ大事にしないとな」
直人はそう言って、玄関へ折り鶴をそっと置いた。
毎日、家に帰ってきたら真っ先に目に入る場所。
しきちゃんは、それを見て嬉しそうに笑った。
「えへへ」 その笑顔を見ていると、直人まで少し温かい気持ちになった。
こうして誰かから、形のある“お礼”をもらうのは久しぶりだった。
「……ありがとな、しきちゃん」
そう言うと、しきちゃんは照れくさそうに笑った。
「どういたしまして!」
小さな折り鶴も笑っているような気がした。
しきちゃんの手作りお守りいいですよね。
効果があるか、ないかは今後をお楽しみに!
まあ、伏線というわけではないので、今後登場予定はありませんが笑
しきちゃんに怒られたら出すかも?
誤字脱字などあったら、教えてください><
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