第4話 おそうじ
部屋の掃除面倒だけど、やらないとだめだよね。。。
休日の朝。
カーテンの隙間から差し込む光で、直人はゆっくり目を覚ました。
「……ん……」
時計を見る。
時刻は朝10時半。
平日ならとっくに会社へ向かっている時間だが、今日は貴重な休日だった。
昨夜は動画を見ながらだらだらしてしまい、寝たのは深夜2時過ぎ。
その結果――部屋は見事に散らかっていた。
脱ぎっぱなしの服。
机の上の空き缶や空になったお菓子、弁当箱などのごみ。
床に投げられたコンビニ袋やテレビのリモコン。
読みかけの参考書まで転がっている。
「……ひどいな」
自分で見てもそう思う。
でも、疲れて帰ってきて、そのまま寝落ち。
休日は動く気力も出ない。
一人暮らしだと、誰に怒られるわけでもないから、つい後回しにしてしまう。
布団の上でぼんやりしていると。
「おじさん」
聞き慣れた幼い声がした。
「……おはよう、しきちゃん」
部屋の隅には、赤い着物姿の小さな座敷童が立っていた。
「おはよー!」
今日もしきちゃんは元気だった。
しきちゃんは、てちてちと部屋の中を歩き回る。
そして、床のコンビニ袋の前でぴたりと止まった。
「おじさん」
「ん?」
「へや、きたない」
ぐさり。
あまりにも率直だった。
「……まあ、否定はできない」
「ごみいっぱい」
「あとで片付けるよ」
「ほんと?」
「たぶん……」
「たぶんなんだ」
しきちゃんはむっと頬を膨らませた。
それから、ちょこんと腕を組む。
「おじさん」
「はい」
「そうじしよ?」
「えぇー……」
直人は思わず布団へ顔を埋めた。
休日くらいだらだらしたい。
できれば昼まで寝ていたい。
しかし、しきちゃんは容赦なかった。
「おへや、きたないと、うんきさがるよ?」
「うっ」
それは少し嫌だった。
座敷童に言われると妙な説得力がある。
「……分かったよ」
直人は重たい身体を起こした。
「えらい!」
「しきちゃんが言うと、なんか保護者みたいだな……」
「しきちゃん、いっぱいだから!」
年齢のことらしい。
見た目は5歳なんだけど。
直人は苦笑しながらゴミ袋を広げる。
「じゃあまず机の上から片付けるか」
「おぉー!」
なぜかしきちゃんは拍手していた。
「そこ感心するとこ?」
「おじさん、やるきだした!」
「そんな珍しいことみたいに言わないで」
直人は床のものをまとめていく。
しきちゃんはその後ろをちょこちょこついて回っていた。
「これはごみ?」
「ごみ」
「これは?」
「それもごみ」
「おじさん、ごみためるのうまい!」
「褒めてないよな、それ」
しきちゃんは楽しそうに笑う。
その笑い声を聞いていると、不思議と掃除の面倒くささが少し薄れていく。
洗濯物を集め、机を拭き、掃除機をかける。
掃除機の音が鳴るたびに、しきちゃんは部屋の端っこへ避難していた。
「おぉ……すいこまれてる……」
「吸ってるんだよ、埃を」
「ほこり……いっぱいだった……」
「言わないでくれ」
1時間ほど経った頃。
散らかっていた部屋はかなり綺麗になっていた。
床も机の上もすっきりしている。
「なんか部屋広くなった気がする」
直人は思わず声を漏らした。
「きれい!」
しきちゃんは満足そうに頷いた。
「おじさん、がんばった!」
「はいはい、頑張りました」
すると、しきちゃんはにこっと笑った。
「えらいえらい」
小さな手で頭を撫でられる。
「……なんで俺、座敷童に褒められてるんだろうな」
「だめ?」
「いや……悪くない」
むしろ少し嬉しかった。
一人暮らしだと、掃除しても誰かに褒められることなんてない。
やって当然。
やらなくても誰にも何も言われない。
でも今日は違った。
「よし、お礼に昼飯でも作るか」
「ほんと!?」
「掃除付き合ってもらったしな」
「やったー!」
しきちゃんはぴょんと跳ねる。
直人は冷蔵庫を開けた。
卵、ベーコン、余ったご飯。
「チャーハンくらいなら作れるかな」
「ちゃーはん!」
「知ってるの?」
「しらない!」
「知らないかー」
でも、しきちゃんは嬉しそうだった。
フライパンに油を引く音が、綺麗になった部屋に響く。
その間、しきちゃんは満足そうに部屋を見回していた。
「おじさん」
「ん?」
「へや、きれいだと、なんかいいね」
「……そうだな」
直人は小さく笑った。
疲れて帰って、寝るだけだった部屋。
ただ生活するだけの場所。
でも今は、少しだけ違って見えた。
「またちらかったら、しきちゃんがいうね!」
「う……」
「『へや、きたない』って!」
「それ地味に効くからやめてくれ……」
しきちゃんの楽しそうな笑い声が、休日の部屋に明るく響いた。
掃除したくないときもある。
でも、こんなかわいい女の子に言われたら、やるしかないよね!
誤字脱字などあったら、教えてください><
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