第13話 洗濯
「……さて」
直人は、洗面所で顔を洗いながら鏡を見る。
まだ少し眠そうな顔。
休日の朝らしい、気の抜けた自分が映っていた。
「おじさんー」
後ろから、ぱたぱたと足音が近づいてくる。
「おなかすいたー!」
「はいはい、今作るよ」
直人は苦笑しながらキッチンへ向かった。
冷蔵庫を開ける。
卵、ソーセージ、食パン。
「簡単な朝飯でいいか」
直人はフライパンを火にかけた。
じゅわ、と油が鳴る。
まずはソーセージを転がす。
すると、しきちゃんの目がぴかっと光った。
「ころころしてる!」
「焼いてるんだよ」
「いいにおい!」
さらに卵を割り入れる。
じゅうう、と白身が広がり、香ばしい匂いが立ちのぼった。
「おぉ……!」
しきちゃんはフライパンを覗き込みながら感動している。
「おじさん、たまごきれい!」
「目玉焼き初めて見た?」
「うん!」
即答だった。
その間に、トースターへ食パンを入れる。
数分後。
こんがり焼けた食パン。
半熟の目玉焼き。
軽く焼き色のついたソーセージ。
簡単だけど、休日の朝にはちょうどいい朝食が並んだ。
「はい、完成」
「わぁぁ……!」
しきちゃんは机の前へぺたんと座る。
「「いただきます」」
しきちゃんは、まずソーセージをぱくりと食べた。
「……!」
「どう?」
「ぱりってした!」
「皮だな」
「おいしい!」
次は目玉焼き。
黄身をつつくと、とろっと半熟が流れ出した。
「おぉぉ……!たまご、ながれてる!」
毎回リアクションが大きい。
直人は思わず笑った。
食パンへ黄身をつけながら食べると、しきちゃんも真似し始める。
「まねっこ」
「うまいだろ?」
「うまい!」
朝の部屋に、二人の小さな声がのんびり響く。
平日の朝なら、こんな余裕はない。
急いで支度して、満員電車へ飛び込むだけだ。
でも今日は違う。
ゆっくりご飯を食べて、だらだら喋っている。
それだけで、なんだか穏やかだった。
「ごちそうさまでした!」
食器を片付けながら、直人はふと思い出す。
「あー……洗濯もしないとな」
洗濯機にワイシャツやタオルがそこそこ入っている。
「せんたく?」
「服を洗うんだよ」
「ふく、あらう!」
しきちゃんは興味津々だった。
直人は洗濯機へ洗剤を入れ、スイッチを押す。
ごごご……と洗濯機が動き始める。
「うごいた!」
「洗ってるんだよ」
しきちゃんはしばらく洗濯機をじっと見つめていた。
ぐるぐる回る洗濯物が面白いらしい。
「まわってる……」
「ずっと見てると酔うぞ」
「ふにゃ?」
意味は分かっていなさそうだった。
洗濯が終わるまでの間、直人はコーヒーを淹れて一息つく。
しばらくすると、洗濯終了の電子音が鳴った。
「お、終わったか」
ベランダへ出る。
今日はよく晴れていた。
風も気持ちいい。
直人は洗濯物を一枚ずつ干していく。
ワイシャツ。
タオル。
寝間着。
しきちゃんはそんな様子を興味深そうに見ていた。
洗濯物を干し終えた頃。
ふわり、と風が吹いた。
すると。
揺れるシャツ。
ぱたぱたとはためくタオル。
白い洗濯物が青空の下で揺れていた。
その瞬間。
「おじさん!」
しきちゃんが目をきらきらさせる。
「ふく、おどってる!」
「……ああ、ほんとだな」
直人は思わず笑った。
確かに、そう見えるかもしれない。
風に揺られて、洗濯物たちが楽しそうに動いている。
しきちゃんは大はしゃぎだった。
「いっぱいおどってる!」
ぱたぱた揺れるタオルを見て、ぴょんぴょん跳ねている。
「そんなに楽しい?」
「たのしい!」
即答だった。
直人はベランダの手すりへ軽く寄りかかる。
空は青くて。
風は気持ちよくて。
隣では、小さな座敷童が洗濯物を見て笑っている。
「おじさん!」
「ん?」
「おせんたく、すごい!」
「そうかな?」
「すごい!すごい!」
しきちゃんは満足そうに笑った。
楽しそうなしきちゃんに釣られ、直人も一緒に笑った。
良い天気の日に洗濯物を外に干すとなぜかよくわからないですが、気分いいですよね。
休日で天気がいいからそう思うのかな?
誤字脱字などあったら、教えてください><
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