第12話 休日の朝の攻防
休日の朝。
カーテンの隙間から、柔らかな朝日が部屋へ差し込んでいた。
静かな部屋。
聞こえてくるのは外を走る車の音くらいだ。
そんな中、布団の中でもぞもぞとしていた直人は薄く目を開けた。
「……ん……」
眠い。
とにかく眠い。
昨夜は休日だからと気が緩み、動画を見たりゲームをしたりしていたら、寝たのは深夜2時近くになってしまった。
時計を見る。
朝9時半。
休日としては健康的な時間だ。
しかし。
「……まだ寝れるな」
直人はそう呟くと、再び目を閉じた。
その瞬間。
「おじさん!」
元気いっぱいの声が飛んできた。
「おはよう!」
「……おはよ……」
声だけ返す。
すると、しきちゃんが布団の横へやってきた。
赤い着物姿の小さな座敷童は、ぴょこっと顔を覗き込む。
「おきるじかん!」
「休日だから……まだ寝てていいの」
「だめ!」
「あと5分……」
直人は布団へ潜り込む。
休日の朝の睡眠時間は少しの時間でも非常に重要なのだ。
しかし、しきちゃんは納得しなかった。
「おじさん、もういっぱいねた!」
「まだ足りない……」
「たりてる!」
「いや足りない……」
不毛な会話だった。
しきちゃんはむむむ、と頬を膨らませる。
それから何か思いついたように、ぱっと顔を上げた。
「わかった!」
「……?」
次の瞬間。
「おーじーさーん!あーさー!」
部屋に大声が響いた。
「うおっ!?」
直人はびくっと肩を震わせる。
「び、びっくりした……」
「おきた!」
「起きてない……」
「おきてる!」
しきちゃんは得意げだった。
直人は再び布団を被る。
「……あと5分」
「また!?」
しきちゃんは信じられないものを見る顔をした。
そして次の作戦へ移るようだ。
てちてちと窓際へ歩いていき――。
しゃっ。
カーテンを勢いよく開けた。
「まぶしっ!?」
朝日が直撃した。
「しきちゃん!?」
「おひさまいっぱい!」
「休日の朝には刺激が強い……」
直人は布団を頭まで被る。
しかし、しきちゃんは諦めなかった。
「おじさん、おきてー!」
「あと5分……」
「ほんとに5ふんしたら、おきる?」
「たぶん……」
「たぶんなんだ」
呆れた声だった。
しきちゃんはしばらく考え込み――。
そして、てちてちと布団へ近づく。
「……?」
次の瞬間。
ぽすっ。
「ぐえっ」
小さな衝撃。
しきちゃんが、布団の上へ乗ってきたのだ。
「おじさん、おきるまでここいる!」
「重くはないけど地味に苦しい……」
しきちゃんは布団の上でぺたんと座り込んだ。
完全に居座る気のようだ。
「おじさんー」
「んー……」
「おきてー」
「ねむいー……」
「おなかすいたー!」
「……うっ」
その一言が、少し効いた。
時計を見る。
もう10時前。
このまま寝続けたら、昼ご飯の時間までずれ込みそうだ。
しきちゃんは布団の上で、ぴょんぴょん小さく跳ね始める。
「おきろー!おきろー!」
「揺れる揺れる」
「おきろー!」
ぽすぽす。
小さいのでダメージはない。
だが、眠気は少しずつ削られていく。
直人は観念したように大きく息を吐いた。
「……分かったよ」
「!」
「起きるから」
すると、しきちゃんの顔がぱあっと明るくなった。
「やったー!」
直人は重たい身体を起こす。
ぼさぼさの髪。
半分閉じた目。
完全に寝起きの顔だった。
「ふぁ……」
大きな欠伸をする。
すると、しきちゃんが満足そうに頷いた。
「おじさん、おきた!」
「はいはい、起きましたよ……」
一人暮らしだと昼過ぎまで寝ていても、誰にも何も言われなかった。
だから、こうして誰かに起こされる朝は、少しだけ新鮮だった。
まだ、眠いけど。
直人はベッドから降り、軽く背伸びをする。
窓の外はよく晴れていた。
「……いい天気だな」
「いいてんき!」
しきちゃんも嬉しそうに窓を見る。
それから、直人の方を向いた。
「おじさん!」
「ん?」
にこっと笑う。
「おはよう!」
その声につられるように、直人も少し笑った。
「……おはよう、しきちゃん」
無理やり起こされたとはいえ、いつもより気分の良い朝だった。
こんな朝の攻防微笑ましいでよね。
昼まで寝るのも幸せだから、どちらかいいのか悩ましいけど笑
誤字脱字などあったら、教えてください><
ブックマーク、感想などもらえたら嬉しいです!




