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聖女?の娘  作者: いぶさんた
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ノースリー国へ①


小さな村をいくつか通り過ぎてアーハイワという町に着いた。聖都ほどではないけれどもここも石造りの頑強な壁に囲まれている。


1時間ぐらい走っただろうか。

初めこそ外の景色を見ていたけれどはっきり言うと飽きてしまった。


そして、お尻が痛い。空腹のためか軽い馬車酔をしたみたい。

馬車の通る道は土が平らになっていたけれど整備されているわけでも無く、石や窪みが所々にあるため馬車がそこを通ると

『ガタン』

と振動が起こる。キャトリさんがクッションを準備していてくれたので多少は軽減されていたらしいけれど

私からしたら『何処の遊園地の乗り物』と思えるほどの振動が襲う。


これでも馬車は早駆けするでも無く標準的な速度で走っている。(早駆けすると目立つので抑えているそうだ)


キャトリさんから果実水をもらい飲むと少し気分が良くなった。



アーハイワにノースリー国出身の(実は影の人)貸馬車屋を営んでいる人がいて、タクトさんはそこの従業員、私達は親族に頼まれた貸馬車屋がタクトさんを聖都に迎えにいかせ戻ってきたという設定になっている。そのためタクトさんの貸馬車屋の従業員の身分証を見せ、アーハイワに入った。


「用意周到ね」

思わず呟いたしまったら、

「すごいわよね」

母にも同意された。


「縁もゆかりもない私達のためにここまでしてもらうのは本当に申し訳ないと思う。見つかれば大問題になるのに。だから沙彩、文句を言ってはダメ。お尻が痛くても我慢してね」


母に指摘されてしまった。

先程から私は

「お尻が痛い、もう嫌だ」

などと言ってキャトリさんを困らせていたから。


確かに母の言う通りだと思う。


「ごめんなさい」


キャトリさんと母を見て謝る。


「いいえ、初めて馬車に乗ると皆 そうなります」

キャトリさんは笑って話してくれる。

「貸馬車屋に着いたら休憩と朝食になります。その後はこの馬車よりも良い馬車に乗り換えますので少しは乗り心地が良くなると思いますよ」


「やった」

つい声が出てしまった。母を見ると嬉しそうだったから母もお尻が痛かったんだろう。






###日本 田中家  祖母富子



孫の沙彩が文句を言ってきた。私は調子が悪いのだから嫁の洋子が世話をするのが当たり前じゃないか。

死んだ爺さんが甘やかすから沙彩が我儘になった。

母親の育て方も悪かった。本当に役に立たない嫁だ。


「お婆ちゃん、自分で出来るんだからお昼の準備は自分でやってよ。お母さんは仕事をしているんだよ」


仕事の合間に家に戻ってきて私のご飯の準備をすればいいのだからできるじゃあないか。

姑の世話をするのは嫁の仕事だろう。


「煩い。お前になんかわかるものか。私は調子が悪いんだ」

「でも、お婆ちゃん元気じゃない」


「お前に何がわかるんだ。和男に先に死なれて私は辛いんだ」

「お父さんは12年も前に死んだんだよ。それに

私だってお父さんが居なくて寂しいのに」


この娘は何を言っているんだ。お前がケーキを頼んだから和男が死んでしまったというのに。


「お前のせいで和男が死んだんだ」

怒りが湧いてきて沙彩の髪を引っ張ってやった。  


「お義母さん、何をしているんですか」

大声で怒鳴り合っていたため声を聞いて洋子が部屋へ入ってきた。

煩い、煩い。




突然部屋の中が輝きだした。眩しくて目が開けていられない。ほんの数秒だった。目を開けたら嫁も孫娘も部屋にはいなかった。




「洋子、沙彩」

呼んでみるけれども返事がない。


家の中も庭も探したけれどいなかった。


娘の春子と花子に電話をして説明したけれど

「お母さん、何を言っているかわからないわよ。もう暗いから今日は寝て。明日そっちに行くから」


二人に同じ様な事をいわれた。花子など

「お母さん、ボケたんじゃあないの」

と言ってきた。


晩ご飯も食べたしお風呂も支度が出来ているからお風呂に入って寝てしまおう。そのうち帰ってくるだろうから。





朝、洋子も沙彩も帰っていなかった。

娘二人に電話をして

「仕方ないわね。朝ご飯もまだなんでしょう。今から行くわ」

と。

やはり娘は母親を心配してくれる。一晩留守にするような嫁とは違う。




娘達に昨日あった事を話す。

二人は時々顔を見合わせて話を聞いていた。


「お母さん、それは本当なの?」


「嘘なんか言っていない」


「そう」


三人で黙ってしまった。



「とにかく、今日は私がここにいるわ」

花子が今日はいてくれるらしい。

「じゃあ私は明日またくるわね」

明日は春子が来てくれる。


「あんた達が来てくれるなら洋子が帰って来なくてもいいわね」

私はふと思い、口に出すと


「私達も仕事があるから毎日は来れないわよ。洋子さんが帰ってくるまで自分で出来る事はしてよ」

花子に言われてしまった。


「わかったわよ」


そんな会話をして、1日目が過ぎていった。






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