聖都脱出
本日5話目です。
「沙彩、起きて」
「お母さん、まだ眠い」
起こされているのはわかるけれど目が開かない。眠い。
「すみません。朝が弱くて」
お母さんが謝っている。誰かいるの?
「沙彩、もう門が開くから起きなさい」
門…門って
「もん」
思い出した。聖女召喚とやらで異世界にいるんだった。
急いで起きて顔を洗う。歯磨きってあるのかな。
指に布を巻いて歯を擦る。
これか…
準備してタクトさんの待っている馬車に乗った。
御者がタクトさん。馬車の中には母と私とキャトリさんが乗っている。
聖都に入る時はしっかり確認されるが出る時はそれ程調べられないと言っていたから問題無いはず。
キャトリさん、母、私は親族に不幸があったため貸馬車を御者のタクトさんと共に借りて家に帰るという設定になっている。
「おはよう」
タクトさんが門番に挨拶する。
「おぉ、おはよう。早いな」
まだ日が昇り始めたところだからか門には私達の馬車しかいない。
「あぁ、お客さんから早くして欲しいって言われているからな。親族に不幸があったそうだ」
「そりゃあ大変だ。直ぐに済むから馬車の中を見せてもらえるか」
「いいけど、どうしたんだ」
「騎士団から連絡があって黒髪の女性を見たら知らせる事になっているんだ」
私達を探しているんだろうか。
「わかった。ちょっと待ってくれ」
タクトさんが馬車の中に声をかける。
「お客さん、扉を開けますよ」
「おはよう」
門番が開いた扉からこちらを見る。
「おはようございます」
キャトリさんが挨拶をして私と母は会釈する。
「あぁ、髪色は茶と焦げ茶二人だね。すまなかったね。仕事なもんで」
「いいえ、ご苦労様です」
キャトリさんが笑顔で答える。
「護衛はいないのか。大丈夫か」
門番がタクトさんに話かける。
「大丈夫だ。半半刻(1時間)で着く予定だ」
「これだけ朝早ければ盗賊も魔物も寝てるからな。でも、気をつけてな」
「あぁ、ありがとう」
私達は無事に聖都から脱出した。
###母・洋子
無事に聖都から出る事が出来てほっとした。
『ノースリー国を信じる』
この決断を後悔したくない。
沙彩がまだ眠たそうであくびをしているのを見ると我が娘ながら神経の図太さが羨ましい。
そういえば昨日の夜もすぐに寝ていた。
キャトリさんから
「明日は早いので寝ましょう」
と言われベットに入ったけれどこんな事が起こって寝られるはずもなく何度も寝返りをしていたら
「寝られませんか。少し話をしましょうか」
とキャトリさんに気を使わせてしまった。
「すみません。少しだけ、よろしいでしょうか」
いろいろ考えていた頭を冷やすためにもお願いした。
沙彩は寝ていた。
まだ信じられないが異世界に来たらしい。
何故、まさか…
考えが整理できない。
1つわかっているのは沙彩だけは何としてでも守らないといけないという事。
何にも考えてないのか。若いから受け入れるのが早いのか。隣でぐっすり寝ている娘が心配になる。
「私達はどちらかが聖女といわれました。けれども今の所何も変わりがありません。聖女では無くてもノースリー国で暮らせるのでしょうか」
今後を考えると何か出来る仕事を見つけなければならない。すぐに見つかるとも思えないのでそれまではせめて最低限の生活がしたい。
「はい。陛下から何があろうと聖女様を保護するように指示されていると聞いております」
良かった。当面は大丈夫のよう。
「ありがとうございます。生活様式が随分違うので助かります」
「先程サーヤ様がランプを見ていましたが珍しいですか」
「そうですね。私達の生活は電気という動力があってボタン1つでできます。部屋の灯りもすぐに明るくなります。それはほとんど皆が使っていますね」
「魔石のようなものでしょうか。魔石は価格が高いので上位貴族や、裕福な商人が使っています。もちろん王宮もですが。それを皆が使えるとはヨーコ様のお国は栄えているのですね」
「そうですね。世界には電気のない場所もありますが、私の住んでいた国は山奥などの辺境でなければ通っていましたね」
「それではこちらでの生活は物足りないというか不便に思われるでしょう」
「…こちらで暮らすのですから慣れないといけないとおもいます。沙彩のためにも」
「サーヤ様はヨーコ様と一緒なので落ち着いているように思えますね。実は私達の中で聖女様が召喚の事で混乱され話を受け入れてもらえなかったら残念ながら行動を起こさないと決めていたのです」
キャトリさんが私の顔をじっと見る。
「ヨーコ様もサーヤ様も混乱はありますがしっかりと考えて受け入れてくださったので本当に安心しました」
「恐らく私1人だったらもっと騒いでいたでしょうね。沙彩が、娘がいるので私が何とかしなければと思いました。あの子のおかげです」
二人で寝ている沙彩をみる。よく寝ている。
「先程のヨーコ様の質問ですが、私も細かい事は知らないのではっきり言い切れませんが、明日私達はクロナン辺境伯爵家に向かいます。タクト様はクロナン辺境伯爵家の次男で夫人は王妹です。クロナン家が保護するときいています。とても良い方々ですので安心して頂けると思います」
良かった
小さな声で呟いてしまった。
「ありがとうございます。お世話になります」
その後、そろそろ寝ましょうといわれ布団に入り目を瞑った。
うろうろと何度も目を覚ましたけれど少しは寝ることが出来た。
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