日常
###クロナン伯爵邸
太陽が昇り始めた。
流れ星がぽつんぽつんと見られるけれどもう終わりだろう。
使用人の皆も仕事へ、部屋へと戻っていく。
大奥様も
「少し寝たいわ」
と言ってハナノイさんと部屋へ戻っていった。
私も部屋に戻り身支度を整えて伯爵の執務室へ行く。
伯爵はトーリさんと次々とくる報告書を読んでいた。
「おはようございます」
「あぁ、おはよう。終わったな」
「はい」
「サーヤ、朝食を食べたかな」
「まだです」
「書類を見ながら食べられる物を作ってもらってきてくれないか。君もここで食べれば良いよ」
「わかりました」
「悪いな」
サンドウィッチとカップに入ったスープ。果物も一口サイズにカットしてある。
私がサンドウィッチを食べていると伯爵が書類を見てため息を吐く。伯爵はサンドウィッチを食べながら書類を見ている。
「すごい量ですね」
「昨日の昼から今迄の騎士団や自警団への依頼や相談、報告書だな。はぁ」
トーリさんもため息。
「まだまだくるぞ。今日の分まで直接ここに届けるように手配してある。流星群の事で何かあるなら把握しておかないといけないからな」
伯爵が書類を捌きながら話す。
「私もやりましょうか」
「ありがとう。頼む」
「気になるものがあったら教えて欲しい」
伯爵とトーリさんは書類から目を離さない。
私も伯爵やトーリさんのようにサンドウィッチをつまみながら書類を読んでいく。
読んだ書類は
『教会』『相談』『喧嘩』『犯罪』『その他』
と書かれた箱に入れていく。
「おはようございます。サーヤさん」
執事のローランさんが書類でいっぱいの箱を持ってはいってきた。
「げっ」
トーリさんが小さな声で呻く。
「失礼します」
ローランさんが『教会』の箱一杯になった書類を持って出て行った。
ローランさんが見当たらないと思ったら書類を運んでいたみたい。
『教会』の書類がとても多い。セイナコウ教の神父や司祭だけでなく信徒の人達からも意見や苦情が数多くある。
『教皇様は何も言っていない。流星群が起こると言うご自身の言葉に責任を持てるのか』
『流れ星がたくさん見られると言うがそもそもそんな事が起こるのか』
『流星群を言い出した研究者にあわせろ』
「はぁ、セイナコウ教は何が言いたいのですか。文句を言っているだけですね」
「こちらの流星群が終わった後の物も読んでごらん」「…うんざりする」
私が教会関係者の意見を見て思わず呟くと伯爵とトーリさんも嫌そうな顔をしていた。
流星群が終わった後は、屁理屈とか自分達の保身ばかりで、伯爵のせいにしていて、真面目に相手をするのは難しいと思えた。
『相談』は自分はどういう行動をすれば良いかわからないというものが多く、避難所へ誘導したと報告されている。
『喧嘩』は教会の次に多く、その場で和解したものから自警団や騎士団の詰め所へ連れて行かれた物もある。
自警団や騎士団が領都中を警らして、小さな喧嘩でも見逃さないようにしていたためだと思う。
そのおかげか、大きな喧嘩でも酒場での多人数のもので、暴徒は繋がるものは無い。
『犯罪』は字の如く。避難している人の家を狙った空き巣、避難所でのスリなど。こういう時に犯罪者が動き回るのはどこの世界でも一緒なんだなぁと思う。
この後、家に帰った領民が空き巣に入られたと訴えにくるから『犯罪』は今から増えるとトーリさんが教えてくれた。
『その他』迷子、病気、怪我などだけれどたまに変わったものもある。
流星群を研究した人に会いたい。話をしたい。何故わかったか。何を研究したのか。
など、返答が出来ない事を聞いてくる人が数人いた。
どんどん山になっていく書類を捌き、とにかく捌き、少し落ち着いた頃には昼になっていた。
トントントン
ローランさんが書類と昼食を持って部屋に入ってくる。
「まだ、あるのか」
「午前の分が今運ばれてきていますので…」
「「「はぁ」」」
3人でため息をはく。今までのものは今日の明け方までの分だったらしい。
「良い報告もあります」
ローランさんが手紙を伯爵へ渡す。
「シューイ様からです。グレスク町には魔物は一匹も入らなかったそうです」
「そうか」
伯爵は手紙を読んで何度も頷く。
昼食を食べながら話しをする。
「トーリ」
伯爵はトーリさんに手紙を渡した。
「タクトは無事なようだ」
「良かった」
トーリさんの言葉に安心した。
手紙には魔物は防衛線を突破する事無く朝になる頃には森に帰った。こちらの死者は無し。倒した魔物の数が多い事と騎士達の怪我人が多数のため騎士団が領都に戻るにはまだ時間がかかる。
グレスク町は大きな揉め事も無かったので問題はないだろう。と書いてあった。
「ヨーコさんも無事で今は怪我人の世話をしているらしい」
「そうですか」
「魔物が出てくる場所も教えてもらえて助かったとある」
伯爵が教えてくれる。
「そういえば、昨日流星群が起こる事も教えてもらいましたね」トーリさん
「そうですね。こちらにいた時は日にちまでわからなかったのですけれど、夢見をしたのでしょうか」私
「そうかもしれないですね。おかげで混乱が少なくなりました」トーリさん
「母も役に立ててほっとしていると思います」
「ヨーコさんもサーヤさんも充分すぎるほどですよ。異世界の知識もそうですが人格も申し分ありません」
伯爵がきっぱりと言うので照れてしまう。
「では、今まで通りの日常になるように頑張りますか」
トーリさんが沢山の書類を見て言った。




