帰還
「ヨーコさんは明日戻るそうだ」
流星群から5日後の朝、トーリさんから言われた。(今私はトーリさんの仕事を手伝っている)
「皆さん戻られるのですか」
「重症の二人は動かさないほうがいいようだから残るけれど他の第1隊は帰ってくるな。第2隊は砦に残る」
「タクトさんやサントロさんも戻られるのですね」
トーリさんがニヤっと笑った。
なに?
「サーヤはタクトが帰ってくるのが嬉しそうだね」
「ち、違います」
「そう?ヨーコさんが帰るって言った時よりもタクトの時のが顔が「ち・が・い・ま・す」」
トーリさんが変な事を言うから顔が赤くなってしまう。
「はいはい」
トーリさんは話を聞いてくれないし。
書類が多くて食事もままならなかった仕事は何とか昨日で終わった。徐々に通常に戻ってきている。
何度か自称学者が流星群が起こる事を予測した研究者に会いたいと伯爵邸に来たけれどローランさんが追い返した。あまりに執拗いのでクロナン領にはいないと言ったらがっくりと肩を落として帰ったらしい。
聖女の力は言えないから仕方がない。
今日、母が帰ってくる。いつもより早く起きたのは嬉しいからなのかもしれない。この世界に来てこんなに長く母と離れていたことはなかった。
慰労会をすると伯爵が言い出し料理長が
「早めに言ってくださいよ」
と文句を言っているけれど顔は和やかだ。
グレスク町へ赴いた騎士団や伯爵家の文官、領都を守った騎士団、自警団の人達を呼ぶので伯爵家の1番広い夜会の出来る部屋や庭を使って準備を進める。自警団や騎士団は慰労会へは交代で出席するそうだ。
夕方、グレスク町へ遠征していた人達が帰ってきた。伯爵とトーリさんが玄関前に出て行く。私達使用人もその後ろへ並ぶ。
先頭の馬上にタクトさんの姿がある。連絡のあった通り腕に包帯が見られるけれど大丈夫そう。
タクトさんが馬から降りて伯爵の前に到着した。
馬車から頭や肩に包帯を巻いたサントロさんが降りてきた。その後に母が続く。元気そう。あっ、手を振っている。あれって私にだよね。はぁ。
小さく手を振った。
タクトさんが帰還の挨拶を伯爵として解散となる。
「皆、ご苦労だった。この後、慰労会を屋敷でするから参加して欲しい」
「「「「おぉ」」」」
トーリさんの言葉に地鳴りのような返事があった。
タクトさん、サントロさん、母が報告のため応接室へ向かう。
私は母と目があった時に『おかえり』と声を出さずに言い、皆んなが無事に帰ってきたことの報告のため大奥様のところへ向かった。
「皆、よくやってくれた。第1隊、魔物に対しても勇敢に戦ってくれたと聞いている。さすがクロナン辺境伯の騎士団だ。第3隊、自警団、教会からの圧力に負けず領都を守ってくれた。文官や他の者達も皆が頑張ってくれたから領民が以前と変わらない生活ができている。本当にありがとう」
「皆、今日は思う存分楽しんで欲しい。それでは…乾杯」
伯爵の後、トーリさんの乾杯の声で慰労会が始まった。
私は母とサントロさんやバーナルとテーブルに座っている。会場は立食バイキングになっているけれどテーブルもいくつか置いてある。
サントロさんが怪我をしているためテーブルでゆっくり食事をしている。
「バーナル君も警備をしたの」
母がバーナルに聞く。バーナルは騎士団に入って騎士見習いになっていた。
「はい。飲食街の担当だったので酔っ払いの喧嘩が多かったです」
「大変だったんだね」
私が聞くとバーナルも頷いた。
「流星群は見た?」
「見たわよ」
「少しだけだけれど見た」
「ぜんぜん見ている余裕がなかった」
私が聞くと母、バーナル、サントロさんが答える。
三人でサントロさんを見るとすごく嫌そうに
「あんなに魔物が出るのはいつぶりかわからない」
と言った。
「そんなに多かったの」
「倒された後の魔物を見たけれど多かったわよ」
母が頷く。
バーナルはサントロさんをきらきらした目で見ている。魔物を倒し町を守ったサントロさんが自慢で憧れなんだろうな。
食事しながら話をしているとタクトさんがこちらにやってきた。
「皆さんお疲れ様でした。団長、無理はしないでくださいね」
「タクトさんは怪我はどうですか」
腕の包帯を見て聞いたけれど、
「大丈夫、大丈夫。かすり傷だよ」
と言って私の頭を撫でた。また子供扱いされて少し膨れてしまう。
こちらを見てサントロさんと母が苦笑している。
その後いろいろな人がこのテーブルに来た。サントロさんを動かさないほうがいいのでずっとテーブルにいたのだけれど騎士団長だけあって挨拶が多かった。第1隊の人達が母と気兼ねなく話をしていたのには驚いてさた。
母はサントロさんの食べ物を準備したり飲み物をもらったりしていたので私もバーナルもテーブルにずっといた。
第1隊のノトイさんに
「四人家族みたいですね」
と言われた時にはバーナルと二人で笑ってしまった。
バーナルもサントロさんの気持ちがわかっているみたい。
サントロさんは
「お前、違うって言ってるだろう」
と怒り、
「違うわよぉ」
と、母はけらけら笑っている。
ノトイさんは隣にいた騎士に拳骨を頭に落とされていた。




