これから
母から涼一伯父さんの話を聞いた時
学校にはもう行けない事を再確認してしまった。わかっていたけれどやっぱり寂しい。
母が心配そうにこちらを見るので
「涼一伯父さんや友達に会えないのは寂しい」
と言ってしまった。母も
「私も寂しい」
そう言って私の頭をなでた。小さな子供ではないのにと思うけれど何となくそのままでいた。
その後キャトリさんが部屋に来て朝食を食べた。私達は態度に出さないようにしている。
今日は伯爵様と話し合う。
応接室へ入ると伯爵様とタクトさんがソファに座って羊皮紙を見て会話をしている。
「「おはようございます」」
母と挨拶する。
「おはようございます。ヨーコさんサーヤさん」
「おはようございます。よく眠れましたか」
タクトさん、伯爵様が挨拶される。
「お陰様でぐっすり眠ることができました」
ソファを勧められたので座るとキャトリさんがお茶を持って来てくれ、そのまま部屋の隅に待機した。
「では、昨日の繰り返しになりますが召喚とその後の話を聞かせてもらいましょうか」
伯爵様に問われて母を中心にしてタクトさんと私が補足しながら話を進めていく。
話し終えると
「私達の事でノースリー国に迷惑をかけていませんか」
母が伯爵様に聞いた。
「確かに教会と敵対する事は得策ではありません。代々国王に引き継がれる事とはいえ非常に危険な行動です。しかし、ノースリー国としても益があります。異世界の知識を教えてもらえますからね。陛下も政策的な面を考えていると思いますよ」
「そうですか」
「先代聖女のキョーカ様の残した物が王宮にあるのでこちらに送ってもらう事になってます」
「届いたら見せてもらえますか」
「もちろんです。解読出来ていない物もまだあります。研究途中なのです」
タクトさんが頷いて
「異世界の文字かもしれませんね。ヨーコさんやサーヤさんならば読めるかもしれないですね」
そう言いながら期待した眼差しで私を見る。
「はぃ」
曖昧に微笑みながらも私も期待する。先代聖女キョーカさん、名前から日本人と思われるから日本語でかいてあるのではないだろうか。何を思って異世界で生活していたのかとても興味がある。
「ところで今後のことなのですが…、お二人にはこの屋敷で自由に過ごして頂きたいと思います」
「何もしないのですか」母
「屋敷に閉じ込めるというのではなく警護は付けますが自由にやりたい事をして欲しいと思っています」
やりたい事かぁ。母も考え込んでいる。
「娘と相談しても良いですか」
私達は部屋へ戻った。
「沙彩は何がしたい?」
「私は…学校へ行きたいかな。サリーナさんと話をした時に平民にも学校、江戸時代の寺子屋みたいなのがあるって聞いたから行ってみたい、それに友達も欲しいから。お母さんはどうするの」
私は考えていた事をお母さんに言った。
「そうねぇ。帰れないならこれからの事も考えると仕事がしたいかな。お世話になるだけではだめだと思う」
母がうんうんと頷きながら話す。
「こちらの常識はキャトリさんから大体聞いたから後はその時に考えるしかないかしら」
「お母さんって相変わらずポジティブよね」
父が亡くなってからの母はいつも元気で明るい。ポジティブな前向き思考だ。
「何を言ってもこの状況は変わらないからね。沙彩も大概ポジティブよ」
「お母さんに似たのよ」
二人でけらけらと笑う。うん。親子だわ。
昼食後伯爵様への取り次ぎを頼むとすぐに会ってくださった。
私達の希望を話すと随分と悩んでいた。
「サーヤさんの学校ですが、平民の学校は15歳までです。18歳で卒業する貴族や裕福な家の子供が行く学校は王都になりクロナンにはありません」
「王都ですか」
お母さんとは離れたくないな。
「サーヤさんさえ良ければ一つ下の子共達と一緒に学校へ行くというのはどうでしょうか」
「良いのですか」
「こちらの都合で申し訳ないのですが、あまり目立たないようにしてもらいたいのです」
「あぁ、そうですね。私もここに居たいのでそのようにお願いします」
良かった。伯爵様に頭をさげる。
「一人警護の者は付けますよ」
「えっ、平民の学校で警護では目立ちませんか」
「その辺りは考えてありますので大丈夫です」
「いろいろお気遣いありがとうございます」
母がお礼を言うと伯爵様が微笑む。ちょっと格好良いです。
「それで、ヨーコさんですが…、申し訳ないのですが私の母の所で働いて貰えますか」
「こちらのお屋敷で雇っていただけるのですか」
「はい。母は足が少し悪く、気難しいのでご迷惑をお掛けするかもしれません。しかし、母の所ならば警護も出来ますし、母には聖女様の事を話しますので無碍な事はしないと思います」
今度は伯爵様はバツの悪そうな顔をされるので少し笑ってしまう。
「大丈夫ですよ。今までも義母も面倒をみていましたから」
母も笑いながら返事をした。
伯爵様もほっとしたようだった。
部屋も今のまま客間を使うように言われたけれどそれは断った。母が使用人になるのだから使用人部屋へ移ると引かなかった。辺境伯爵家は森の魔獣との戦いがあるため命を落とす騎士がいる。希望する未亡人や残された子供を屋敷に引き取り働いてもらっている。子供も屋敷から町の学校へ通っているそうだ。
私と母は伯爵様の遠縁の未亡人として紹介され、母は伯爵のお母様(大奥様)付きの侍女として働き、私は16歳だけれど田舎から出て来たのでノースリー国の勉強をするために学校に通うとなった。




