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【第四章連載開始!】エンデクライオンの騎士団   作者: E. C. ライリー
第三章:三振りの剣の謎

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外伝その1 ― ヴァルキリーズ(上)

第四章の始まる前にちょっと外伝ストーリーをお楽しみください。

 カオス・ジェネレーションズが「三振りの剣」を巡って聖アヴィントン・インターナショナル・スクールを襲撃してから、数週間が経過していた。事態はようやく落ち着きを取り戻しつつあった。「封印の洞窟」への入り口を隠していた建物の崩壊はガス爆発ということにされ、生徒たちはそのエリアへの立ち入りを厳しく禁じられていたため、その説明を疑う者は誰もいなかった。それどころか、生徒たちの関心は、最近赴任してきたばかりの美しい女性教師、アンヌリーゼ・ウィーバー先生の話題で持ちきりだった。


 校長室では、アンジェリカ・セルヴァンスが、姫神校長が座るソファの向かいにあるアームチェアに腰を下ろしていた。二人は白熱したチェスの対局の最中だった。校長の隣には、聖アヴィントンの制服を身にまとい、緑茶をすすっている一人の日本人女子高生の姿があった。彼女は同年代の平均的な日本人女子よりも背が高く、色白で柔らかな肌をしており、長い黒髪は高い位置でポニーテールに結ばれていた。彼女こそ、校長の孫娘であり、エンデクライオンの騎士でもある姫神香(かおり)だった。


「それで、アンヌリーゼはこの学校の生活に馴染んでいるのかしら?」アンジェリカはチェスの駒を動かしながら尋ねた。彼女が手を動かすと、校長は明らかに身をすくませた。


「ええ、順調ですよ」と香は答えた。「生徒たちにも大人気です。ネイサンくんよりも彼女の方が好かれているくらい。まあ、私たち全員よりも年上だということも関係しているんでしょうけど」校長が駒を動かす間、彼女はお茶を一口飲んだ。「正直なところ、私が本当に心配しているのはネイサンくんのことなんです」


「なぜですか?」アンジェリカが尋ねた。彼女がチェスの駒を動かすと、校長はまたしても身をすくませた。


「彼、鬱(うつ)状態に陥っているんじゃないかと思うんです」と香は言った。 「彼を責めるつもりはないわ。普段ならフリン・デヴローと互角に渡り合える彼でも、この前の戦いでは、デヴローに私たち全員が完全に圧倒されてしまったんだから。それに、アンドリュー・エカルドがあっさりとデヴローを追い払ってしまったことも、彼の立場を悪くしているわね」祖父がチェス盤で駒を動かす中、香はソファに深く身を沈めた。「私も失敗したわ。いっそ切腹でもすべきかもしれない――」


「切腹なんてやめておきなさい。過去に多くの上級職(ハイレベル)の侍たちが思い知ったように、あのレベルの人間がそれを実行するのは事実上不可能ですからね。ひどい腹痛と、何本もの折れた短刀が残るだけですのよ」彼女はチェス盤の駒を動かし、こう告げた。「チェックメイト」


「ぐぬっ!」と姫神校長が声を上げた。「次は将棋で勝負じゃ!」


「先週も将棋を指して、その時も私(わたくし)が勝ちましたのよ」とアンジェリカは立ち上がりながら言った。「デヴローに負けたことを、あまり深刻に考える必要はありませんわ。あの洞窟内での戦いは、彼にとって圧倒的に有利な環境でしたから」彼女はそう言いながら、ドレスの形を整えた。「それにアンドリューに関しては……まあ、『パクモン』で言えば、地面タイプには氷タイプが抜群に効く、といったところでしょうね」


 香は納得していない様子だった。アンジェリカは肩をすくめると、こう提案した。「いつもの日帰り旅行に出かけてみたらどうでその? ネイサンはああいう旅行に行くと、いつも気分が良くなりますのよ。それに、アンヌリーゼにとっても、ここのやり方を知るいい機会になりますわ」

 

***


 そうしてアンヌリーゼは、数人の女子生徒と共に電車に乗り、東京の街を巡ることになった。まだ21歳と若かったが、ラベンダー色のスーツドレスという仕事着に身を包んだ彼女は、生徒を引率する教師の姿そのもので、実によく似合っていた。とはいえ、彼女はこれまで大都会を訪れたことがなく、ましてや東京のような場所は初めてだったため、流れる景色を眺めながら、隠しきれない少女のような好奇心をのぞかせていた。


「すごいわね」と彼女は言った。「こんな街、見たことないわ。どこへ行けばいいのか、見当もつかないくらい」


「よかったら、案内プランを考えるお手伝いをしましょうか?」と、隣に座っていたノーラ・マイケルズが言った。「東京の観光スポットを一日ですべて回るのは無理ですけど、どんな場所に興味があるか話し合って、優先順位を決めれば……」内気な性格のノーラは、そこで言葉を濁した。アンヌリーゼは彼女に安心させるような微笑みを向けた。


「ありがとう、ノーラ」と彼女は言った。「一緒に考えましょう。私たちのちょっとしたプロジェクトにしましょうよ」


「あの、楽しいお話の途中で悪いんだけど」と、別の生徒が口を挟んだ。南アフリカ出身の長身の黒人少女、ブレア・タイラーだった。「彼のこと、どうするつもり?」


 ブレアが指したのは、ノーラの反対側に座っていたネイサン・アーセナルだった。彼は椅子に深く沈み込むように座り、うつむいたまま、悲しげで曖昧な笑みを浮かべ、虚空を見つめていた。一言で言えば、ひどく落ち込んでいる様子だった。


「ああ、結局どうでもいいことさ」彼は陰鬱(いんうつ)な口調で言った。「たとえ何かを成し遂げたり、すごいことをやったりしたって、結局はローランかアンドリューの影に隠れてしまうんだから。僕はただ、エカルド兄弟の前座を務めるために存在しているようなものさ」


「ああ、いつもよりひどいかも」と香は言った。「ネイサンくんが落ち込むこと自体は珍しくないけれど、今回は最悪のケースの一つかもしれないわ」


「あの、彼に対して何かできることはあるかしら?」とアンヌリーゼが尋ねた。


「さあ……どうかしら」とノーラは言った。「普段なら、興味を惹かれるものを見つけたり、対処が必要な緊急事態が起きたりすれば、落ち込んだ気分から立ち直るんだけど。でも、香さんが言った通り、今回はいつもより深刻みたい」


「そっとしておくしかないわね」とブレアは言った。「彼をその沈んだ気分から引っ張り出すために、私たちにできることなんてそう多くないと思うし」ブレアが身動きすると、彼女のバッグから金属が触れ合うようなはっきりとした音が聞こえた。


 香は眉をひそめた。「まさか、それを持ってきているんじゃないでしょうね」


「もちろんよ。私はエンデクライオンの騎士だもの。武器はどこへ行くにも持ち歩くわ」とブレアは言った。「シェイクスピアも『己に忠実であれ』と言っているしね。それに、あなたに文句を言われる筋合いはないわ。あなただって持っているじゃない」彼女は、香が竹刀袋の中に日本刀を隠し持っていることを指して言ったのだ。


「何を持ってきたの?」とアンヌリーゼが尋ねた。


 ブレアは周囲を見回してからアンヌリーゼに身を寄せ、「ほら、見せてあげる」と言った。彼女はバッグをほんの少しだけ開け、中に長い銃身の銃が二丁入っているのを見せた。


「普通の銃じゃないのよ。弾丸を撃つわけじゃないから」とブレアは説明した。「エレメンティアンとしての私の能力は、それほど大したことないの。無害なエネルギーの奔流を少し生み出せる程度。でも数年前、アフリカを巡業していたコーディ・モリソンと出会う機会があってね。彼がこの『相棒』たちを作ってくれたの。私のエネルギーの奔流を指向性エネルギー弾に変換して、連射できるようにしてくれるのよ」彼女は急いでバッグを閉じた。「とはいえ、警察には知られないほうがいいわね。普通の銃器じゃなくても、法的に厄介なことになるかもしれないから」彼女はため息をつきながら言った。「日本じゃなくてアメリカにいたら、もう少し堂々と持ち歩けるんでしょうけどね」

 

***


 一行はいつの間にか、東京でも有名な超高層ビルの一つにたどり着いていた。「最上階にすごく可愛いカフェがあるらしいの」とノーラが説明した。「行ってみない?」


「ええ、ぜひ行ってみたいわ」とアンヌリーゼが言った。「ネイサンくんはどう? あなたも見てみたい?」


 ネイサンは彼女たちの話に耳を傾けていなかった。それどころか、近くの公園のベンチに座り込み、猫たちに囲まれていたのだ。「ああ、猫に生まれていればよかったなあ」と、彼は一匹の猫を撫でながら言った。「人間の前で可愛くしていれば、向こうから餌を運んできてくれるんだから。なんて気楽な暮らしなんだろう」


「シェイクスピアの言葉に『不幸は人を奇妙な道連れと引き合わせる』とあるけれど、まさにそれね」と、ブレアはネイサンの様子を眺めながら言った。


「彼は一向に良くならないわ」と香が言った。「アンジェリカさんが彼を外に連れ出そうって提案してくれたのに、何をやってもダメ! 私って本当にダメね!」


 気づけば香もネイサンの隣に座り込み、猫たちの鳴き声に囲まれながら、すっかり落ち込んでいた。


「これじゃあ、お手上げね」とブレアは呆れたように言った。「とりあえず彼らのことは放っておいて、カフェで食事にしましょう」


「あの、ここで待っていてくださるなら、私たちは最上階のカフェに行っていますね」とアンヌリーゼが言った。


 それから数分後、一行は超高層ビルの最上階にあるカフェに座り、カフェラテを飲んでいた。ブレアが席を外してトイレに行き、アンヌリーゼとノーラが残された。二人きりになるとすぐに、ノーラが尋ねた。「ウィーバー先生、一つお聞きしてもいいですか?」


「もちろんよ」とアンヌリーゼは言った。「それから、立場上は先生と生徒だけれど、授業中や学校の時間外なら、『アンヌリーゼ』って呼んでくれると嬉しいわ」


「えっと、わかりました」とノーラは言った。「それで、えっと、アンヌリーゼさん……いつ、ハートウェル副団長に恋をしているって気づいたんですか?」


 それはアンヌリーゼにとって予想外の質問だった。「えっ――ノーラ! それはかなりプライベートなことよ」


「ご、ごめんなさい」とノーラは言った。「ただ……」


「い、いいのよ」とアンヌリーゼは言った。彼女は少し考え込んでから口を開いた。「正直なところ、トビーに恋をしていると正確にいつ気づいたのかはわからないの。長い間一緒にいて、気づかないうちに恋に落ちていたというか……ごく自然な感情で、疑問に思うことすらなかったのよ」彼女はカフェラテを一口飲み、こう付け加えた。「あまり参考にならなくてごめんなさいね」


「いえ、大丈夫です」


「それで、どうしてそんなことを聞いたの?」アンヌリーゼは眉をひそめて言った。「ネイサンのこと?」


 ノーラは顔を赤らめた。「彼に恋愛感情を抱いていないと言えば嘘になります」と彼女は認めた。「でも、必ずしも付き合いたいわけじゃないんです。一つには、同い年とはいえ、彼は先生で私は生徒ですから。それに正直なところ、彼への気持ちは『憧れ』に近いものだと思います」


「そうなのね」


「エカルド兄弟の影に隠れてしまっていることを、彼がすごく気にしているのは知っています」とノーラは言った。 「でも、彼がわずか11歳で博士号を取得したこと、独力で『クラッシュ・コース』を考案したこと、そして史上最年少のエンデクライオン騎士になったという事実は変わらないのです。エカルド兄弟の功績を軽んじるつもりはないですが、彼らがそれを成し遂げたのはネイサンくんよりも年上の時だった。ネイサンくんには、エカルド団長やその弟と自分を絶えず否定的に比べるのではなく、もっと自分の成功に目を向けてほしいと願うばかりです」


 アンヌリーゼが何かを言いかけたその時、突如として、完全な戦闘装備に身を包み、自動小銃で武装した二十人ほどの男たちがその場になだれ込んできた。「動くな!」と、その集団のリーダーらしき男が叫ぶ。


 当然のことながら、現場は阿鼻叫喚の渦と化した。来場者たちはパニックに陥り、次々と床に伏せていく。「テ、テロリスト?」とノーラが口走る。


 テロリストの一人が両手を掲げると、その手から光の弾丸のようなものが次々と放たれ、周囲の電球を撃ち抜いていった。


 アンヌリーゼは目を細めた。「ただのテロリストじゃないわ」と彼女は言った。「上級職超力者(ハイレベルサイリック)のテロリストよ」

外伝ストーリーはまだ続きます。お楽しみください。

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