第二十六話 過去編最終話
「過去編」の最終話です。お楽しみください。
過去
「さて、今のところ私にできることはすべてやりました」と、若い医師は医務室から出てきながら言った。「あとは彼女の回復力次第ですね」
トビーは、自分がまさか待つことになるとは思ってもみなかった場所――エンデクライオン本部の医務室――で待機していた。スコットランドから急遽呼び寄せられたその若い医師がアンヌリーゼの治療にあたっている間、彼はここ数時間、気が気ではない思いで過ごしていたのだ。
トビーは立ち上がり、こう言った。「えーと、ありがとうございます……マッカーサー先生、でしたよね?」
若い医師は呆れたように目を回してみせた。「エリザベスと呼んでください」彼女はスコットランド訛りを強めて言った。「『マッカーサー先生』なんて呼ばれるのは、どうも性に合わなくて。それに、私、あなたより5歳くらい年下ですし」
「俺より5歳年下?」トビーは言った。「君はまだ14歳なのか?」
「ええ、そうです」エリザベスは答えた。トビーがじっと彼女を見つめ続けていると、彼女は尋ねた。「何ですか?」
「あ、失礼なことを言うつもりはないんだけど、君は……少なくとも17歳、いや、18歳くらいに見えるよ」
エリザベスはまた目を回して言った。「ああ、気にしないで。そう言われたのはあなたが初めてじゃないから」彼女は周囲を見回してから尋ねた。「それで、私をこの場所に引っ張り込んだあの兄弟はどこへ行ったのかしら?」
「たしか、あっちの方にいると思うよ」トビーは医務室の外を指差して言った。エリザベスがその指差された方向へ歩き出すと、トビーも他にどうしていいかわからず、彼女の後を追った。
病棟の外で、ローランとアンドリューが深刻な様子で話し込んでいるのを見つけた。「で、このとんでもない組織に加わっちまった今、みんなには何て説明するつもりなんだい?」とアンドリューが尋ねた。
ローランは眉をひそめて言った。「まあ、カイルとサーラについては簡単だ。サンダースさんが、適切な時期が来たら自分から『騎士団』のことを話したいと言っているからね。だから、俺たちが決めることじゃないと思う」
「なるほど、それはいいな」とアンドリュー。「じゃあ、リアンナはどうする?」
今度はローランがひどく困ったような表情を浮かべた。「うーん……」と言葉を探すように口ごもる。「どう……だろうな。カイルやサーラには言わないのに、彼女にだけ話すっていうのは、何だか変な気がするんだ。だから……今のところは、秘密にしておく……ってことかな?」彼は吐き気を催したかのように視線をそらした。「ああ、リアンナに秘密を隠すなんて考えただけでも気分が悪くなるよ」
「兄さん、リアンナに甘すぎるだろ」とアンドリューは呆れたように目を回してみせた。
「ちょっといいかしら、二人とも」とエリザベスが声をかけた。兄弟はビクッと身を震わせ、彼女の方を振り返った。
「やあ、リズ」とアンドリューは愛想よく言った。「リズって呼んでもいいよね?」
「ええ、構わないわよ」エリザベスはアンドリューの愛想を完全に無視したような口調で答え、彼を苛立たせた。彼女はローランの方を向き、こう言った。「当面できる限りの処置は施したわ。あとは彼女自身の回復力次第ね」
「ありがとう、エリザベス」とローランは言った。
「それから、どうすることにしたか伝えておきたくて」とエリザベスは言い、近くのテーブルに置かれた瓶からプレッツェル・スティックを一本取り出した。それをかじると、彼女の顔にうっとりとした表情が浮かんだ。「んー、このプレッツェル、すごくおいしい。やみつきになっちゃうかも」と言いながら、彼女はもう一本口に運んだ。
「決めたのかい?」とローランが尋ねた。
「あ、ごめんなさい」とエリザベスは我に返った。彼女は微笑んで言った。「私、正式に『エンデクライオンの騎士団』に加わりたいの」彼女は手で大きく周囲を指し示しながら言った。「ここにいる短い期間で、エディンバラにいた頃よりもずっと居心地の良さを感じたの。それに、超力者やそれを取り巻く医学的知識について、もっと学びたいわ」
「二日前まで超力者が何なのかさえ知らなかった人にしては、悪くない考えだね」とアンドリューが言った。
「その通り」とエリザベスは言い、少し眉をひそめて続けた。「少なくとも、ただ人を……癒やす……という私の能力に、単なる『奇形』や『異端』といったこと以外の説明がつくと分かっただけでも嬉しいわ」
ローランとアンドリューは切なげな視線を交わした。やがてローランは彼女に向き直り、こう言った。「俺たちもここに来てまだ一ヶ月ほどの新入りだが、君がここで我が家のようにくつろげるよう力になることを約束するよ」
「ありがとうございます」エリザベスは彼に向かって満面の笑みを浮かべた。
それまでのやり取りの間ずっと黙っていたトビーが、突然口を開いた。「俺も『騎士団』に入れますか?」ローランとアンドリューが驚いた表情を見せると、トビーはこう尋ねた。「カオス・ジェネレーションズの元メンバーがエンデクライオン騎士団に入団してはいけないという決まりでもあるんですか?」
「いや、そんな決まりはないよ」とローランは言った。「元カオジェンからエンデクライオンの騎士になった例はいくらでもあるはずだ」
「ただ……」アンドリューは言葉を区切ってから続けた。「君の恋人に起きたことを考えると、君の動機が何なのか、どうしても懸念してしまうんでね」
「復讐心が頭にないと言えば嘘になります」トビーは認めた。「アンヌリーゼにしたことの報いとして、カオス・ジェネレーションズの連中が苦しむ姿を見たいという気持ちは間違いなくあります」彼は首を振ると、きっぱりと言った。「ですが、そうした感情も、カオス・ジェネレーションズの思想が至る所で超力者の精神を蝕み続けているという事実に比べれば些細なことです。私はここに、カオス・ジェネレーションズとの決別を宣言し、彼らの掲げる偽りの教義を阻止するために身を捧げることを誓います」
ローランとアンドリューは顔を見合わせた。「よし、俺としてはそれで十分だ」とローランは言った。「師匠、マーベリック騎士団長に話をしに行こう。そうすれば、準備が整い次第、君が活動を始められるかどうか分かるはずだ」
「やります」とトビーは言った。「エンデクライオンの騎士になるための、あの1年間の訓練コースを受けます」
「君はすでにシャドウ・ストーカーとしての訓練を積んでいるから、1年もかからないと思うよ」とアンドリューは言った。「ともあれ、エンデクライオン騎士団へようこそ」
エリザベスは手を叩き、声を弾ませて言った。「まあ、なんて素敵! 私たち、同じ時期に『騎士団』に加わった『素晴らしい四人組』になれるわね。これからどうなっていくのか、本当に楽しみだわ」
楽しめましたか?次回は「現在編」の最終話です。




