第二十一話 過去:エンデクライオン騎士、エカルド兄弟参上
はい、「過去編」の話です。注意してください。
過去
トビーは、傷つき倒れたアンヌリーゼを抱き寄せながら、自分を取り囲む者たちを睨みつけた。彼女の呼吸はかろうじて続いていた。おそらく、命をつなぎとめるために、彼女の体が自らのサイリック・エネルギーを少しずつ消費しているのだろう。当面は安全かもしれないが、それが長くは続かないことをトビーは理解していた。一刻も早く彼女をここから連れ出さなければならない。彼は脱出の糸口を探そうと、コロッサイやヴァージル、そして他の者たちへと視線を走らせた。
張浩宇が不敵な笑みを浮かべて前に出た。「さて、ハートウェル。お前が何もしないなら、俺が……」
その瞬間、警報が鳴り響いた。不意を突かれた一同は互いに顔を見合わせ、やがて全員の視線がコロッサイに集まった。彼自身もまた、突然の警報に明らかに動揺していた。「7番、13番。裏切り者たちを監視しろ。それ以外の者は俺についてこい」と彼は命じた。
7番、13番を除くすべての訓練生が、無言のままコロッサイに従い、バルコニーへと出た。そこで彼らが目にした光景は衝撃的で、恐怖を覚える者さえいた。
夜空にまばゆい光を放ち、激しく燃え盛っていたのは、炎で形作られた「E」の文字――「エンデクライオン騎士団」の紋章だった。
その紋章を目にしたヴァージルがコロッサイに目をやると、彼もまた他の者たちと同様に衝撃を受けている様子だった。
***
数分もしないうちに、訓練センターは戦闘準備を始める新兵や信徒たちで活気づいた。エンデクライオンの騎士と戦った経験のある新兵は一人もおらず、誰もが不安と緊張を隠せずにいた。とはいえ、多くの新兵はエンデクライオンの騎士と戦えることを楽しみにしてもいた。それは、将来シャドウ・ストーカーになるための道を切り開く好機だと捉えていたからだ。
「で、エンデクライオンと戦ったことはあるか?」と6番が尋ねた。
「あるわけないだろ」と張浩宇が答えた。「でも、これは絶好のチャンスだよな? エンデクライオンの騎士と戦える機会なんて、そうそうあるもんじゃないし」
「確かにそうだな。まあ、大した相手じゃないだろうけど」と6番は言った。「それに最悪の場合でも、俺たちにはマクシミリアン・コロッサイさんがいる。他の誰よりも多くのエンデクライオンの騎士を倒してきたシャドウ・ストーカーだ」
普段ならヴァージルも6番の言葉に同意していただろうが、何かがおかしいと感じていた。コロッサイは、あの燃え上がる「E」の文字を見て動揺しているように見えたからだ。ヴァージルは彼に歩み寄り、こう尋ねた。「コロッサイ教官、何かあったんですか? 過去にあれほど多くのエンデクライオンを倒してきたあなたなら、こんなことで動揺したりはしないはずですが」
「エンデクライオンのやり方は、本来こういうものじゃないんだ」とコロッサイは言った。「情報提供者を救出するためにエンデクライオンが現れる可能性は想定していた。だが、彼らの常套手段といえば、密かに潜入者を送り込んで情報提供者を回収することだ。今回のように大胆に自分たちの存在を誇示するような真似は、最も避けるはずなんだ」。コロッサイは一瞬言葉を切り、背筋を伸ばした。「だが、君の言う通りだ、19番。俺は他のどのシャドウ・ストーカーよりも多くのエンデクライオンの騎士を倒してきた。今回も例外じゃない」。そう言うと、コロッサイの自信が戻ってきたように見えた。
その間、彼らは誰も気づいていなかった。すでに何者かが天井から彼らを見下ろしていることに。
コロッサイは新兵たちを二人一組で巡回させ、不審な動きがあれば仲間に知らせるよう命じた。そのため、張浩宇は6番と共に、主要訓練施設の廊下を歩き回ることになった。曲がり角に差し掛かったとき、張の目に前方の奇妙な影が飛び込んできた。「ここで少し待っててくれ。先をちょっと見てくる」と彼は言った。
張は少し前へ出て、角からそっと様子をうかがったが、そこには何もなかった。「何でもない。どうやら俺の……」
振り返った張は、思わず息を呑んだ。そこには、全身が氷でできた刀の切っ先が、自分の胸に向けられていたからだ。
その刀を構えていたのは、十代半ばにも満たないような少年の姿だった。彼は托鉢笠を深く被り、顔の大部分を隠していた。純白の武道着のような服の上に、藍色の袖なしで襟の低い上着を羽織り、それらを黒い帯で締めている。腕には銀と黒の指ぬき籠手を装着し、足元は白足袋に下駄という出で立ちだった。彼の足元には、意識を失った6番が倒れていた。
張は緊張で唾を飲み込み、こう言った。「エンデクライオンの騎士、といったところか?」
「その通りさ」と少年は答えた。彼は笠を少し持ち上げ、その下から少年の顔をのぞかせた。無造作な短髪のダークブラウンの髪、茶色い瞳、そして頬を走る傷跡が特徴的だった。「名はアンドリュー・エカルド」
「聞いたことがないな」
「当然だろうね。なにしろ、今日が初仕事なんだから」
目の前のエンデクリオン騎士が単なる新米だと知った張は、激しい怒りを覚えた。しかし、張が動くより先に、3番と4番が背後からアンドリューに襲いかかった。アンドリューは3番の腹部に肘打ちを見舞い、そのまま拳の裏でその顔面を殴打。さらに、日本刀の柄で4番の顔面を強打した。この隙に、張は一歩後退し、自身の剣を抜いた。
アンドリューは目を細め、張の周囲を回り始めた。張は剣先をアンドリューに向け、「剣」の構えを取り、明らかに剣での勝負を挑んできた。それに対し、アンドリューは日本刀を「霞の構え」で保持した。
張は突如として加速し、猛烈な勢いで連続攻撃を繰り出したが、アンドリューはそのすべてを的確に受け流した。二人は一旦動きを止め、互いの周りを回るように牽制し合った後、張が再び怒涛の連撃を浴びせた。アンドリューはそれらすべてを捌ききり、今度は自らも激しい連撃で反撃に転じた。張はアンドリューの攻撃をすべて防いだものの、明らかに苛立ちを募らせていた。彼はより重く、攻撃的な一撃を次々と繰り出した。アンドリューがそれらをすべて防ぐたびに、張は攻撃のたびに荒い息を漏らし、怒りを増幅させていった。その結果、攻撃が雑になり始めた隙をアンドリューは見逃さなかった。彼は空いた方の拳を張の顔面に叩き込み、彼を壁まで吹き飛ばしたのだ。
だが、勝利を喜ぶ暇はなかった。突如、背後からヴァージルがバトルアックスを振り下ろしてきたのだ。アンドリューは間一髪で身を屈めて回避し、ヴァージルの斧は壁に深く突き刺さった。アンドリューはすかさずヴァージルの腹部にローキックを叩き込み、斧を壁に残したまま後ずさりする彼を追い込んだ。武器を失ったことに苛立ったヴァージルは、6番が落とした剣を拾い上げ、アンドリューに斬りかかった。アンドリューはヴァージルの攻撃をすべて受け流してみせた。
やがて態勢を立て直した張が再び戦いに加わると、アンドリューは氷でできた二本目の剣を出現させた。二本の剣を巧みに操り、彼はヴァージルと張の繰り出すあらゆる斬撃や打撃をことごとく受け流していく。だが、狭い通路で二人を同時に相手にするのは分が悪いと判断したのか、彼は両手の剣を大きく横に薙ぎ払って二人を後退させると、宙返りしながらその脇をすり抜け、廊下の奥へと走り出した。ヴァージルと張は互いに顔を見合わせ、すぐさま彼を追った。
食堂では、トビーが騒ぎの原因を訝しんでいたところへ、驚いたことにアンドリュー・エカルドが駆け込んできた。さらにアンドリューは、驚きの表情を浮かべる7番と13番の姿を認めると、被っていた笠を円盤投げの要領で彼らに向かって放り投げた。笠は二人に直撃して吹き飛ばすと、そのままアンドリューの手元へと戻っていった。トビーにとって、これが何よりも衝撃的な光景だった。あの二人があれほど簡単に吹き飛ばされたということは、その笠に「シールド・エクステンション」の力が込められていたことを意味するからだ。それこそ、トビーが何ヶ月もかけて習得しようと励んできた技そのものだったのである。
次々と新兵たちが食堂に駆け込んでくる中、アンドリューは前方に二度宙返りを決め、テーブルの一つへと飛び乗った。一人の新兵が足元を狙って斬りかかってくると、彼は軽々とそれを飛び越え、その新兵の顔面に蹴りを叩き込んだ。さらに二人の新兵がテーブルに這い上がろうとしたが、アンドリューは彼らの攻撃を難なく受け流し、そのままテーブルから突き落としてみせた。トビーはただ呆然と見つめるしかなかった。自分よりも明らかに年若いこの謎の剣士が、何ヶ月も共に訓練を重ねてきた新兵たちを次々と鮮やかな手際で退けていく様を。
やがてヴァージルが食堂に駆け込んできた。彼はテーブルに飛び乗ると、斧を振るってアンドリューの手から剣を弾き飛ばした。だがアンドリューは動じることなく、ヴァージルの腹部に拳を叩き込んで動きを止め、アッパーカットでテーブルから突き落とした。すかさずアンドリューもテーブルから飛び降り、床を転がりながら剣を拾い上げる。ちょうどその瞬間、張が彼に向けて剣を振り下ろしてきた。
張は怒りの唸り声を上げ、激しい連撃でアンドリューに襲いかかった。アンドリューはそれらすべてを難なく受け流していく。張の攻撃がさらに激しさを増す中、アンドリューはついに、ひときわ強烈な一撃を自身の剣で受け止めることを余儀なくされた。張は力ずくでねじ伏せようと、剣を押し下げる。アンドリューも負けじと押し返し、二人の顔は至近距離で向き合う形となった。アンドリューが不敵な笑みを浮かべたその瞬間、張の反応よりも早く、床から氷の柱が突如として噴き上がり、二人を分断した。
アンドリューは態勢を立て直そうとしたが、気づけば壁際に追い詰められていた。そこは食堂であり、コリンや張を含む、まだ意識の残っている10人の新兵たちに囲まれていたのだ。彼は緊張混じりの笑い声を漏らした。息を整えた張が、声を上げて笑った。「残念だったな、新米騎士さんよ。初仕事の日が、お前の最後の日になるってわけだ。空に炎の紋章をあんな派手に描いて、大々的に自分を売り込んだ報いさ」
アンドリューは張をじっと見つめると、今度は堂々と笑い出した。「なんだ、あの紋章を作り出したのが僕だとでも思ってるのか?」
そう言われてみれば、確かに理屈に合わない。アンドリュー・エカルドは明らかに氷の能力を持つエレメンティアンだったはずだ。それなのに、空に炎の紋章を描くには、火の能力を持つエレメンティアンでなければならない――。
張がその事実に気づいたまさにその瞬間、天井から巨大な火の玉が降り注ぎ、凄まじい爆発が起きた。その衝撃で新兵たちは吹き飛ばされ、全員が気絶してしまった。爆発の炎が急速に消え去ると、倒れ伏した新兵たちを見下ろすようにして、もう一人の少年が立っていた。彼は赤と青の武闘家風の衣装を身にまとい、赤い帯と鉢巻き、青いリストバンドらしきものを着けた白い手袋、そして黄色の靴底の白いブーツを着用していた。その顔立ちはアンドリューと瓜二つで、二人が双子の兄弟であることを物語っていた。
「やるじゃん、ローラン兄さん」とアンドリューが言った。彼はクスクスと笑いながら続けた。「いやあ、まさか本当にうまくいくなんて信じられないよ!」
「だよな!」ローランも声を弾ませた。彼もまた、興奮を隠しきれない様子だった。「初任務でこれだけの数のカオジェンを倒せたんだ。本当にやったなんて信じられない!」
「全くだよ!」アンドリューも同調した。「まあ、あの地獄のような一ヶ月を乗り越えた後で失敗してたら、がっかりするところだったけどね。そもそも、そのためにあの『クラッシュ・コース』を受けたんだから!」
「やめろ!やめてくれ!あのクラッシュ・コースの話は二度としないって約束しただろ!」とローランは言った。「地獄の一ヶ月はもう終わりだ!過去のこと、終わったことなんだ!今はただ、初任務を完遂した勝利の余韻に浸ればいいのさ」
「そうだな、初任務完了だ」とアンドリューが言った。
一瞬、兄弟は互いを見つめ合ったが、やがて同時にこう言った。「まだ仕事は終わってない!」そう言うと、二人はトビーとアンヌリーゼの方を向き、彼らに向かって駆け出した。
兄弟が近づいてくる中、トビーは力なく大鎌を構え、アンヌリーゼを抱きかかえた。
「おい、待ってくれ。俺たちは戦いに来たわけじゃない」ローランは両手を挙げて言った。「俺の名はローラン・エカルド。こっちは弟のアンドリューだ。俺たちはエンデクライオン騎士団の戦闘騎士で、情報提供者を迎えに来たんだ」
トビーは兄弟をじっと見つめてから、ゆっくりと大鎌を下ろした。「俺の名はトバイアス・ハートウェル。そして、こっちが情報提供者のアンヌリーゼ・ウィーバーだ」彼は懇願するような瞳で二人を見上げた。「頼む、彼女を助けてくれ」
ローランとアンドリューはアンヌリーゼに目をやり、顔をしかめた。「一刻も早く病院へ連れて行かなきゃならない」とアンドリューは言った。
「病院に連れて行けたとしても、どうにもならないかもしれない」とローランドは言った。「これほどの怪我となると、専門医が必要になるだろうからな」
アンドリューは少し考え込んでから言った。「なあ、兄さん。数日前に見たドキュメンタリー、覚えてるか?『世界の天才児たち』っていうやつ」
ローランは眉をひそめて言った。「エディンバラにいる、俺たちより一つ年下なのにすでに医師免許を持ってるあの少女のことか?名前は何だったっけ……エリザベス・マッカーサーだっけ?」
「そう」とアンドリューは言った。「兄さんも僕と同じことを考えてたんだろ?彼女は上級職超力者なんじゃないかって」
ローランは片眉を上げ、「てっきりお前、『可愛い子だな』なんて考えてるのかと思ってたよ」と言った。
「まあ、それも考えてたけどな」とアンドリューは認めた。「でも、今はそんな話をしてる場合じゃないだろ!」
「わかった」とローランは言った。「じゃあ、機会を見つけてエディンバラへ飛び、マッカーサー医師に会って、騎士団に連れてこよう」。彼はアンヌリーゼに目を向け、「最低限、彼女が騎士団に入らなくても、この可哀想な少女を診察してもらうことくらいは頼めるはずだ」と言った。
「よし、それでいこう」とアンドリューは言った。「とにかく、まずはここから脱出だ」
ローランとアンドリューは、トビーがアナリースを慎重に動かすのを支えた。まさに動き出そうとしたその時、巨大なウォーハンマーを携えたマクシミリアン・コロッサイが、食堂の扉を突き破って乱入してきた。「お前ら、ここから生きては出さんぞ!」と彼は怒号を上げた。
ローランとアンドリューは不安げに顔を見合わせた。「やれやれ、結局『シャドウ・ストーカー』と戦う羽目になったか」とローランが呟く。
「うわっ、シャドウ・ストーカーと戦う心の準備なんてできてないよ」とアンドリューが言った。
「他に選択肢はなさそうだな」とローランは言った。
面白かったですか?何度も忠告しますが「過去編」と「現在編」の二種類の話があるので注意してください。




