第二十話 過去:トビーの反逆
はい、「過去編」の話です。注意してください。
過去
トビーが大鎌を振り回し始めると、新兵たちは彼とアンヌリーゼを取り囲むように大きな輪を作った。張が剣を振るいながら前に出る。
「誰にも手出しはさせん」と張は不敵な笑みを浮かべて言った。「ハートウェルは俺が仕留める!」
トビーは大鎌を構え、目を細めた。一方の張は剣を体の前に掲げ、自身の得意とする太極拳の構えをとった。訓練において、新兵たちは標準的な軍用近接格闘術(CQC)を叩き込まれるが、希望すればさらに任意の武術を学ぶこともできた。トビーも複数の武術について一通りの知識は持っていたものの、標準的なCQCを好み、それを極めていた。
張は無言のまま身を躍らせ、太極拳の如く緩急自在かつ正確な動作で優雅に剣を振るった。トビーは大鎌を回転させ、飛来する剣撃をことごとく受け流し、弾き飛ばしていく。それでも怯むことなく、張はリズミカルな身のこなしで回転しながら、多角的にトビーを攻め立てた。トビーは大鎌を操り、辛うじて防御を固めるのが精一杯だった。彼は後退しつつ張に向かってトランプのカードを投げつけたが、張はそれを軽々と叩き落とした。
トビーは心の中で自分を呪った。最も必要とされるこの局面においてさえ、彼はまだ「シールド・エクステンション」の技を習得できていなかったのだ。
張は再び不敵な笑みを浮かべ、攻勢を強めた。やがて彼はトビーを膝をつく体勢にまで追い込み、剣を振り下ろした。トビーは大鎌を高く掲げ、その攻撃を防ぎ続けた。これこそがトビーの狙っていた張の弱点だった。張には、一つの攻撃スタイルに没頭するあまり、他の攻撃パターンに対して完全に無防備になってしまうという悪癖があったのだ。その隙を見逃さず、トビーは張の剣撃に合わせて大鎌を振るい、攻撃を弾き飛ばした。そして、不意を突かれた張の顔面に、渾身の拳を叩き込んだ。
張は衝撃に驚愕の表情を浮かべ、よろめきながら後ずさりした。やがてその表情は怒りへと変わり、彼は再びトビーに斬りかかった。だが今度はトビーが主導権を握っていた。彼は鎌を振るう絶妙なタイミングで張の攻撃をことごとく受け流し、冷静に対処したのだ。トビーは鎌の柄の部分を張の顔面に叩きつけ、再び彼を後退させた。そして身を躍らせて斜めに回転しながら、刃の旋風を巻き起こすように鎌を振り回した。
鎌の一撃が張の肩に叩き込まれ、彼は膝をついた。張が態勢を立て直す間もなく、トビーは彼の顔を掴み、その頭を床に叩きつけた。張は苦痛にうめき声を上げた。彼が起き上がろうとすると、トビーは再びその頭を床に打ち付けた。
顔を床に押さえつけられた手の指の隙間から、張はトビーを睨みつけた。だが、そこで目にした光景に彼は戦慄した。トビーは狂気を帯びた笑みを浮かべ、彼を見下ろしていたのだ。
「どうした、張? 痛みが足りないか?」トビーはそう言いながら、再び張の頭を床に叩きつけた。「ハッ! お前が今感じている痛みなんて、『カオス・ジェネレーションズ』がアンヌリーゼに与えた痛みに比べれば何でもない。その痛みを少し味あわせてやろうか?」彼は空いた方の拳を張の腹部に叩き込んだ。
トビーはにやりと笑っていた。それは、決して穏やかな笑みなどではなかった。
彼らを取り囲んでいた新兵たちが、そわそわし始めた。張からは手出し無用と言われていたものの、実際には彼が助けを必要としているのではないかと思い始めた者が多かったからだ。
新兵たちの様子に気づいたトビーは、にやりと笑みを浮かべて彼らの方を向いた。「どうした? こいつに加勢しに来ないのか?」と彼は言った。「心配するな、お前ら全員にたっぷり痛みを味あわせてやるからよ」トビーの言葉と笑みに、ヴァージルを含めた新兵たちは皆、明らかに動揺した様子を見せた。トビーは再び張を殴打し始めた。
「おのれ、ハートウェル!」張は打撃を受けながら、うめくように叫んだ。トビーは構わず殴り続けた。
「まだだ」とトビーは言った。「お前はまだ、ほんの一部も味わっちゃいない――」
トビーの言葉は、マクシミリアン・コロッサイが突然中二階から飛び降り、彼の目の前に着地したことで遮られた。トビーが鎌を掴むのが先か、コロッサイの拳が腹部に叩き込まれるのが先かという一瞬の出来事だった。衝撃で息を奪われたトビーが反応する間もなく、コロッサイは続けざまに顔面へアッパーカットを叩き込み、トビーを食堂の奥へと吹き飛ばした。壁に激突したトビーは苦痛にうめき声を上げたが、それでもなんとか鎌を放さずに握り続けていた。
「教官?」と、立ち上がりかけた張が言った。
「よく覚えておけ、張浩宇」とコロッサイは言った。「『シャドウ・ストーカー』を名乗る以上、遊びに興じるべき時と、任務を完遂すべき時があることを忘れてはならん」。彼はそう言うと、床に倒れているアンヌリーゼの方へ歩み寄った。「それに、裏切り者は迅速に始末せねばならん」
「や、やめろ……」トビーはうめき声を上げた。アンヌリーゼの元へ行こうとしたが、コロッサイの一撃による痛みがまだ残っており、激痛に体を折り曲げてしまう。それでも彼は、必死になってアンヌリーゼの倒れている場所へと這っていった。
コロッサイは巨体に見合う巨大な足を上げ、アンヌリーゼの頭上で静止させた。
激痛に耐えながら、アンヌリーゼはなんとかトビーの方へ顔を向けた。涙に濡れた灰色の瞳には、彼女が抱く恐怖の色が浮かんでいた。だが、トビーに向けたその穏やかで悲しげな微笑みは、彼女が自らの運命を受け入れたことを物語っていた。
「トビー……」彼女は言った。「私……あなたを……愛し……」
不快な骨の砕ける音と共に、コロッサイはアンヌリーゼの顔面を力任せに踏みつけた。
「やめろ!」トビーは叫んだ。涙を流し、嗚咽で体を震わせながら、彼はなんとかアンヌリーゼのそばまで這い寄った。周囲では、新兵たちが一斉に笑い声を上げ始めた。
その光景を眺めるヴァージル・コリンの表情には、この事態に対する彼の本心がはっきりと表れていた――それは、肯定の念だった。
面白かったですか?何度も忠告しますが「過去編」と「現在編」の二種類の話があるので注意してください。




