第十一話 現在:エリザベスの挿話
はい、「現在編」の話です。注意してください。
現在
エンデクライオン本部にある医務室で、リアンナは訓練中に痛めた肩の筋肉の治療を受けていた。エリザベスは、少し苛立った様子でリアンナの肩に治癒の力を注いでいた。彼女を苛立たせていたのはローランだ。彼は落ち着きなく行ったり来たりしながら、リアンナのことをひどく心配していたのだ。
「ローラン、少し落ち着いてくれないかしら」エリザベスは、スコットランド訛りを際立たせながら言った。「リアンナは大丈夫よ」
「本当に?」ローランはパニック寸前の様子で言った。「だって、リアンナはフェンシング選手なんだから、肩が万全じゃないと困るんだ。もし何かあったら、俺は……」
「ローラン、私は本当に大丈夫よ」リアンナは言った。「エリザベスの治療は魔法みたいに効くから。ほら、もう何ともないわ」そう言ってリアンナが肩を回してみせたところ、あいにく痛みに顔をしかめることになり、逆効果となってしまった。
「リアンナ!」ローランが叫んだ。「お願いだ、エリザベス! 彼女にお前の治癒魔法をかけてくれ!」
「もう治癒魔法をかけてるでしょ」エリザベスはきつい口調で言い放った。「いいから黙ってて。そうしないと、この医務室から追い出すわよ!」
「失礼します」と、入り口から声がかかった。誰かが応えるよりも早く、一人の女性が姿を現した。アジア系の血を引く、息をのむようなエキゾチックな美女――諜報部隊長のアイリーン・ローレンスだった。
「やあ、アイリーン。どうしたんだい?」ローランはそう言いながら、騎士団長としての顔つきに切り替えた。
「団長! お会いできて嬉しいですわ!」アイリーンは明るい声で言った。少々、明るすぎると言えるほどに。
ローランに対するアイリーンの振る舞いに居心地の悪さを覚えつつ、リアンナはおずおずと「こんにちは」と声をかけた。その瞬間、アイリーンが自分に向けた、純粋な嫌悪を滲ませた視線に、リアンナは完全に不意を突かれた。だが、その表情はあまりに一瞬のことで、リアンナは今のは見間違いだったのではないかと思ったほどだ。一方、エリザベスもまたその視線を目撃していた。彼女はリアンナの処置を終えると、呆れたように目を回し、コンピュータのキーボードを叩き始めた。
「とにかく、団長」とアイリーンは言った。「最高評議会が、あなたにできるだけ早く会いたいと言っていることを伝えに来ました」
ローランは、最高評議会など会いたくもないという表情を浮かべた。「えーと、わかった、ありがとう。なるべく早く顔を出すよ」
「それでは団長、失礼します」アイリーンはそう言って踵を返した。だが、立ち去り際に彼女は小声でこう呟いた。「王女ですって? 冗談でしょ? 本気で王女? 王室連絡騎士? 笑わせるわ」
エリザベスはタイピングの手を止めずに言った。「ねえ、その態度が原因で『副団長』の地位を逃したかもしれないって、考えたことはないの?」そのスコットランド訛りには、強烈な皮肉が滲んでいた。
「つい一ヶ月前に十八歳になったばかりの小娘に、説教されるわけ?」アイリーンは言い返した。
「ふん」とエリザベスは鼻で笑った。「それから、ソール・ハウランに伝えておいてくれる? 怪我をしていないなら、医務室をうろつかないようにって」
「自分で言えばいいじゃない」アイリーンは皮肉っぽく言った。「それとも、元彼に比べたら格下すぎて相手にする気になれないのかしら?」
元彼の話題が出た瞬間、エリザベスはタイピングの手を止めて動きを止めた。
「そこまでだ!」ローランが声を荒らげた。「アイリーン、諜報部隊長としての務めを果たせ!」
言い過ぎたことに気づいたアイリーンは、素っ気なく一礼すると、医務室から出て行った。
アイリーンが立ち去るとすぐに、リアンナは静かな声で尋ねた。「彼女、私のこと嫌いなのかな?」
「ああ、そんな気がするな」とローランは言った。「理由はさっぱり分からないけど」
「放っておけばいいのよ」エリザベスはそう言いながら、再びタイピングを始めた。「アイリーンに諜報部隊長としての立場をわきまえさせておきさえすれば、彼女もプロとして振る舞うはずだから」
「諜報部隊といえば、ハウランが頻繁にここを訪れている理由、分かっているよね?」とローランは言った。
エリザベスはため息をつき、「ええ、分かっているわ」と答えた。彼女はタイピングを止め、椅子を机から少し後ろへ引いた。「私が十八歳になってから、特に頻繁に来るようになったし。でも残念ながら、彼が望むような形では応えられないわ」
「本人に直接そう伝えたほうがいいよ」とローランは言った。
「そうすべきなのは分かってるわ」とエリザベスは言った。「でも、彼からその話題を切り出さないのに、こっちから持ち出すのはすごく気まずくて」彼女はプレッツェルを一本手に取り、ポリポリとかじり始めた。「とにかく、リアンナ。ローランが最高評議会へ行くときは、あなたも一緒に行くといいわ」
「えっ? でも、私はただの訓練生よ」とリアンナは言った。
「あなたは王室連絡騎士なのよ」とエリザベスはにやりと笑った。「ミストカリアの王女なのよ。その立場をうまく利用することを覚えるべきだわ」
***
驚いたことに、最高評議会はエンデクライオンの本部にはいなかった。彼らがいたのは、聖アヴィントン私立学園からそれほど遠くない場所にある、豪奢な建物だった。実のところ、リアンナはその建物の前を、登下校のたびにほぼ毎日通り過ぎていたのだ。
一方で、リアンナにとって意外ではなかったこともある。それは、エンデクライオン最高評議会が、中年から老年の、堅苦しく尊大そうな男たち二十人ほどで構成されていたという事実だ。彼らの姿を目にしただけで、リアンナは反射的に身構えてしまった。
その後一時間、ローランは顔を引きつらせ、無理やり笑みを浮かべながら、延々と続く説教に耐え続けた。当初、話題はローランが最高評議会に事前の相談なくトビー率いる先遣隊を日本へ派遣したことに関するもののように見えた。しかし、それが単なる口実に過ぎないことは、すぐにリアンナにも明らかになった。最高評議会が真に求めていたのは、自分たちの権威を誇示し、自らの重要性を実感することだったのだ。
ローランが説教に耐える間、リアンナはずっと彼の隣に立ち、その手を握りしめていた。彼が緊張するのを感じるたびに、安心させるようにその手をぎゅっと握り直すこともあった。その仕草は、評議会のメンバーの何人かの目にも留まっていた。
ようやく講義が終わり、ローランは疲れ切った様子でリアンナと共に評議会の議場から出てきた。議場のすぐ外の廊下で、二人はジョナサン・ハワード牧師と顔を合わせた。
「どうだった?」とハワード牧師が尋ねた。
ローランは一息ついてから言った。「……いつもほど酷くはなかったよ」
評議会との会合がこれでも「穏やか」だったのなら、普段は一体どんなものなのだろうとリアンナは思った。
「それはおそらく、リアンナのおかげだろうね」とハワード牧師は言った。「ミストカリアの王女が同席していたことで、評議会の連中も遠慮して、本気で激しく責め立てることはできなかったんだろう。それに、彼女の存在は君にとっても心の支えになったはずだ」
「たとえそうだとしても、あそこまで激しく説教をする必要はなかったはずだ」と、近くから声がした。リアンナが顔を上げると、そこには最高評議会のメンバーの中でも比較的穏健な人物の姿があった。四十代後半と思われる長身の美丈夫で、豊かな茶色の髪と髭を蓄え、淡い黄褐色のロングコートを身にまとっている。彼は杖をつき、少し足を引きずりながら歩いていた。「最高評議会を代表して、お詫び申し上げたい」
「師匠」ローランは背筋を伸ばして言った。彼はリアンナの方を向き、こう紹介した。「リアンナ、彼はオーガスト・マーベリック。騎士団長の先代であり、エンデクライオン騎士としての俺やアンドリューの師匠でもある方だ」
「ついにあなたにお目にかかれて光栄です、ケリス嬢」オーガスト・マーベリックは軽く会釈をして言った。「それとも、『殿下』とお呼びすべきでしょうか?」
「お会いできて嬉しいです」リアンナは優雅に一礼して応えた。「どうか、リアンナと呼んでください」
マーベリックは頷いた。「本来なら、ローランがこの任に就けるようになるまで、あと数年は私が騎士団長を務めるはずだったのです」彼は言った。「しかし、負傷による早期引退を余儀なくされ、ローランは予定よりずっと早く騎士団長になることになってしまいました。その点については申し訳なく思っています」彼は苦々しげに唸ると、言葉を続けた。「それに、最高評議会の職を引き受けるべきではありませんでした。エンデクライオンを離れる心の準備ができていなかったという愚かな自尊心ゆえのことですが、今や私は、家族と過ごすべき時間を削って、尊大で古臭い連中が自分語りを延々と続けるのを聞かされる羽目になっているのですから」
「引退後は評議会に加わろうと考えていたのですが」ハワード牧師が言った。「再考すべきでしょうか?」
「お勧めはしませんよ、ジョナサン」マーベリックは言った。「ですが、歓迎はします。まともに話ができる相手がそこにいてくれたら、どんなにいいことか」
「正直なところ、彼らのあの敵対的な態度を考えれば、俺が騎士団長の地位に就けたこと自体が驚きですよ」とローランは言った。
「よくよく考えてみれば、運も味方していましたね」とハワード牧師は言った。「サイモン・サンダースと私が君に投票することは確実でした。君が子供の頃から知っていて、その任を全うできると信頼していましたから。それに、ギブンズ、モリソン、ローレンス、そしてドクター・マッカーサーといった新任の面々も、君を強く支持していました。特にドクター・マッカーサーは、医療部隊長に就任したばかりでしたからね。実際、君に反対票を投じたのはマックスウェル・ローズだけでしたよ」
「彼が騎士団長の座を自分で狙っていたから、というのが主な理由でしょうね」とマーベリックは言った。「彼が副団長として君の部下につく羽目になったことについては、申し訳なく思っています」
「マックスウェル・ローズ」という名前が出ると、ローランは呆れたように目を回した。「まあ、彼はその一ヶ月後にはクビになりましたから、彼と付き合わされた期間はそれほど長くはありませんでしたよ」と彼は言った。「それに、代わりにトビーが副団長になってくれましたから、長い目で見れば結果オーライだったと言えますね」
アンドリューが現れたのは、ちょうどその頃だった。「あれ、会議には遅れちまったかな?」と彼は言った。
「いいタイミングだな」とローランは皮肉っぽく言った。「終わった直後に到着するなんて、さすがだね」アンドリューはただニヤリと笑い返した。
「相変わらずだな、アンドリュー」とマーベリックが言った。
「やあ、師匠」アンドリューは笠の縁に手を当てて挨拶した。それからローランに向き直り、「で、何の話をしてたんだ?」と尋ねた。
「マックスウェル・ローズのことだ」とローランが言った。
アンドリューは顔をしかめた。「リズの元カレか? なんでそんなやつの話をしてるんだ?」リアンナが驚いた表情を浮かべているのを見て、彼は言った。「なんだ? 僕、何か変なこと言ったか?」
ローランは少し気まずそうな顔をした。「彼が以前『副団長』だったという話をしていただけだ」と彼は言った。「彼がエリザベスの元カレだなんてことは、一言も言っていなかったんだ」
今度はアンドリューが気まずそうな顔をした。「また余計なことを口走っちゃったな」
「ちょっと待って」とリアンナが声を上げた。「時期を考えると、エリザベスはその時まだ16歳になったばかりだったんじゃない?」
「そこが問題なんだ」とローランが言った。「エリザベスらしくない話に聞こえるだろうけど、どうやらまさにその『らしくなさ』が理由だったらしい。彼女自身はそれを『反抗期』のせいにしてるけどね」
「リズは滅多にその話をしないから、詳しいことはよく分からないんだ」とアンドリューは言った。「でも分かっているのは、ローズが彼女を誘惑して事の発端を作ったってこと。リズは当時若くて多感だったし、『禁断の』ことをするっていうスリルに惹かれて受け入れてしまったんだ。でも関係が深まるにつれて、ローズは彼女が望まないことまで次々と要求するようになった。やがてリズは怖くなって別れようとしたんだけど、ローズはそれを認めなくて……」アンドリューはそこで言葉を濁した。
「俺とアンドリューで、現場を押さえたんだ」とローランが言った。「徹底的に叩きのめしてやったよ。当然、その後すぐにクビになった」
「あの時は本当にスカッとしたよ」とアンドリューは言った。「でも、その後のリズの様子は忘れられない。泣きじゃくりながら僕たちにしがみついて、『ごめんなさい、本当にごめんなさい』って何度も何度も繰り返してたんだ。まるで……」
「反抗の代償を思い知らされたティーンエイジャーが、親に許しを請うような姿だった」とローランが言った。「あんなエリザベスの姿は、あれ以来一度も見ていない」
リアンナは二人の兄弟を交互に見つめ、こう言った。「本部まで送ってもらえないかしら?」
***
エンデクライオン本部の医務室で、エリザベスがコンピュータに向かって作業をしていると、背後から誰かに抱きしめられた。「あれ? リアンナ?」彼女はくすりと笑い、冗談めかして言った。「今朝会ったばかりじゃない。そんなに私に会いたかったなんて思わなかったわ」
リアンナは少しの間、何も言わずにいた。やがて、彼女は静かに口を開いた。「ローランとアンドリューから、マックスウェル・ローズのことについて聞いたわ」
エリザベスは体をこわばらせた。しばらくして、彼女は大きなため息をつき、まるで全身の力が抜けてしまったかのように肩を落とした。「そう……」彼女は悲しげな笑みを浮かべて言った。「あの『天才医師』ドクター・エリザベス・マッカーサーが、あんな愚かなミスを犯したと知って、幻滅した?」
リアンナは少し黙っていたが、やがて言った。「エリザベス、世間はあなたを、すでに外科医の資格と博士号を持つ医療の天才と呼んでいるわ。でも結局のところ、そうした肩書きや資格の裏には、私よりも年下で、自分なりの望みや願いを持つ、ただの普通の女の子がいるという事実は変わらないのよ」
エリザベスは黙ったまま、目に涙を浮かべ始めた。
「エリザベス。マックスウェル・ローズとの間に何があったのか、詳しいことは私にはわからないわ。だから、私がエイドリアン・ジラスと経験したことと比べられるようなことなのかどうかもわからない」とリアンナは言った。「でも、もしそのことについて誰かに話したくなったら、私が必ず力になるわ」
エリザベスは鼻をすすり、涙をこぼしながら言った。「ありがとう、リアンナ。その言葉、本当に嬉しいわ」
ローランとアンドリューは、医務室の入り口からその二人を見守っていた。「それで、これでリズは心の整理をつけられると思うか?」とアンドリューは尋ねた。
「どうだろうな」とローランは言った。「でも、何かのきっかけにはなるかもしれない。願わくは――」通信機が鳴り始めたため、彼は言葉を切った。それを取り出し、彼は言った。「エカルドだ」
通信機の向こうから、コーディ・モリソンの声が聞こえてきた。「団長、報告します。ストームVTOLジェット号の飛行準備が整いました」
面白かったですか?何度も忠告しますが「過去編」と「現在編」の二種類の話があるので注意してください。




