第七話 過去:訓練の日々
はい、「過去編」の話です。注意してください。
過去
1年に及ぶ訓練プログラムが始まって2ヶ月ほど経つ頃には、トビーとヴァージルは新兵たちの中で抜きん出た存在となっていた。障害物競走、スパーリング、身体鍛錬、過酷な「死のマラソン」、武器の取り扱い――あらゆる面で、二人は常にランキングのトップを占めていたのだ。この時点で、もし誰かがこの課程を修了し「シャドウ・ストーカー」になれるとすれば、それは「19番」と「20番」の二人だろうと、新兵たちの間では目されていた。
ある晴れた日のこと、トビーとヴァージルは激しいスパーリングを繰り広げていた。プログラム開始から1ヶ月ほど経つと、新兵は各自の「専用武器」を選び、通常の訓練と並行してその武器を完全に使いこなせるよう数ヶ月かけて習得することが求められる。ヴァージルが選んだのは戦斧だった。見るからに重厚で、威圧感を放つ武器である。ヴァージルは痩せぎすな体格をしていたが、その重い斧をいとも簡単に操ってみせた。もっとも、日を追うごとに彼の体つきは逞しくなりつつあったが。一方、トビーが選んだ武器は、極めて異質であり、かつ適切に扱うのが難しいことで悪名高い「大鎌」だった。
二人の激しい攻防はしばらく続いていた。どちらも相手への猛攻を緩める気配は微塵もない。その様子を横目に、他の新兵たちは食事の配給を賭けの対象にして盛り上がっていた。
一見したところ、互角の戦いに見えた。だが実際には、戦況はわずかにヴァージル有利へと傾き始めていた。トビーはまだ大鎌の扱いに苦労しており、それを巧みに隠してはいたものの、コリンの鋭い観察眼はトビーの動きの些細な綻びを見逃さなかったのだ。そして、トビーのバランスがほんの一瞬崩れた隙を突き、ヴァージルは即座に襲いかかった。斧の一振りでトビーの手から大鎌を弾き飛ばし、さらに胸元を蹴り上げると、トビーは地面に倒れ込んだ。
「そこまで!」とコロッサイが声を上げた。「よし、全員15分間の休憩だ。次はナイフ投げを行う」
「くそっ!」ヴァージルに手を貸してもらいながら、トビーは悪態をついた。「いけると思ったんだけどな」
「そんな奇妙な武器を選んだ報いだよ」とヴァージルは言った。「それにしても、なんでまた大鎌なんだ?」
「オーソドックスな武器は好きじゃないんだ」とトビーは言った。「ちょっとした個性や独特の雰囲気がある武器の方が好みでね」
「まあ、好きにすればいいさ」とヴァージルは言った。
アンヌリーゼが水のボトルを2本持って、二人のもとへやってきた。「二人とも、お疲れ様」と彼女はボトルを差し出しながら言った。「なかなかの試合だったわね」
「ありがとう」とトビーとヴァージルは声を揃えて言い、ボトルを受け取って飲み始めた。
「さて、次はナイフ投げだ」とヴァージルが言った。彼はアンヌリーゼの方を向いてニヤリと笑い、「ここは君の腕の見せ所ってわけだね、18番?」と声をかけた。
「楽しみね」とアンヌリーゼも笑い返した。トビーとヴァージルは新兵の中でも特に優秀だったが、ナイフ投げに関してはアンヌリーゼも彼らに引けを取らない実力を持っていた。実際、彼女は短刃の武器を扱うことにかけては達人と言ってよかった。彼女の愛用する武器は、ローマ式の短剣、グラディウスだった。
三人がナイフ投げの訓練場へ向かい始めると、トビーは「ウーン、ナイフ投げか」と不満げに呟いた。
「ナイフ投げの何が不満なの?」とアンヌリーゼは眉をひそめて尋ねた。
「ああ、何が悪いんだ?」とヴァージルも言った。「俺は個人的に好きなんだがな」
「いや、別に悪いわけじゃないんだ」とトビーは言った。「ただ、前にも言った通り、俺はオーソドックスな武器があまり好きじゃないんだ。武器にはちょっとした独自のひねりが欲しいというか……」そう言いながら、彼の視線はポーカーに興じている新兵たちのグループ、とりわけ配られているカードの方へと向けられた。
3人がナイフ投げの練習場に早めに到着すると、彼らは時間をつぶすために何気ない世間話を始めた。「俺はロサンゼルスの街頭で、他のストリートチルドレンたちに混じって育ったんだ」とヴァージルは説明し始めた。「でも、他の連中とはどうしてもうまくいかなくてね。カオス・ジェネレーションズに見つけられた時、すべてに合点がいったよ。彼らは俺にこう言ったんだ。俺は『上級職超力者』という特別な存在で、街で一緒にいた超力者じゃない連中とは違うんだって。奴らのような連中とは違う、もっといい扱いを受けるべき人間なんだとな。つまり、非超力者であるあの『街のクズ』連中と気が合わなかったのも当然だったってわけさ。トビー、お前も同じだったんだろ?」
トビーは眉をひそめて言った。「まあ……そうかな? 俺もLAの路上で育ったしね。お前とは街の違うエリアだったけど。でも正直なところ、俺はただ生き延びることに必死だったんだ。だから、カオス・ジェネレーションズに見つけられた時も、非超力者より優れている『上級職』だとかいう彼らの話には、あまり注意を払っていなかったんだ。俺が注目したのは、仲間に加われば食事と寝床を提供してくれるっていう点だけだったよ」
「まあ、人それぞれってことか」とヴァージルは言った。「お前はどうなんだ、18番?」
「私?」とアンヌリーゼは言った。彼女は少し恥ずかしそうにこう続けた。「ええと……実は私、カオス・ジェネレーションズの『繁殖プログラム』の産物なんです。隠された共同体の一つで育ちました」
トビーはアンヌリーゼをじっと見つめた。「じゃあ、町や都市なんかには一度も行ったことがないってことか?」と彼は尋ねた。
「へえ、理想的な生活じゃないか。非超力者連中と関わらずに済むんだからな」とヴァージルは言った。トビーは必ずしもそうは思わなかったが、その考えを口には出さなかった。
面白かったですか?何度も忠告しますが「過去編」と「現在編」の二種類の話があるので注意してください。




