第三話 現在:誕生日パーティー
はい、「現在編」の話です。注意してください。
現在
「お誕生日おめでとう!」エカルド家の邸宅に集まった人々が声を上げた。3月初旬のその日、家の中はヘレン・エカルドの41歳の誕生日パーティーのために華やかに飾り付けられていた。4つの寝室を備えた広大な邸宅だったが、家の中も庭も、集まったゲストで溢れかえっていた。
ヘレン・エカルドはストロベリー・ブロンドの髪を持つ美しい女性で、今日で41歳になったばかりだというのに、30代、あるいは20代にさえ見えそうな若々しさを保っていた。皆が「ハッピー・バースデー」を歌いながらケーキを運んでくると、彼女は微笑みを浮かべた。歌が終わるとすぐに、ヘレンは軽々とすべてのろうそくの火を吹き消した。「皆さん、来てくれてありがとう」と彼女は言った。「本当にありがとう!」
「おめでとう!ハッピー・バースデー!」そう声をかけたのは、ヘレンによく似た、ブロンドの髪と茶色い瞳を持つ年上の女性だった。「おめでとう!素敵な一日を過ごしているといいわね!」彼女はヘレンの姉、イヴォンヌ・コルトレーンだった。
「ありがとう、姉さん」とヘレンは言った。「来てくれて嬉しいわ」
「いつでも大歓迎よ」イヴォンヌはそう言うと、ヘレンに封筒を手渡した。「それから、これが私からの誕生日プレゼント」
「あら?」ヘレンは封筒を開け、中身を取り出した。彼女は眉をひそめて言った。「『マッサージ100回無料』の手書きクーポン?」
「まあ、101回目からは1回につき5ドルもらうけどね」イヴォンヌは笑いながら言った。「でも、悪くない話でしょ?」
「エドワードが毎日、無制限に私にマッサージしてくれるのは知っているでしょ?」
「そうね、お店で何か買おうとは思っていたのよ」イヴォンヌはまだ笑いながら言った。「でも、家賃を払ったら、ちょっとお金が厳しくなっちゃって」
「お金が厳しかった、ですって?」ヘレンは目を細めて言った。「聖アヴィントン校の校長――つまりあなたの雇い主である私が、教師全員の給与額を熟知していることは言うまでもないわよね。あなたの給料なら、家賃を払っても十分すぎるほどお釣りがくるはずよ。それで、姉さん、一体何にお金を使っているの?」
イヴォンヌの笑みが少しこわばった。「ええと……お酒、かな」彼女は言った。「つまり……この前『ホーギーズ』でみんなの分を奢ったし……先月遅くに同僚と飲みに行った時も払ったし……それに毎日6缶パックをいくつも買ってるし……あと――」
「それなら解決策は単純ね」ヘレンは感じの良い笑みを浮かべて言った。「お酒を控えることよ」
イヴォンヌは笑って言った。「まあ、それもあるけど。いっそあなたの家に転がり込むって手も……あ、待って。リアンナ・ケリスがそっちに引っ越してきたんだったわね。じゃあ、もう空き部屋はないか。うーん、それなら闇金にでも頼るしかないかも……」イヴォンヌは言葉を濁した。「よし、闇金で決まりね……あ、あの、ヘレン、目が……なんか赤くなっているんですけど……」
ヘレンは相変わらず感じの良い笑みを浮かべていたが、いつもの琥珀色の瞳は燃えるような赤色に変わっていた。「あら、そうなの? ストレスを発散する必要があるみたいね。姉さん、私の剣道の稽古に付き合わない?」彼女は夫の方を向き、言った。「エドワード、あなた、悪いけど私の木刀を持ってきてくれる?」
イヴォンヌは顔を青ざめさせ、額に汗を浮かべながら、引きつった笑いを漏らした。「えーと、ヘレン……あなた、剣道の錬士六段よね。私じゃ絶対に勝てないわ」
「あら、本気で相手をするつもりはないわよ」ヘレンは目を赤く腫らしたまま、にっこりと微笑んだ。「でも、お互い超力者なんだから、防具は必要ないでしょう?」
「待って、待って、待ってよ、ヘレン!」イヴォンヌは声を上げた。「確かに私たち二人とも超力者だけど、あなたは上級職で、私は下級職よ。防具は絶対に必要だってば」
「うーん、確かにそうね」ヘレンは言った。「わかった、防具を使っていいわ。でもその代わり、私は手加減なしで本気でいくからね」
イヴォンヌは必死の形相で義理の弟の方を向き、「あの……助けて?」と言った。
エドワード・エカルドは肩をすくめて言った。「悪いけど、それは自分一人でなんとかしてくれ。ヘレンがああなったら、僕にだって止められないってことはよく知ってるだろ」
ヘレンが肩に手を置くと、イヴォンヌはあんぐりと口を開けた。そして、ヘレンに引きずられていく最中、彼女は悲鳴を上げた。
近くのテーブルでは、エドワードとヘレンの双子の息子のうち弟であるアンドリュー・エカルドが、明らかに身をすくませていた。「あの、兄さん、ちょっと助けてよ」
兄のローラン・エカルドは、目を細めて彼を見つめた。「今度は何だ?」と、彼は慎重な口調で尋ねた。
「いや、実は面白い話があってね」とアンドリューは言った。そして突然笑い出し、こう続けた。「実は僕も、母さんに『マッサージ100回無料券』を手書きでプレゼントしようとしてたんだよ!」
「なんでイヴォンヌ叔母さんの悪いところまで似ちゃったんだよ」とローランは呆れたように言った。
「おい、いいことしようと思っただけなんだよ!」とアンドリューは言った。「でも、あんな騒ぎの後じゃ、もう渡せないだろ。兄さん、なんとかしてくれよ」
「それって、本当に問題なのかな?」と、ローランの隣に座っていた少女が言った。彼女は二人の幼馴染であり、同居人でもあるリアンナ・ケリスだった。「実のところ、お母さんはあなたからのマッサージ100回のプレゼントなら喜ぶと思うわよ。少なくとも、叔母さんからの同じプレゼントよりはね」
「まあ……そうかもしれないけど……でも、母さんへのプレゼントがイヴォンヌ叔母さんと同じものっていうのは、やっぱり気に入らないな」とアンドリューは言った。「で、兄さん、母さんへのプレゼントはいくらだったんだ?」
「40ドル。それがどうした?」
アンドリューは彼に20ドル札を渡した。「ほら。これで、二人からのプレゼントってことになるだろ」
ローランは呆れたように目を回してみせたが、それでもその紙幣を受け取った。「わかったよ」と彼は言った。
「あらあら。まだ土壇場になってプレゼント探しで右往左往していますの?」と、隣のテーブルから声がかかった。黒と赤の「ゴシック・ロリータ」風のドレスに身を包み、ボンネットを被った金髪の少女――アンジェリカ・セルヴァンスだった。「相変わらずですはね、アンドリューってば」
「別に、母親に感謝の気持ちを込めてマッサージをしてあげたいと思うことの何が悪いんだよ」アンドリューは少し気まずそうに言った。「それより、お前こそここで何しているんだ?」
「あら、昔なじみの誕生日パーティーに参加しちゃいけないのかしら?」アンジェリカはそう言いながら、ケーキを一口食べた。アンドリューは「ふんっ!」と鼻を鳴らすと、再び自分のケーキに意識を戻した。
リアンナは椅子に深く寄りかかり、うめき声を漏らした。「マッサージといえば、私も誰かにやってほしいな」彼女は言った。「連日のトレーニングの疲れが、かなり体にきてるのよ」
「それなら、僕がやってあげようか」ローランが言った。彼は立ち上がり、リアンナの背後に回った。
「お願いするわ」リアンナが言うと、ローランが彼女の肩を揉み始めた。彼女は心地よさに、うっとりとした声を漏らした。
「そんなにきつい修行なのか?」と、テーブルの向かい側に座る友人のカイル・サンダースが言った。彼の右隣には妹のサーラが、左隣には恋人のメレディス・テランスが座っていた。
「訓練を始めてから2ヶ月ちょっと経つけど、本当に過酷よ」とリアンナは言った。「1年以内にエンデクライオン騎士としての標準的な戦闘力を身につけなきゃいけないのは分かっているけど、時には体が動かなくなるほどよ」。彼女は満足げに息を吐き、ローランのマッサージを受けるように身を預けた。「あなたたち二人は、子供時代を通して少しずつ訓練できたから本当に恵まれてるわね」
「どうかな。俺たちの修行だって、時にはかなり過酷だったよ」とカイルは言った。
「本当にそうね」とサーラも同意した。「パパには、訓練で手加減するという概念が全くなかったから」
リアンナはふうっと息を抜くと、「ローラン、アンドリュー、あなたたちの訓練はどんな感じだったの?」と尋ねた。
ローランは突然マッサージの手を止め、リアンナは彼が激しく震え始めているのを感じ取った。アンドリューもまた、ケーキを食べている途中で完全に動きを止めていた。二人とも、顔色は青ざめ、苦痛に満ちた表情を浮かべていた。
「えーと……俺たちの修行については話さないことにしているんだ」とローランは言った。「いや、マジで、あの悪夢を思い出させるようなことはやめてくれよ!」
「うわっ! 全部思い出してきた!」アンドリューが叫んだ。「あのコース! 疲労! 痛み! 師匠の厳しい表情! 全部蘇ってくる!」
「やめろ! ストップだ、アンドリュー! 修行のことを思い出すな!」ローランが声を上げた。「心の奥底に埋めちまえ! 忘れるんだ! 二度と俺たちを苦しめないよう、過去のものとして葬り去るんだ!」
リアンナはまばたきをして尋ねた。「え? 何? 何があったの、その修行に?」
隣のテーブルにいたアンジェリカが笑い出した。「彼らの修行の何が問題だったかですって?」彼女は言った。「簡単ですわ。ローランとアンドリューは『クラッシュ・コース』を受けましたのよ」
「クラッシュ・コース?」リアンナ、カイル、サーラ、メレディスが声を揃えて言った。一方、ローランとアンドリューは「クラッシュ・コース」という言葉を聞いて飛び上がり、今もなお身を震わせていた。
「エンデクライオンの騎士になるための1年間の訓練課程が過酷だったって、あなた自身も言っていましたわよね?」とアンジェリカは言った。「その『クラッシュ・コース』というのは、その1年がかりの課程をたった1ヶ月に凝縮し、上級職が耐えうる極限の持久力を引き出すためのプログラムなのですわ」
カイルは身震いした。「1年間の課程を、たった1ヶ月に凝縮だって?」
「いや、やめてくれ!」ローランとアンドリューが声を上げた。「思い出させないでくれよ!」
「まあまあ、恥じるようなことじゃないですわよ」とアンジェリカは言った。「私の記憶にある限り、ここしばらくの間でそのクラッシュ・コースを無事に修了したのは、あなたたち二人だけなのですから」
「えっと、二人分の飲み物を持ってくるわね」とリアンナは言い、立ち上がった。
「あ、そういえば」とアンジェリカが言った。彼女はドレスのひだの間から封筒を取り出し、サーラに手渡した。「ミストカリアから、あなた宛ての手紙を持ってきましたのよ」
「あら、ありがとう」サーラはそう言って封筒を受け取った。差出人を見て、彼女は微笑んだ。「あ、アンソニーからだわ」
カイルは眉をひそめた。「本当に彼と手紙のやり取りをしてるのか?」
「ええ、そうよ。何か問題でもあるの?」
カイルは何か言いかけたが、メレディスに足を踏みつけられて言葉を飲み込んだ。「カイル、やめておきなさい」と彼女が言った。カイルは不満げにぶつぶつ言いつつも、素直に口を閉ざした。
一方、リアンナは急いでドリンクバーの方へ向かったが、その拍子に年配の女性とぶつかってしまった。「あ、すみません……お母さん!」
眼鏡をかけ、灰色の瞳をしたチェルシー・ローズウォーターは、薄茶色の髪をゆるくお団子にまとめており、リアンナの方に視線を向けた。「あら、リアンナ。元気そうね」
3ヶ月前、リアンナは自分がミストカリアという超力者王国の、長年行方不明だった王女であることを知った。ミストカリアでの過酷な冒険を終えて帰宅した後、リアンナはエカルド家に移り住んでいて、それ以来、母親とはほとんど顔を合わせていなかった。母親は、自分の養女が実は行方不明だった王女であることをまだ知らないのだ。「えっと、ありがとうございます、お母さん」とリアンナは気まずさを感じながら言った。「お母さんもお元気そうで何よりです」
「ええ、元気よ」とチェルシーは言った。「エカルド家の方々に迷惑をかけていないでしょうね」
「かけていません、お母さん」
「そう。それから、もうすぐ卒業ね。進学先も決めなければならないでしょう。良い結果を期待しているわよ」
「はい、お母さん」
「いい子ね」とチェルシーは言った。彼女はリアンナに軽く頷くと、他の客たちと交流するためにその場を離れた。リアンナはただ立ち尽くし、つい先ほどまで母親が立っていた場所を見つめていた。
姉に厳しい特訓を終えて戻ってきたばかりのヘレンは、その気まずいやり取りを目撃していた。彼女はリアンナに歩み寄り、その肩に腕を回した。「ごめんなさいね」と彼女は言った。「まさか本当に顔を出すとは思わなかったわ」
「ううん、大丈夫よ」とリアンナは言い、ヘレンの肩に頭を預けた。リアンナがミストカリアに滞在している間、ヘレンはチェルシーに連絡を取り、リアンナを自分が引き取ると申し出ていた。それはあくまで建前上の提案に過ぎなかったが。リアンナはすでに18歳で、どこに住むかを自由に決められる年齢だったし、ヘレンとしても、チェルシーの無責任な態度を改めさせ、目を覚まさせるつもりで言ったことだったからだ。ところが驚いたことに、チェルシーはその申し出をあっさりと承諾した。自分はほとんど家にいないのだから、リアンナにとってはそれが一番いいだろう、というのが理由だった。ミストカリアから戻り、母親がそんなことをしたと知ったリアンナの胸は、言葉では言い表せないほど深く傷ついた。
ヘレンが何かを言おうとしたその時、ある異変を目にした。自宅の入り口にリムジンが横付けされたのだ。またしても予期せぬ客が現れたことについて何か言おうとしたまさにその瞬間、リムジンのスピーカーから女性の大きな声が響き渡った。
「やあ、庶民の皆さん! アリスタ・アルカディアの登場よ!」
面白かったですか?何度も忠告しますが「過去編」と「現在編」の二種類の話があるので注意してください。




