第二話 現在:カオス・ジェネレーションズの次の狙い
はい、「現在編」の話です。注意してください。
現在
エッグゼービエル・ソランは、薄暗い宮殿の廊下を歩きながら、何やら不機嫌そうな様子だった。その宮殿の建築様式は中世初期、あるいは「暗黒時代」を彷彿とさせるものだった。とはいえ、高いアーチ状の天井や数多くのギリシャ・ローマ様式の柱が並ぶその姿は、見事な建築物と言えるものだった。明かりは、およそ3メートル間隔で並べられた蝋燭の列だけである。
宮殿を進むソランの表情には、実はわずかな緊張が浮かんでいた。それもそのはず、ここはただの宮殿ではない。「カオス・ジェネレーションズ」の中枢、「カオス・パレス」なのだ。ミストカリア王国の北、ヴァラム山脈の奥深くに位置するこの場所は、上級職超力者でさえ到達が困難な秘境である。ソランがここにいるのは、ひとえに「闇の預言者」本人に呼び出されたからに他ならなかった。
巨大な扉を押し開け、ソランは玉座の間へと足を踏み入れた。そこは広々とした空間だったが、内装はほとんど何もないに等しかった。唯一の「装飾」と呼べるものといえば、部屋の奥に据えられた巨大な石の玉座だけだ。それは、普通の人間が座るにはあまりにも大きすぎる玉座だった。
「やれやれ、今日の『ささやかな集まり』に顔を出したのは誰かと思えば」左手から声がした。ソランがそちらを向くと、扉の脇にしゃがみ込んでいる一人の若者の姿があった。痩せぎすの体格に、あちこちへ跳ねるような黒髪。黒いタンクトップに黒のレザージャケット、灰色の迷彩パンツと黒のコンバットブーツを身にまとい、パンツからは鎖がぶら下がっている。何より目を引くのは、額に巻かれ、右目を完全に覆い隠している包帯だった。そして、露出した左目に宿る常軌を逸した光と、その口元に浮かぶ狂気じみた笑み。「で、ようやく俺たちの仲間に加われるくらいには回復したってわけか?」
「ヴァージル・コリン」ソランは呆れたように目を回し、こう言った。「新米の二人組に負けたことを、お前も笑うつもりか?」
コリンの笑みがさらに深まった。「まあ、昔なら笑ってたかもしれないけどな。だが、カイル・サンダースはモルガナ・ブラックハートを打ち負かしたんだぜ。だから、お前が彼やその妹に敗れたとしても、それほど恥じることではないかもしれないな」
「あのブラックハートでさえ敗れるとは」ソランは鼻で笑った。「で、今回の任務ではお前と私が組まされるってわけか?」
「どちらかと言えば、俺が提案したんだがな」
「お前が提案しただと?」と、ソランは明らかに驚いた様子で言った。
「その通りです」と、広間に響き渡る声がした。それは幻想的で、残響を伴う声だった。玉座の背後から一人の人物が姿を現した。異国風の黒と赤の衣装を纏った女性で、その姿はさながら異国の女司祭を思わせた。衣装に加え、彼女は冠から首飾り、腕輪に至るまであらゆる種類の金の装飾品を身にまとい、宝石を散りばめた長い金の杖を手にしていた。長く伸ばされた爪には鮮やかな色が塗られ、唇はルビーのように赤く、目元にはアイシャドウが施されていた。雪のように白い長い髪と、同じく極めて色白な肌を持ち、その瞳は左右で色が異なるオッドアイ――左目は赤みがかった琥珀色、右目は灰色――をしていた。若き女性の姿をしてはいたが、同時に年齢を感じさせない神秘的な雰囲気を漂わせていた。
彼女の姿を目にするや否や、ソランは即座に跪いた。「預言者アルカンタラ様」と彼は言った。
アルカンタラは冷ややかな視線をソランに向け、やがて「立ちなさい」と告げた。ソランが立ち上がると、彼女は言葉を続けた。「ここにいるヴァージルが、ある提案をしたいと言ってきてね。もし成功すれば、アリスタの抜けた『私の弟子』の座に就きたいというのよ。そして彼は、パートナーとしてあなたを指名したわ、エッグゼービエル」
「なるほど、それで私を指名したわけですね」とソランは言った。「私はアルカディアの旧職には興味がありませんから、彼にとってのライバルにはなり得ませんからね」
「その通りです」とコリンが前に出て言った。彼は跪くと、こう続けた。「御方様、これが私の提案です。伝説の『三振りの剣』が隠された場所を突き止めたと確信しております。もし私がそれを『カオス・ジェネレーションズ』にもたらすことができたなら、あなたの弟子の座を授けていただきたいのです」
アルカンタラは満足げな様子ではなかった。それどころか、少し怒っているようにさえ見えた。「三振りの剣? それが一体何の関係があるというの?」
「御方様――」
「そこまでよ、ヴァージル! 思い出しなさい。『カオス・ジェネレーションズ』の最終目的は、我らが主、大魔王アポカロン・カオス様の復活にあるということを!」
アルカンタラが「アポカロン・カオス」の名を口にすると、まるで宮殿全体が揺れ動いたかのような気配が漂った。ソランとコリンは何も言わなかった。
アルカンタラは続けた。「モルガナは、大魔王様の復活に不可欠なミストカリア王家の血筋を確保しようとしていたわ。彼女はアリスタの座に最も近い存在だっただけに、失われたのは残念でならないけれど……。でも、あなたの提案は全く的外れよ。『三振りの剣』とアポカロン・カオス様の復活には、直接的な関わりがないのだから」
「申し上げてもよろしいでしょうか、御方様」とコリンは言った。「『三振りの剣』が大魔王様の復活とは無関係であることは、私も重々承知しております。私が考えているのは、むしろ我らが大魔王様の避けられぬ帰還の後のことなのです」
「それはどういう意味ですか?」
「『三振りの剣』は、いわばエンデクライオン騎士団の『備え』なのです。かつて大魔王様を傷つけた唯一の武器であるそれらは、もし大魔王様が戻ってきたとしても戦えるかもしれないという希望を、騎士団に与えるものでもありますから」コリンはにやりと笑い、言葉を続けた。「あの剣がなければ、騎士団は大魔王アポカロン・カオス様の怒りの前で完全に無力となり、何よりも『希望』を失うことになるでしょう」
アルカンタラは目を閉じ、コリンの言葉を思案している様子だった。やがて彼女は言った。「言いたいことは分かったわ」彼女は目を開き、杖をコリンに向けた。「よろしい、その任務を遂行しなさい。ただし、この任務におけるお前の働きぶりは、普段よりもはるかに厳しく評価することになると心得ておくように」
「感謝いたします、御方様」コリンはそう言って立ち上がった。
ソランも立ち上がろうとしたが、頭に鋭い痛みを感じ、一瞬バランスを崩した。それに気づいたアルカンタラが尋ねた。「どうしたの、エッグゼービエル?」
「いや……何でもない……ただ……」ソランは言葉を継ぐのをためらった。「怪我が治ってからというもの、頻繁に頭痛に悩まされているのです。まるで、何か『重要な』ことを忘れていると、思い出させようとするかのように……」
コリンは鼻で笑った。「お前が『重要な』ことを忘れるだって?」彼は吹き出すように笑うと、こう続けた。「お前が『重要な』ことなんてものを、わざわざ覚えようとしたことなんてあったか? お前の関心事といえば、命令に従うことと、ローラン・エカルドを殺す機会をうかがうことくらいだろ。ジェイムソン・カーンみたいな小物に構ったのだって、エカルドと再び対峙する好機になると思ったからに過ぎないじゃないか。まったく、今回はよほどひどい目に遭わされたんだな」
「ああ、確かに『重要な』ことを覚えるなんて、私らしくないな」ソランはそう言うと、首を振った。「まあいい。たぶん、些細なことだったんだろう」
***
任務に出発する前、ソランはミストカリアの首都アルクス・レガリウスにある、治安の悪い地区の一つを訪れた。そこで彼は、ひときわ薄暗く、不吉な雰囲気を漂わせる建物に足を踏み入れた。中に入るとそこは病院だった。建物の外観は汚く不潔そうだったが、内部は驚くほど清潔で、最新鋭の設備が整っていた。
ソランは病室の一つに入り、そこにいる人物を見て言った。「やれやれ、ひどい有様だな」
ベッドに座っていたのはエイドリアン・ジラスで、その体は半分ほどが分厚い包帯で覆われていた。彼は食事の手を止めて顔を上げ、不敵な笑みを浮かべて言った。「君にも会えて嬉しいよ、古き友よ」
ソランはベッドの脇へと歩み寄った。「今回はエカルドによほどひどい目に遭わされたんだな」彼はそう言いながら、以前コリンが自分にかけた言葉を口にした。
ジラスは肩をすくめた。「医者の話じゃ、まともに動けるようになるまであと数ヶ月はかかるそうだ。渓谷の底へ列車ごと転落したことを考えれば、これでも悪くない方さ。もっとも、ミストカリア王国に公的な資産や財産をすべて没収されてしまったから、退院後もしばらくは大人しくしていなきゃならないがね。幸いなことに、いわゆる『裏の』財産には一切手がつけられていないのさ」彼はフォークで肉を刺し、口に運んだ。「悪くない。もっと最悪な事態だってあり得たんだからな。ただ、見舞い客がもっと……女性連中だったら、気分も晴れるんだがね」
ソランは鼻で笑った。「何だ、王女のことか?」
ジラスはニヤリと笑った。「ああ、誤解しないでくれよ。王女を手に入れられれば最高だろうし、彼女を最初に抱く機会を逃してしまったのは残念だ。だが、彼女に対する私の真の関心事は二つある。一つは、彼女が王位継承者を生めるということ。そしてもう一つは、彼女を利用してローラン・エカルドを苦しめられるということだ」
ソランは再び鼻で笑い、呆れたように目を回した。「わざわざそんな回りくどいことをする必要があるのか? エカルドを苦しめたいなら、剣で突き刺せばいいだろう」
ジラスは一瞬ソランを凝視してから、突然笑い出した。「面白いな」と彼は言った。「ローラン・エカルドを心底憎んでいるという点では、私たちは同じだ。だが、その感情の表し方には違いがある。お前は彼を殺したいと思い、私は彼が苦しむ姿を見たいと思っている」ジラスはさらに肉を口に運んだ。「いずれにせよ、どちらが先にエカルドにたどり着けるか、競争というわけだ」
「そして、私が一歩リードさせてもらう」ソランはそう言って立ち去ろうとしたが、再び頭を襲った鋭い痛みに足を止めた。一息ついてから、彼は言った。「行く前に教えてくれ。今回の事件の際、エンデクライオン騎士団の女性メンバーでその場にいたのは誰だ?」
ジラスはその質問に驚いた様子を見せた後、にやりと笑った。「おや、エッグゼービエル。君がそんなことに興味があるとは知らなかったよ」
「いいから質問に答えろ、エイドリアン!」
ジラスは肩をすくめると、食事を続けた。「そうだな、エリザベス・マッカーサーがいた。彼女はクリスマス舞踏会に姿を現したよ。ちなみに美しい女性でね、機会があれば手に入れたいものだ。それからサーラ・サンダース。お前も彼女のことはよく知っているはずだ。メイドに変装して宮殿に潜入した女だ。ああ、それと結婚式の最中にはアンジェリカ・セルヴァンスも来ていたと思う」
「他に誰か?」
「いや……私が知る限りでは……」ジラスは考え込むような素振りを見せた。「もっとも、彼女が実際にエンデクライオンと関わりがあるのかは分からないが……クリスマス舞踏会までの数日間に、王女がサーラ・サンダースとは別に、もう一人メイドを雇っていたんだ。赤毛の可愛らしいメイドをね」
「赤毛のメイド?」とソランは尋ねた。何かが記憶の端をくすぐるような感覚があったが、どうしても思い出せなかった。「彼女に何か変わったところはあったか?」
「彼女の瞳が緑色だったかどうか、と聞いているのか?」とジラスは尋ねた。「確かに可愛らしいメイドだったかもしれないが、瞳の色がわかるほど近くで見たわけじゃない。だが、赤毛で緑の瞳となれば、間違いなく印象に残る特徴だから、もしそうなら覚えていただろうな。それに、彼女がエンデクライオンと何らかの関わりがあったのかどうかも分からないしな」
「ああ、確かにそうだな」とソランは言った。「訪ねて悪かった。もうこれ以上気にするな」
面白かったですか?何度も忠告しますが「過去編」と「現在編」の二種類の話があるので注意してください。




