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【第四章連載開始!】エンデクライオンの騎士団   作者: E. C. ライリー
第二章 ミストカリアの王女

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第二十九話 列車上の大決戦

引き続き、第二章です。お楽しみください。

 ローランは塔から真っ逆さまに落下するのではなく、ジラスを引きずりながらアルクス・レガリウスの街の上空を猛スピードで突き進んでいた。二人は互いに激しい打撃を応酬しながら、かなりの距離を飛行し続けた。やがて降下を始め、ついに彼らはアルクス・レガリウスの高架鉄道を疾走する急行列車の屋根へと激突した。


 二人の戦士は立ち上がったが、自分たちが猛スピードで走る列車の屋根の上にいることなど、まるで意に介していない様子だった。ジラスは剣を突き出しながらローランへと突進した。ローランは炎を纏った拳でその刃を軽く弾き飛ばすと、身を翻し、そのまま炎の拳をジラスの顔面に叩き込んだ。ジラスはその一撃をものともせず、怒涛の剣撃でローランドに襲いかかる。ローランはすべての斬撃をかわし、懐に飛び込んでジラスの胸板に強烈な前蹴りを叩き込んだ。


 ローランはグラップル・ショットを放ち、ジラスの肩を捉えた。彼はジラスを引き寄せて攻撃するつもりだったが、逆にジラスにワイヤーを掴まれ、自分の方が引き寄せられてしまうという不意を突かれた。ジラスが突きを繰り出す中、ローランは辛うじて身に炎を纏って防御を固める。彼は掌底をジラスの顔面に叩き込み、相手を退けると、後方へ三連続のバク転をして距離を取った。ジラスは剣を荒々しく振り回しながら間合いを詰めてくる。ローランは炎を纏った拳でその斬撃をすべて受け流し、続けてジラスに向けて立て続けに火の玉を放った。ジラスはそれらすべてを回避し、再びローランに向かって激しく剣を振るった。


 その頃、列車の乗客たちは屋根から響く物音に恐怖を覚え始めていた。戦いによって放出された過剰なエネルギーが、車内の電子機器に火花を散らせ始めていたことも、その不安に拍車をかけていた。


 ローランが、自分が猛スピードで走る列車の屋根の上でジラスと戦っているという事実を改めて認識したのは、ちょうどその時だった。もし列車が終着駅で停車できなければ、やがて線路の行き止まりに激突し、その先にあるヴァラム山脈へと続く渓谷へ転落してしまう――彼は瞬時にそう悟った。


(乗客をどうにかしなければ。)


 ローランは列車の先頭方向へ向かって三度バック転を決めると、自分とジラスの間の屋根に向けてグラップル・ショットを放った。そして、その発射時の反動と列車の前進する勢いを利用してジラスめがけて一直線に飛び込み、強烈なドロップキックをその腹部に叩き込んだ。


 ジラスは苦悶の声を上げ、大きく吹き飛ばされた。一方のローランは列車の屋根に着地すると、そのまま後ろに転がりながら素早く立ち上がった。だが、彼はジラスに追撃を仕掛けるのではなく、列車の先頭車両に向けて全速力で駆け出した。


 列車の先頭にたどり着くと、ローランは車体の側面を伝って身を躍らせ、車掌室の側面の窓を拳で激しく叩いた。驚いて顔を上げた車掌に対し、ローランは一切の異論を許さない口調で「今すぐ先頭の3両から乗客を避難させろ!」と叫んだ。そして、ジラスが追いついてきたのとほぼ同時に、再び屋根の上へと身を躍らせて戻った。


 ローランとジラスが互いに激しい打撃を応酬し合う中、車掌は先頭3両の避難を促す警報を鳴らした。周囲の人々の体温を感じ取ることができたローランは、乗客たちが後方の車両へと移動していく気配を察知した。彼はジラスを退け続けながら、ゆっくりと後方へと移動し始めた。


 やがてローランは、3両目の最後尾付近へと位置取りを完了した。車掌を含むすべての乗客が前方の3両から避難し終えたことを察知するや否や、ローランはジラスの腹部に強烈な双掌打を叩き込み、相手をわずかに後退させた。その一瞬の隙を突いて、ローランは3両目と4両目の連結部分に向けて、凄まじい火炎の奔流を叩き込んだ。その結果、乗客を乗せた後方の車両群から前方の3両が切り離され、ローランとジラスは3両目の屋根に取り残される形となった。後続車両が非常ブレーキを作動させる一方で、切り離された前方の3両は慣性によって猛スピードで突き進み、やがて終着駅を猛然と通過していった。


 その時点では、ジラスはローラン・エカルドという男の異質さに気づき始めていた。「なぜ、まだエネルギーが尽きないんだ?」と彼は呟く。エレメンティアンが能力を行使すれば、フィジカルのそれとは比較にならないほどの速さでエネルギーを消耗するはずだ。ジラスの剣が放つ電磁パルスを無効化するためにローランが繰り出してきた炎の量を考えれば、とっくの昔にサイリック・シールドも発火能力(パイロキネシス)も枯渇していてもおかしくない。それなのに、彼は何の問題もなくその両方を駆使して戦い続けている。「一体どれほどのエネルギーを蓄えているというんだ?」とジラスは呟く。「それにエカルドは、自分がどれほど常軌を逸した存在か分かっていないのか?」ジラスは今や、ローランに対して少なからぬ恐怖さえ覚え始めていた。


 追い詰められたジラスは、猛烈な剣撃でローランに襲いかかった。ローランは炎を纏った拳で、そのすべてを弾き返していく。その間にも列車はアルクス・レガリウスの郊外を抜け、ヴァルム山脈の入り口へと差し掛かろうとしていた。線路の終わりが、刻一刻と迫っていた。


 ついにローランの強烈な一撃が、ジラスの腹部に突き刺さった。一瞬、息を呑んで動きの止まったジラスを前に、ローランはバックフリップで距離を取り、身を低く構える。そして、両脚に炎を溜め始めた。燃えるような赤い瞳でジラスを睨みつけ、彼はただ一言、こう言い放った。


「リアンナに近づくな」


 その言葉と共に、ローランはロケットのような勢いで前へと飛び出した。体を大きく反らせながら右拳から凄まじい炎を放ち、最後の一撃として、その炎の拳をジラスの顔面に叩き込んだ。


 その衝撃でジラスは吹き飛ばされ、列車の先頭車両付近まで転がっていった。その過程で剣は手から離れ、谷底へと落ちていった。衝撃から立ち直ろうとしたジラスは、即座に自らの置かれた状況を悟った。線路の終わりは目前に迫っており、剣も失っている。たとえ剣が手元にあったとしても、ローランは列車の反対側という遠い位置にいる。列車が谷底へ墜落する前に、ローランの元へたどり着くことなど不可能だった。


 彼はこの戦いに敗れたのだ。


 屈辱にまみれ、怒りで顔を歪めたジラスはローランを睨みつけた。「これで終わりだと思うなよ、エカルド!」彼はローランを指さして叫んだ。「俺のような上級職(ハイレベル)が、こんな高さから落ちた程度で死ぬわけがないことは分かっているはずだ!必ず戻ってきて、お前からすべてを奪ってやる。あの姫君を筆頭にな!」


 その瞬間、ローランはジラスが手出しできないほど遠くにいてよかったと胸をなでおろした。もし間合いの内にいたら、自身の「殺さない」という信条を破ることも真剣に検討していただろう。彼は赤い瞳でジラスを睨み返しながら、右手を斜め上にかざした。そしてグラップル・ショットを放ち、列車から安全に離脱した。ローランが去ると、ジラスは渓谷の方を向いてあぐらをかき、目を閉じた。ちょうどその時、列車は線路の終端を越え、渓谷の底へと轟音を立てて墜落していった。

 

***


 アルクス・レガリウス宮殿にはようやく治安部隊が到着し、宮殿内に潜入していたカオジェン教団の信徒たちを次々と拘束していた。エリザベスは所属を問わず負傷者の手当てに奔走していたが、他の騎士たちは群衆に紛れ目立たないように立ち回っていた。


 そんな中、リアンナは正門近くに設けられた応急救護所の焚き火のそばで、毛布にくるまって座っていた。彼女の正体を知る者はまだほとんどおらず、周囲からは、宮殿で繰り広げられた激しい戦闘に巻き込まれたただの客人と見なされていた。今の彼女は、何かを静かに待ちながらただぼんやりと正門の方を見つめていた。


 やがて、ひどく疲弊した様子のローランが正門に姿を現した。彼を見つけると、リアンナは毛布を放り出して立ち上がった。ボロボロになったウェディングドレスの残骸のような姿であることなど、気にも留めなかった。ローランが歩み寄ってくると、彼女は尋ねた。「終わったの?」


 ローランは力なく微笑み、「ああ、終わったよ」と答えた。


 安堵の念が押し寄せ、リアンナは疲れの混じった溜息をついた。微笑みを浮かべたまま、彼女の頬を二筋の涙が伝い落ちる。言葉もなくローランに歩み寄り、彼を抱きしめると、彼もまた彼女を抱きしめ返した。あたり一面に雪が残っていることなどどうでもよかった。その瞬間、ローランの腕の中にいるリアンナは、かつてないほどの温もりを感じていた。

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