第二十七話 騎士団vs.評議会
引き続き、第二章です。お楽しみください。
ローランとカイルは塔をかなり上り詰め、頂上へと続く最後の広間へと足を踏み入れた。そこで彼らは、最後の障害であるモルガナ・ブラックハートと対峙することになる。「まあまあ、新婚ほやほやの二人を邪魔しようってわけ?」
「ああ、邪魔させてもらうさ。それに、あの二人はまだ結婚しちゃいない」ローランは吐き捨てるように言った。「どけ、ブラックハート。お前を相手にしている暇はないんだ!」
「私が素直にどくとでも?」
ローランは拳から煙を立ち上らせながら、ブラックハートへと歩み寄った。だが、カイルが彼を制止し、自ら前に出た。「彼女は俺が引き受ける」とカイルは言った。「お前はリアンナを助けに行け」
ローランは、カイルをブラックハートの相手として残すことにためらいを見せた。それでも彼は言った。「わかった。だが、死ぬんじゃねえぞ」
ローランは階段に向かって駆け出した。足から炎を噴射して加速さえしてみせた。それと同時に、カイルが高圧の空気の塊を放ち、ブラックハートの体勢を崩すことに成功した。その隙を突いて、ローランは階段を駆け上がっていった。
ローランを取り逃がしたことに苛立ちを覚えつつ、ブラックハートはカイルへと視線を向けた。彼女は頭上で杖をくるりと回すと、両手でそれを振り下ろし、切っ先をカイルに向けた。カイルは、その杖に片刃の刀身が取り付けられ、実質的にグレイヴ(長柄の刃物)と化していることに気づいた。さらに、刃と柄の接合部には電磁パルス発生装置も備わっていた。
ブラックハートはカイルの顔をじっと見つめ、こう言った。「サーラ・サンダースに少し似ているわね。ということは、あなたがカイル・サンダースね」
カイルは爪を構えた。「それがどうした?」
「エッグゼービエル・ソランを倒した騎士の一人が一体どれほどのものかと思ってね」と彼女は言った。
ブラックハートは突如、閃光と煙と共に姿を消した。カイルは不意を突かれ、完全に驚かされた。だが、空気のわずかな揺らぎが、彼女の居場所を即座に彼に告げた。彼女は背後にいたのだ!背後からグレイヴで貫こうとしてきたブラックハートに対し、カイルは辛うじて身を翻し、その一撃を自身の爪で受け流した。
ブラックハートは眉をひそめ、「悪くないわね」と言った。
カイルは心の中でメモを取った。モルガナ・ブラックハートは短距離のテレポートが可能なエレメンティアンなのだ。少なくとも、彼女が長距離をテレポートできるという情報は皆無だったため、カイルはそう推測していた。
ブラックハートは目を細めると、グレイヴを巧みに操りながらカイルに向かって突進してきた。カイルは反撃の隙をうかがいつつ、爪を使って繰り出される幾多のグレイヴの攻撃を辛うじて弾き返すのが精一杯だった。
ブラックハートは再びテレポートしたが、カイルはその攻撃を容易に見抜き、背後から放たれた一撃を難なく弾き返した。これにはブラックハートも明らかに苛立ちを露わにした。だがカイルは不敵な笑みを浮かべ、再びその爪を構えた。
***
宮殿のエントランスホールに戻ると、氷に金属が打ち合う音が響き渡っていた。リッテンハウス侯爵の剣の腕は比類なきものだったが、フォン・クロフト公爵の自尊心を満たすために実力を隠さねばならないことに、長年苛立ちを覚えていた。公爵が亡き今、リッテンハウスはついにその剣技を存分に披露できる機会を堪能していた。
そして、これ以上の相手は望めなかった。アンドリュー・エカルドは、エンデクライオン騎士団の中でも屈指の、いや、最強と言っても過言ではない剣士の一人だったからだ。アンドリューは日本の剣道を主軸としていたが、その剣技はリッテンハウスの繰り出す西洋式の剣撃に何ら引けを取ることなく渡り合っていた。
「愉快だ!実に愉快だ!」アンドリューが次々と繰り出される猛攻をいなす中、リッテンハウスは声を上げた。「これこそ、実に愉快な決闘だ!」
アンドリューは目を細めた。「愉快だって? この状況のどこが愉快なんだ?」彼はリッテンハウスの攻撃の一つに反撃を試みたが、侯爵はそれを軽々と回避した。
「この時を味わえないのか、アンドリュー・エカルド?」リッテンハウスは言いながらレイピアを突き出したが、アンドリューは難なくそれを弾いた。「剣技のぶつかり合い。剣の道の極致。達人同士が全力を尽くして戦うとは、こういうことなのだ。妄想に囚われたうぬぼれ屋の自尊心を満たすために真の実力を隠すことなどとは違う!」
「おい、勘違いするなよ。僕だって剣での勝負は好きだ」とアンドリューは言い、こう付け加えた。「特に、可愛い女の子が『頑張って、アンドリュー!』って応援してくれていれば最高なんだけどな」。彼は剣道の「面」を打つように振り下ろしたが、リッテンハウスに受け流された。「あいにく、今は心ゆくまで楽しんでいる余裕はないんでね。だから、ここで決着をつけるとするよ」
アンドリューはリッテンハウスとの間に距離を取り、「霞」の構えをとった。リッテンハウスはにやりと笑い、「よかろう。この決闘、最高の形で締めくくるとしよう!」と言って、レイピアを構えた。
アンドリューは目を細めると、跳躍しながらの突きを繰り出し、一気に間合いを詰めた。リッテンハウスは不敵な笑みを浮かべ迎撃しようとしたその瞬間――
リッテンハウスを取り囲むようにして、床から巨大な氷柱が次々と突き出た。不意を突かれたリッテンハウスの体に氷柱が激突し、その四肢を拘束して動きを封じた。
アンドリューがリッテンハウスの目の前に着地すると、リッテンハウスは信じられないといった様子で彼を見つめた。「貴様……『エレメンティアン』の力で決着をつけたのか? 正々堂々たる剣の決闘の最中に、『エレメンティアン』の力を使ったというのか?」
アンドリューは呆れ果てたような表情を浮かべ、「冗談だろ?」と声を荒らげた。「お前のあの気味の悪いボスは、僕たちの幼馴染――特に兄さんから彼女を奪おうと躍起になって、僕たち全員を殺すよう命じたんだぞ。そんな状況下で『正々堂々たる決闘』なんてものが成立するとでも思ってるのか?」彼は首を横に振ると、続けた。「本当に正々堂々とした決闘がしたいならいつでも中立な状況で挑んでこい。受けて立ってやる。だが、ここ、この場においては……もうやめろ!」そう言うと、アンドリューはリッテンハウスの顔面に拳を叩き込み、彼を気絶させた。
そう遠くない場所で、アンジェリカはハンプトン子爵の繰り出す剣撃を扇子一本で軽々と受け流していた。「その程度があなたの実力ですの?」アンジェリカは退屈そうに言った。
ハンプトンの苛立ちは、目に見えて募っていった。「ありえない……!」彼は声を荒らげた。「お前のような小娘が、たかが扇子で俺の攻撃をすべて防ぐなんて!」
「『小娘』、ですって?」アンジェリカはそう言うと、不意に左手でハンプトンの剣身を掴んだ。ハンプトンは唸り声を上げながら剣を引き抜こうとしたが、アンジェリカの握力に阻まれ、びくともしなかった。どれほど力を込めて引いても、彼女は決して剣を離そうとはしなかった。ハンプトンは恐怖を覚え始めた。彼女の体格から、たとえ上級職超力者であったとしても、本来持ち得ないほどの怪力を彼女が秘めていることに気づき始めたからだ。
「な……どうやって……お前、一体何者だ?!」
「あら、怖くなってきましたの?」アンジェリカは言った。「でも、それはほんの序の口ですのよ。本当の恐怖なんて、まだ何も知らないくせに」アンジェリカの瞳が突然輝き、彼女が口を開くとそこには異常なほど長い犬歯が覗いていた。彼女が噛みつこうと彼の首元へ飛びかかると、ハンプトンは恐怖のあまり悲鳴を上げた。
その直後、リッテンハウスを倒したアンドリューが戻ると、ハンプトンが床に倒れ伏し、意識を失っているのを見つけた。彼は眉をひそめてアンジェリカに目を向け、「まさか、お前……」と言いかけた。
「やっていませんわ」アンジェリカは答えた。「そうしたと思わせただけですの。私、自分のそういう所が大嫌いだって知っているのでしょ」
アンドリューがハンプトンの首元を確認すると確かに傷一つなかった。彼はただ、恐怖のあまり気絶しただけだったのだ。「まあ、こいつは後でひどいトラウマに悩まされることになるだろうな」
入り口に最も近い階段の麓で、トビーは依然としてウェルズワース伯爵と激しい攻防を繰り広げていた。当初、トビーは大鎌を振るって伯爵を攻撃していたが、相手の巧みな身のこなしによってそのほとんどをかわされてしまい、有効打を与えるのに苦労していた。対照的に、素手であるはずの伯爵の拳はトビーの体に重く食い込み、着実にダメージを与え始めていた。やがてトビーは、伯爵の動きに見覚えがあることに気づいた。それはボクシングの動きだった。
「へえ、ボクサーってわけか」トビーは舌打ちをすると、こう言った。「いいだろう。これじゃ埒が明かないみたいだし、少しやり方を変えるとするか」。彼は自分の背後に大鎌の刃を床に突き刺すと、オーソドックスなボクシングの構えをとった。「幸いなことに俺もボクシングは少々心得があるんでね」
ウェルズワースはこの好機を存分に楽しむかのようにニヤリと笑い、トビーの腹部に強烈なボディブローを叩き込んだ。打撃を受けたにもかかわらず、トビーもまた笑みを浮かべウェルズワースの顔面に右フックを叩き返す。衝撃で頭を大きく揺さぶられながらも、ウェルズワースは再び不敵な笑みを浮かべ、今度はトビーの顔面に右の拳を叩き込んだ。こうして二人は、上体を巧みに揺らして相手の攻撃をかわしつつ、互いに激しいパンチを打ち合い始めた。
トビーはボクシングの攻防で善戦していたものの、ウェルズワースとの間には圧倒的な体重差があった。たとえ上級職であっても、トビーにとってそれは極めて不利な条件だった。それでもトビーは、ウェルズワースが戦いに熱中するあまり、自身の些細な動きに気づいていないことに気づき始めていた。そこでトビーは、ウェルズワースを誘い込んで不用意なパンチを打たせつつ、体を「8の字」を描くように動かす「フィギュア・エイト・ロール」――かつてプロボクサーのジャック・デンプシーが編み出した技術――を駆使し始めた。
ついに十分な勢いを得たトビーは、拳に渾身の力を込め、容赦なく相手を打ち据えた。ハリケーンのような猛攻を受け、ウェルズワースの体はまるで布人形のように前後へと激しく揺さぶられる。だが、とどめの一撃を放つ際、トビーは拳を当てる代わりに反時計回りに身を翻し、背後にあった大鎌を右手で掴むと、その遠心力を利用して鎌の峰(背)をウェルズワースの顔面に叩きつけた。ウェルズワースは数歩よろめいた後、そのまま後ろ向きに倒れ込んだ。
トビーは腰をさすりながら、痛みにうめき声を上げた。「うっ、この技はもう二度とやらないかもな」と呟き、ウェルズワースに背を向ける。「こんな技をやってのけるプロボクサーってのは本当に大したもんだよ――」
その時、一本の矢がトビーの顔の横をかすめ、ウェルズワースの額に突き刺さった。彼はいつの間にか立ち上がり、背後から不意を突こうとしていたのだ。「シールド・エクステンド」の矢をまともに受けたウェルズワースは今度こそ完全に意識を失い、後ろへと倒れ伏した。
「あら、ごめんなさい? 余計なことだったかしら?」とサーラが言った。彼女はルム男爵を伴い、ちょうど宮殿の広間に入ってきたところだった。
トビーは左の拳を振り上げていた。明らかに背後のウェルズワースへ一撃を食らわせるつもりだったのだ。つまり、伯爵が再び立ち上がったことに、彼は完全に気づいていたということだ。「いや、いいんだ」とトビーは言った。「俺の採点じゃ、お前はよくやったよ」
サーラは眉をひそめ、「Sモードに入ってるの?」と尋ねた。
トビーは少し気まずそうに、「ああ、悪いな。不快にさせたか?」と言った。
サーラは首を横に振り、「ううん、大丈夫。慣れなきゃいけないあなたの一面ってだけだから」と答えた。そして、意識を失って倒れているウェルズワースに目をやり、「ところで、戦っている間この人が何か言っているのを聞いた?」と尋ねた。
ルムはウェルズワースを見下ろしながら言った。「そう言われてみれば、評議会にいる間、ウェルズワース伯爵が言葉を発するのを一度も聞いたことがない気がするな」
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