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【第四章連載開始!】エンデクライオンの騎士団   作者: E. C. ライリー
第二章 ミストカリアの王女

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第十八話 クリスマス舞踏会

引き続き、第二章です。お楽しみください。

 クリスマス舞踏会の夜が訪れ、アルクス・レガリウスの街全体がミストカリアの祝祭シーズンの幕開けを祝っていた。舞踏会の会場となるアルクス・レガリウス宮殿は、街を見下ろす丘の上でまるで輝く灯台のようにまばゆい光を放っていた。宮殿の正門前にはリムジンや高級車が列をなし、次々と招待客を降ろしていく。招待客は皆ミストカリアの貴族たちであり、当然ながら、彼らの間で流行している後期ヴィクトリア朝様式の舞踏会用正装に身を包んでいた。


 エヴァンテイル侯爵は、濃紺の優雅な燕尾服にベスト、ズボン、ブーツ、そしてジャボ(胸元の飾り布)という出で立ちで客人を迎えていた。その顔には笑みを浮かべていたものの、彼はどこか張り詰めた様子で何事かに神経を尖らせているようにも見えた。


「何か問題でもおありですか?」と、ジラス卿が彼の隣に歩み寄りながら尋ねた。彼もまた、黒の燕尾服にベスト、ズボン、ブーツ、ジャボという舞踏会仕様の装いだった。


「私の取り越し苦労かもしれませんがね」とエヴァンテイル侯爵は認めるように言った。「だが、前回、殿下がクリスマス舞踏会に出席された際、招待もされていないモルガナ・ブラックハートが現れ、それが王家の没落を招くことになったのです。歴史が繰り返されるのではないかと恐れているのかもしれません。ブラックハートが再び現れるのか、あるいは『カオス・ジェネレーションズ』の別のメンバーが来るのか……。まあ、考えすぎでしょうが」


「ふむ。私はそれについては心配していませんよ」とジラス卿は言った。「宮殿の警備兵はすべて私が手配した者たちですし、彼らが職務を全うしてくれると絶対の自信を持っています。もしモルガナ・ブラックハートが来れば私が真っ先に気づくはずですから」

 

***


 寝室で、リアンナは舞踏会の準備を整えていた。仕立て屋、美容師、メイクアップ・アーティストといったプロたちが作業の大部分を担っていたが、サーラとメレディスもできる範囲で手伝っていた。


 支度が整うと、リアンナは更衣室から出てきた。その姿を見たサーラとメレディスは息をのんだ。


「な、何? 私、変かな?」リアンナは少し動揺しながら尋ねた。「こんなふうにお洒落をしたことなんてないから、似合っているのかどうかもわからなくて。別に美人ってわけでもないし、だからその……」


「リアンナ、いいから黙ってこっちに来て!」とサーラが言った。彼女とメレディスは興奮した様子でリアンナを鏡の前に連れて行った。


 鏡に映る自分の姿を見たリアンナは息をのんだ。「こ、これって……私?」


「そうよ」とメレディスが言った。「会場に行ったら、みんなの視線を釘付けにしちゃうわね」


「最高よ、リアンナ!」とサーラが言った。「さあ、会場へ行きましょう!」

 

***


「こんなふうにめかし込むなんて、当分の間は予定になかったことだよ」とアンドリューは言った。彼とローラン、トビー、そしてエリザベスは宮殿の門をくぐり抜け、舞踏会場へと向かっているところだった。「まるで伊達男(ダンディ)になった気分だ」


「個人的には、私はこの場を楽しんでいますよ」とトビーが言った。


 ローラン、トビー、アンドリューの三人は、舞踏会用に揃えられた同じ衣装を身にまとっていた。黒いブーツ、白いズボン、白いリネンのシャツ、金色のベスト、赤いクラバット、そして左胸にエンデクライオン騎士団の稲妻を模した「E」のロゴが刺繍された青い燕尾服である。


「まあ、僕たちにとっては大した問題じゃないね」とアンドリューは言った。「何しろ、僕たちの中で主役と言えば、間違いなくリズだからね」


 他の招待客と同様、エリザベスのドレスも後期ヴィクトリア朝を彷彿とさせるものだったが、そこには独自の工夫が凝らされていた。肩を露出したデザインで、青いボディス(胴衣)に白いバーサ・カラー(肩を覆う大きな襟)をあしらっている。スカートは奇をてらわない形の白地で、青い縁取りと金色のアクセントが施され男性騎士三人の衣装と色調が統一されていた。さらに、男性陣が燕尾服の左胸に「E」のロゴを刺繍していたのと対になるように、彼女もバーサ・カラーの左側に同じロゴを刺繍していた。普段は緩く編み込んでいる長い金髪は凝ったシニヨン(まとめ髪)に結い上げられていたが、顔の周りには何筋かの髪が自然にこぼれ落ちていた。彼女はダイヤモンドのイヤリング、チョーカー、白いリネンの手袋、白いショールを身につけ、控えめな化粧を施し、手には「E」のロゴが描かれた白檀(サンダルウッド)の扇を持っていた。もともと生まれながらの美女であるエリザベスだったが、今の彼女の姿は息をのむほど美しくすでに多くの貴族たち(中には貴族の女性たちさえも)が彼女に視線を向けていた。


「あら、どうもありがとう」とエリザベスは言った。「私も楽しんでいるわ。こうした大きな催しに参加する機会なんてめったにないものね」


 アンドリューはエリザベスの方に目を向けながら右手を顎に当て左の拳を腰に置いて眉をひそめた。 「ふむ。スコットランド訛りだとどうも没入感が削がれるな。いっそイングランド訛りで話してみたらどうだ――」その言葉の直後、エリザベスの扇で頭を叩かれた。


「さて、紳士諸君」とローランは言った。「そしてレディも。そろそろ派手に立ち回ってここミストカリアで我々の存在を知らしめるべき時が来たようだ」


 四人は堂々と舞踏会のレセプション・エリアへと足を踏み入れた。そこには、到着したすべての客がまず受付係に名乗り出るという慣習があった。もしその客が重要人物や著名人であれば、鐘が鳴らされ、メインの舞踏会場へ入る際にその名が高らかに告げられることになっていた。


 一風変わった一行が近づいてくるのを見て受付係は怪訝そうな表情を浮かべた。彼はペンを手に取り、「お名前をどうぞ」と尋ねた。


 ローランは思わず笑みをこぼしながら、「エンデクライオンの騎士団です」と答えた。


 その言葉を聞いた受付係はその場に凍りつき、手にしていたペンを取り落とした。

 

***


 メインの舞踏室では、昇星の評議会メンバーのほとんどが貴婦人たちの接待に忙しくしていたが、アントワーヌ・ルムは特に積極的な女性たちから少し離れたがっているようだった。女性たちと話していない唯一の評議会メンバーはエヴァンテイル侯爵だった。彼はある特定の女性、シャルロット・デュ・フレインと話していた。


「殿下はもう準備ができましたか?」と彼は尋ねた。


「少し前に連絡を受けました」とシャルロットは答えた。ドレスではなく、王室近衛兵の白い制服を着ていたが、とてもよく似合っていた。「殿下は今向かっていらっしゃいます。もうすぐ到着されるはずです。」


 エヴァンテイルは頷いた。「フォン・クロフト公爵と話をして、公務が終わったら王女様をナイツレストにお戻しいただけないかと提案しました。検討するとおっしゃいましたが、見込みは薄いと思います。」


 シャルロットは唇を噛んだ。「…私たちが直接ナイツレストにお連れすることは可能でしょうか?」


 エヴァンテイルはしばらく沈黙した。最後に彼は小さく頷き、「ああ、そうなるかもしれない。この不当な仕打ちを正すには、彼女を我々の手で連れて行くしかないだろう」と言った。その時、アナウンスベルが鳴り響いた。エヴァンテイルはシャーロットの方を向き、困惑した表情を浮かべた。「アナウンスベル? 全ての招待客は既に到着したと思っていたのだが。」


 舞踏室にいた全員がベルの音に戸惑った。「アナウンスベルだと?」とフォン・クロフト公爵が言った。「我々が把握していない招待客がいたのか? 全てのゲストは――」


「ご紹介しましょう! エンデクライオン騎士団!」


 舞踏室に突然訪れた静寂は、針が落ちる音さえ聞こえるほどだった。オーケストラの演奏も止まり、踊っていたカップルたちも踊りの途中で動きを止めた。エヴァンテイルとシャルロットは、4人の人物が堂々と舞踏室に入り中央に立つのをただ呆然と見つめるしかなかった。


 先頭の人物が前に進み出て、「もしよろしければ、ミストカリア王国を代表して発言できる方と面会させていただけないでしょうか?」と尋ねた。


「何ですって?あ、ああ、もちろんですとも」と、フォン・クロフト公爵は呆然とした状態から我に返り、「失礼。私はカスパール・フォン・クロフト公爵と申します。昇星の評議会の一員であり不在の国王の代理として発言しております」と答えた。


「フォン・クロフト公爵、お会いできて光栄です」と先頭の人物は言い、丁重にお辞儀をしてから続けた。「自己紹介をさせていただきます。私はローラン・エカルド、エンデクライオン騎士団の騎士団長です」


 群衆の中から突然、ざわめきが起こった。フォン・クロフト公爵はしばらく呆然と立ち尽くし、ようやく「ミストカリアへ…ようこそ…エカルド騎士団長」と口を開いた。


「ありがとうございます」とローランは答えた。彼は後ろにいる3人を紹介した。「こちらは私の幹部たちです。まず、副団長のトバイアス・ハートウェル。次に、戦闘部隊長で私の弟でもあるアンドリュー・エカルド。そして、医療部隊長のドクター・エリザベス・マッカーサーです。」


 トビーとアンドリューは頭を下げ、エリザベスはカーテシー(おじぎ)をした。


「ええと、エカルド騎士団長」とフォン・クロフト公爵は言った。「失礼ながら、ここにいらっしゃるのはアルクス・レガリウス条約に違反しているのではないでしょうか?」


「ああ、ご説明させてください」とローランは言った。「一週間ほど前、ミストカリアの工作員が我々の管轄区域内で許可なく作戦を行っていた証拠を入手しました。これは明らかに条約違反です。私は正式な抗議と謝罪を求めるためにここに参りましたので条約違反には当たっていません。」


「あ、なるほど」とフォン・クロフト公爵は言った。「まあ、それがミストカリアにいる理由だとしても……クリスマス舞踏会に招待されていないのに――」


「いえ、問題ありません」とローランは言い、コートの裾のポケットから何かを取り出した。「正式な招待状をお渡しします。」


「何だと?」とフォン・クロフトは叫んだ。彼は招待状を手に取り、偽造かどうか確かめようと念入りに調べた。本物だと確認した時にはすっかり威厳を失っていた。「何?どうして?なぜ?誰が招待状を送ったんだ?!」


「私が送ったのです」と、入り口から聞き覚えのある声がした。


「ご紹介しましょう。リアンナ・セレステ・ミストカリア王女殿下!」

みなさん、どうでしたか?もし面白いと思いましたらどうか応援してください。

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