第十七話 作戦会議
引き続き、第二章です。お楽しみください。
翌朝、シャルロットはリアンナの様子がいつもと違うことに気づかずにはいられなかった。外見はほとんど変わっていないように見えたが、どこか以前よりも明るく、元気で、あるいはただ単に幸せそうに見えた。リアンナは今、昇星の評議会と交渉中だった。
「クリスマス舞踏会が近づいているので準備を手伝ってくれる侍女を何人か雇えないでしょうか?」リアンナはにこやかな笑顔で言った。「急なお願いで申し訳ないのですが、可能でしょうか?」
「それは良い考えだと思います」とエヴァンテイル侯爵は言った。「殿下は準備に人手が必要でしょう。」
フォン・クロフト公爵は肩をすくめた。昨日受けた屈辱は(少なくとも表面上は)もう乗り越えたようだった。「何の問題もない。早速始めよう。」
「では、もう一つお願いしてもよろしいでしょうか?」とリアンナは尋ねた。 「侍女たちと多くの時間を過ごすことになるので、私が気兼ねなく付き合える女性たちが望ましいと思います。したがって、採用の最終決定権を私個人に委ねてもよろしいでしょうか?」
「かまわないさ」とフォン・クロフト公爵は答えた。
求人広告は直前に出されたにもかかわらず、王宮(あるいは昇星の評議会)で働く機会を求めて多くの若い女性がすぐに応募してきた。その数は少なくとも100人に達した。女性たちは皆王宮で働くメイドの標準制服、つまり黒の長袖ドレス、白い袖口、フリル付きの白いエプロン、そして白いヘッドドレスからなる英国風のメイド服を着て宮殿にやって来た。その後数時間は、身元調査、履歴書の確認、推薦状の確認、そしてリアンナと評議会との個人面接に費やされた。
結局、リアンナは二人の少女を侍女として選んだ。一人は低い位置でポニーテールにした金髪の少女、もう一人は眼鏡をかけた赤毛の少女だった。
間もなく、リアンナは新しい侍女たちを寝室へと連れて行った。寝室に着くと、彼女は護衛のシャルロットに振り向き、「シャルロット、新しい侍女たちと三人きりにしてくれない?心配はわかるけど、どうか心配しないで。必要な身元調査はすべて済ませたから。大丈夫よ」と頼んだ。
シャルロットは気が進まなかったものの、リアンナと二人の侍女を三人きりにした。
リアンナの寝室に入るとすぐに金髪の少女はリアンナに抱きついた。
「ああ、リアンナ!無事でよかった。本当に心配したわ!」
「ええ、大丈夫よ。サーラ、大丈夫。ああ、本当に会いたかったわ」とリアンナは抱きしめ返した。二人の少女は涙ぐみ始めた。
「みんなあなたのことをすごく心配してたのよ」と赤毛の少女が言った。「無事でよかったわ」
「ええ、ありがとう」とリアンナは言った。「そのメガネ、よく似合ってるわよ、メレディス」
メレディスは顔を赤らめた。「目の色は隠した方がいいってみんな決めたのよ」彼女がかけていた眼鏡のせいで普段は緑色の目が灰色に見えた。
「ええ、ローランからそのことは全部聞いているわ」とリアンナは言った。彼女は眉をひそめ、言葉を続けた。「本当にごめんなさい。つい先月、そんな大変な目に遭われていたって全く知らなかったわ」
「大丈夫よ。もう過去のことだと思っているから」とメレディスは言った。「もし失礼なことを言っていたら申し訳ないんだけど、実はこの状況ってすごく皮肉に感じるの。隠された王国の失われた王女になるって私の子供の頃からの夢だったから。」
「正直言って、見た目ほど素晴らしいことじゃないわ」とリアンナは冷ややかに言った。「はっきり言って面倒よ。」それから彼女は眉をひそめて言った。「それでも、この計画がこれほどうまくいったのは驚きだわ。私が最終決定を下せるかどうかにかかっていたのは分かっているけど、それでもあなたたちはセキュリティチェックを突破して、ちゃんとした履歴書と推薦状を用意できたし、面接も問題なく通過できていたわ。」
「それはアンジェリカのおかげよ」とサーラは言った。「彼女は急な依頼にもかかわらず、必要な書類を全部揃えてくれて、メイド服も用意してくれて、面接のやり方まで教えてくれたの。本当にびっくりしたわ。」
「アンジェリカって誰?」とリアンナは尋ねた。 「待って、アンジェリカ・セルヴァンスのこと?彼女も騎士団の一員なの?」
***
リアンナのスマートフォンに施された新たな改修により、エンデクライオン城との映像を伴う直接通信が可能になっていた。そのため、リアンナの寝室の壁にはエンデクライオン城の大広間の様子が映像として映し出されていた。
「よっしゃ!映像通信の準備は万端のようだな」とローランが言った。「それに、潜入任務も成功したみたいだ」
リアンナは親しい顔ぶれを見て微笑んだ。「こんにちは、カイル。私のためにわざわざここまで来てくれてありがとう」
「リアンナ! 無事で本当によかった!」とカイルが言った。
「ああ、本当に心配したよ」とアンドリューが言った。「君に何事もなくてみんな心から安心しているんだ」
「ありがとう、アンドリュー」とリアンナは言った。「その笠、とても似合ってるわ」
「ほら、似合ってるって言われたぞ」とアンドリューは茶目っ気たっぷりに笑った。カイルは呆れたように目を回した。
サーラから話には聞いていたものの、アンジェリカ・セルヴァンスが奥の方に座り、何気ない様子で紅茶を飲んでいるのを見て、リアンナはやはり驚かされた。彼女は、見知らぬ人々にも目を向けた。背中に巨大な鎌を背負った金髪の男……そして、白衣を身にまとい、プレッツェル・スティックをかじっている驚くほど美しい金髪の女性。リアンナは言いようのない不安を覚え、その笑みを少しこわばらせた。
「何かあったの?」リアンナの様子が少し変わったことに気づいたサーラが尋ねた。
「本当に…バカみたいことだけど…」リアンナは小声で言った。「だって、すごく綺麗な女性が…男の子たちと一緒にいて…私って…劣等感を感じてるのかしら?」
「あ、心配することなんて何もないわ」サーラは小声で答えた。「彼女はドクター・エリザベス・マッカーサー、医療部隊の隊長。害のない人よ。実際、あなたたち二人は知り合えばきっと仲良くなるわ」
「わかった、信じるわ」リアンナは小声で言った。「待って、ドクター・エリザベス・マッカーサー?『世界の天才児』に出てきたあの小児科医?」彼女はエリザベスをじっと見つめて言った。「私より年下なの?」
「よし、会議を始めよう」とローランは言った。「クリスマス舞踏会の場で『昇星の評議会』と大々的に対峙する――その方針は全員で決めた通りだ。計画は今のところ順調に進んでいるからその件はひとまず置いておこう。個人的に警戒すべきだと考えているのは未知の要素である『カオス・ジェネレーションズ』の存在だ。彼らが未だにその姿を現していないというのは実に気がかりなことだと言わざるを得ない」彼は大鎌を手にした男の方を向き、「トビー、何か言いたいことはあるかい?」と尋ねた。
「団長、これはあくまで私の勝手な推測に過ぎないのですが」とトビーは言った。「今回の事件の黒幕は、モルガナ・ブラックハートではないのでしょうか?」
一瞬の静寂の後、ローランは口を開いた。「その可能性は高い。18年前、王家の没落を画策したのは彼女だ。いわば、やり残した仕事を片付けるために戻ってきたとしても不思議ではないな」
「わっちゃあ、モルガナ・ブラックハートだって? そりゃあ最高に厄介だな」とアンドリューが言った。「あのあまは、エッグゼービエル・ソランと同格の『シャドウ・ストーカー』だぞ。相手にするのは地獄だ」
「今回の彼女の動機は何だと思う?」ローランは尋ねた。「18年前は、あいつはアルカンタラの命令に従っていただけだった。今回も同じだと思うか?」
「そうは思いません」とトビーは言った。「アリスタ・アルカディアが解雇されたことで空席となった議席を、単に自分のものにするために名声を得ようとしているだけだと考える方が妥当でしょう。」
ローランは眉をひそめた。「本当にそうか? ジェイムソン・カーンも同じ目的だと思っていたが、あの時は見当違いだったじゃん。ブラックハートには別の目的があるかもしれないんだぞ?」
「あり得ませんわ。ブラックハートはそういう考え方はしませんですわ。」皆が驚いたことに、口を開いたのはアンジェリカだった。「ブラックハートは意外と率直なの。複雑な策略を巡らすようなタイプじゃないですわ。ブラックハートの目的は、アリスタの空席を奪うこと、それだけですのよ。」
アンジェリカがアリスタ・アルカディアを「アリスタ」と呼んだことに、リアンナは気づいていた。
「しかし、この件ではブラックハートが昇進を狙っているだけではないと思いますわ」とアンジェリカは続けた。
「え?どういう意味だ?」とアンドリューが尋ねた。
アンジェリカは黙ってティーカップを見つめていた。そしてようやく口を開いた。「これから私が言うことには、何の証拠もないことを覚えておいてください。森の奥深くの城に住む風変わりな女の、ただの支離滅裂な陰謀論ですのよ。でも、仮に、昇星の評議会のメンバーの一人が、実はカオス・ジェネレーションズのシャドウ・ストーカーだとしたらどうかしら?」
「はいっ?」とリアンナだけでなく、他の騎士たちも一斉に叫んだ。
「あくまで仮の話ですのよ」とアンジェリカは言った。 「しかし、このシナリオでは、かの評議員はブラックハートとの提携を提案していますわ。提携が実現するためには、そのシャドウ・ストーカーはただの普通のシャドウ・ストーカーではいけませんわ。ブラックハートと同等のレベルのシャドウ・ストーカーでなければなりません。さて、その評議員がブラックハートに『ゲーム』を持ちかけたとしましょう。それは、他の評議員たちを操って自分の意のままに動かし、彼らにそれとは知らぬまま「カオス・ジェネレーションズ」の信徒たちと競わせるというものですわ。ゲームの目的は、行方不明の王女を見つけ出し、ミストカリアへ連れ戻すこと。もし『カオジェン』が先に彼女を見つければ、そこでゲームオーバーですわ。しかし、『昇星の評議会』が先に彼女を特定できれば、『ゲーム』は続行されますわ。」
アンジェリカは紅茶を一口飲んだ。「とにかく、評議会は最終的にエドワ…」アンジェリカは言葉を詰まらせた。「あら、失礼しました。あなたをエドワードとヘレンの娘だと思い込んでいましたわ。とにかく、評議会は最終的にチェルシーの娘…」アンジェリカは再び言葉を詰まらせ、今度は眉をひそめた。「とにかく、評議会は最終的にリアンナを王女だと特定し、カオジェンよりも先に突き止めました。これは主に、カオジェンのあまりにも大雑把な行動がエンデクライオン騎士団の注意を引いたためですわ。そして、こうして『ゲーム』は今日まで続いているのです。」
「つまり、あんたの言うことが本当なら」とカイルは言った。「俺たちはソランと同レベルのシャドウ・ストーカーを一人ではなく二人も相手にしているということか?」彼は苛立ちながら両手を上げた。「噓だろ…ソランだけでも手強かったのに、今度は奴と同レベルの二人と戦わなければならないかもしれないのか?!」
「俺が知りたいのは、なぜ今なのかということだ」とローランは言った。彼はグラスに水を入れて一口飲んだ。「この状況で、なぜこの評議員はリアンナを長い間放置した後で、今になってブラックハートと提携を結んだんだい?」
「まあ、ブラックハートの動機についてはすでに確認した通り、アリスタの空席を埋めることにあるのでしょう」とアンジェリカは言った。「謎の評議員については、貴族の視点から考えてみてくださいませ。個人的に貴族と聞いて真っ先に思い浮かぶ言葉の一つは『政略結婚』ですわね。それに、王女殿下は九月に十八歳の誕生日を迎えられました。つまり、ミストカリアの法の下では法的に結婚が可能だということですわ」
パキッ!
「おっと、失礼」とローランが言った。「つい、自分の力を忘れてしまった」彼は手に持っていたグラスを強く握りしめすぎてそれを砕いてしまっていたのだ。エリザベスがすぐに彼の手を確認したが、サイリック・シールドのおかげで彼は無傷だった。
「け、結婚?」リアンナが言葉を詰まらせた。彼女の顔色はすっかり青ざめていた。
アンジェリカは肩をすくめた。「あくまで仮説に過ぎませんわ」彼女はそう言いながら、紅茶を一口飲んだ。
「仮説だとしてもだ」とローランは言った。「リアンナ、『予備の策』は常に身につけておくように」
みなさん、どうでしたか?もし面白いと思いましたらどうか応援してください。




