第十二話 飛行機内の会話
引き続き、第二章です。お楽しみください。
「えっ? アンドリュー、パイロットの免許を持ってるのか?」とカイルが尋ねた。
「ああ、持ってるよ。ローラン兄さんもね」と、アンドリューは操縦席から答えた。「騎士団にリズをスカウトしにスコットランドへ行った頃に取ったんだ。そうそう、トビーも持ってるよ」。彼はマイクを手に取り、話し始めた。
「紳士淑女の皆様、機長よりご案内申し上げます。特に女性の皆様、どうぞお聞きください。ただいま巡航高度に達しました。ミストカリアへの直行便の所要時間は約8時間の予定ですが、本機は最高速度マッハ3を誇りますので、本気を出せば2時間に短縮することも可能です。飛行中、多少の乱気流に遭遇する見込みです……というか、ミストカリアへ向かう以上、間違いなく『とんでもない』乱気流に見舞われることになります。緊急時には、非常口の位置をご確認ください。ただし、高度500メートルに達するまでは機外へ出ないでください。そこが、上級職超力者が落下しても生存できる限界の高さだからです。もし機体と運命を共にすることを選ばれるなら、それも自由です。上級職超力者なら墜落しても生き残る可能性が高いですからね。もっとも、強くお勧めはしませんが。何はともあれ、本日のフライトをどうぞお楽しみください。そして、また『エア・エンデクライオン』をご利用いただければ幸いです。それでは、空の旅をご堪能ください」
「へえ、なんて心強いアナウンスだこと」とカイルは冷ややかな口調で言った。
「そういえば、ミストカリアへの渡航はどうしてこんなに難しいの?」とサーラは尋ねた。「以前、きちんとした準備なしでは船を操縦することさえ困難だって言っていたわよね」
「住民のせいさ」とローランは答えた。「住民の100パーセントが超力者だからね。しかも、他国と比べて上級職の割合が圧倒的に高い。端的に言えば、あれほど多くの超力者が一か所に住んでいると、彼らが発するエネルギーが天候をひどく乱してしまうんだ。島は常に濃い霧に包まれ、嵐も頻繁に発生する。上空の乱気流も言うまでもない。強力な磁気干渉のせいで、コンパスは全く役に立たないしね。GPSのおかげでミストカリアへの往来は多少楽になったけれどその信号でさえ時に途切れてしまうことがあるんだ。ミストカリア唯一の港町であるカンタースバーグとイングランドを結ぶ航路はたった一つしかない。そして何世紀もの間、それがミストカリアにとって外界とつながる唯一のルートだったんだ」
「いやあ、彼らにとっては散々なことだよな」とカイルが言った。「ところで、なんで俺たちはもっとスピードを出さないんだ?もし2時間くらいで到着できるならそれが一番いいんじゃないか?」
「絶対にダメよ!」とエリザベスが語気を強めた。「超音速飛行は緊急時だけ。上級職だってあれほどのG(重力加速度)に無傷で耐えられるわけじゃないんだから」
「でも、もしミストカリアへもっと早く着けるなら……」とローランが言った。「せめてマッハ1くらいなら――」
「ダメ!」とエリザベスが言い放った。
話題を変える必要を感じたメレディスが言った。「ローランとアンドリューのご両親が見送りに来てくれたのは嬉しかったわ。私には親がいなかったから確かなことは言えないけれど、あれこそが親が与えてくれる温かさってものなんだろうなって感じたの」
「ああ、本当にそうだよな」とカイルが言った。「ローランとアンドリューの親御さんは、俺たちにとってもう一組の親みたいな存在だったから。子供の頃、何か集まって遊ぶときはいつも彼らが見守ってくれていたし。特にリアンナは彼ら、とりわけおふくろさんと特別な関係だったんだ。リアンナのことを本当の娘みたいに可愛がってくれていたからな」
「ええ、あの二人からは『すべての子供を心から愛する親』っていう雰囲気が漂ってるわよね」とサーラが言った。そして彼女は悪戯っぽくニヤリと笑って付け加えた。「でも、双子のローランとアンドリューしか子供がいないっていうのは昔から不思議に思ってたのよね。あの二人の仲の良さを見てると今頃もう10人くらい子供がいてもおかしくない感じじゃない?」
サーラはローランが照れるのを期待してそう言ったのだが、意外なことに、彼の表情はむしろ悲しげだった。操縦席のアンドリューも黙り込んでいた。「トビー、ちょっと代わってくれるか?」と副操縦士に声をかけると、アンドリューは皆のいる場所へと歩み寄った。「それで、彼らに話すべきかな?」と彼はローランに尋ねた。
「話すべきだろうね」とローランが言った。「いつか自分たちも家庭を持ちたいと願うなら、特に心に留めておくべきことだから」
「何を心に留めておくの?」とメレディスが尋ねた。
「君が出会った上級職の兄弟姉妹といえば、カイルとサーラ、それに僕とアンドリューくらいだから気づかなかったかもしれないけど」とローランは言った。「上級職の子供を授かるどの家庭でも、子供は必ず二人だけなんだ」
「えっ? どうして?」とカイルが尋ねた。
「上級職がいかに強大な力を持っているか、もうわかっているだろう」とアンドリューが言った。「あれほどの力には往々にして代償が伴うものなんだ。女性にとって妊娠がいかに過酷なものか、考えてみてほしい。その上で上級職の子供を身ごもるのがどんなことか想像してみてくれ」
「要するに、上級職の子供を妊娠することは女性の体にあまりにも大きな負担を強いるため、もし二人目の上級職を産んでしまったら、もう二度と子供を産めなくなってしまうんだ」とローランは言った。
「えっ? 嘘でしょ」とサーラが言った。
「本当だよ」とアンドリューが言った。「女性が上級職の子供を三人以上産む唯一の方法は、年下のきょうだいが双子か、あるいはそれ以上の多胎児である場合だけなんだ」
「母さんにとっては、とりわけ辛いことだったんだよな」とローランは言った。「母さんはずっとたくさんの子供を望んでいたのに、最初の妊娠で上級職の双子を授かったせいで二度と妊娠できない体になってしまったからね。その事実を受け入れるまでには、長い時間がかかったよ」
「特に、女の子をずっと欲しがっていたんだ」とアンドリューが言った。「周りに小さな女の子がいないことを、よく嘆いていたものさ」
「実のところ、リアンナが頻繁に顔を見せるようになった頃からはもうそのことを嘆かなくなったね」とローランは言った。「さて、その話はこれくらいにしておこう。ミストカリアでの滞在について詳細を確認しておきたい。現地にいる我々の騎士がエンデクライオン城の準備を万端に整えてくれているはずだ」
アンドリューは少し気まずそうな様子を見せた。「まあ……彼女なら間違いなくやってくれているとは思うけど……ただ、あの人は少々怠け癖があるからね。だから……期待は最低限にしておいたほうがいいかも」
「城があるのか? ミストカリアに?」とカイルが尋ねた。
「ああ、あるよ」とローランは言った。「そんなに不思議がることじゃないさ。ミストカリアはエンデクライオン騎士団の発祥の地だからね」
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