第十一話 ミストカリアへ飛ぶ
引き続き、第二章です。お楽しみください。
「コーディ、何か知らせはあるか?」ローランは「メカニック・エリア」に足を踏み入れながら言った。
「団長」とコーディ・モリソンは答えた。「まず、サイリック・シールドが機能停止した原因が判明しました。」彼は押収した電磁パルス発生器を取り出した。「カオジェンが使用していたこの装置は電磁パルスを発生させます。主な目的は機械を無力化することです。しかし、町役場での事件のおかげで電磁パルスがサイリック・シールドに正確な周波数で当たると…」
「サイリック・シールドを完全に無効化するのか?」ローランは首を振った。「俺はあのパルスに当たってないのに、シールドをかすめただけで完全に破壊されたんだ。」彼はモリソンの方を見て言った。「カオジェンもこのことに気づいているだろうな?」
「その通りです。」
「まったく!また厄介なことが増えたな」とローランは言った。 「もう一つ頼んだ件はどうなった?」
「承知いたしました、団長」モリソンはそう言ってリアンナのスマートフォンを彼に手渡した。「しかし団長、特別な事情があったことは理解しておりますが、他人の所有物について本人の同意なしに改造を依頼するのはこれからはご遠慮ください。」
「彼女に返したら謝罪するよ」ローランはそう言ってスマホを受け取った。
「最後に、『ストームVTOLジェット号』はあと1時間ほどで出発準備が整います。」
「よし。そろそろ任務開始の時間だ。」
***
前日、ローランは特に親しい騎士たちにこう話していた。
「みんな、今回の任務は非公式な個人的なものだ」とローランは言った。「だから、完全な任意参加だ。行きたくない者は来る必要はない。最悪の場合、俺一人でだってやるつもりだし――」
「それ以上は言うなよ、RJ」とカイルが言った。「俺は行く。それはもう分かってるだろ」
「私もよ」とサーラが言った。「リアンナを助けに行きましょう!」
「やれやれ、ミストカリアでの任務から戻ったばかりだというのにもう舞い戻りか」とアンドリューはぼやいたが、その表情は笑っていた。
ローランも彼らに向かって微笑んだ。「みんな、ありがとう」
「団長、念のため申し上げておきますが」とトビーは言った。「アルクス・レガリウス条約によれば、エンデクライオン騎士団の騎士団長は正当な理由なくミストカリアに入ることはできません。」
「ああ、だが俺には正当な理由があるのさ」とローランはいたずらっぽい笑みを浮かべて言った。「ミストカリアは我々の許可なくナイツレストで活動していた工作員についていまだに正式な謝罪をしていない。条約には俺が直接謝罪を要求することを妨げる条項は何もないのさ。」
結局、ミストカリアへ向かうことになった騎士は、ローラン、トビー、アンドリュー、カイル、サーラ、エリザベス、メレディスの面々だった。トビーとエリザベスは他の騎士たちをまとめ役が必要だとして志願した。メレディスもまた、まだ見習いの身でありながら同行を強く希望した。知り合ってから数週間しか経っていなかったが、その間にメレディスとリアンナはすっかり親しくなっていたのだ。
ローランはエンデクライオン本部の中で群を抜いて広い専用スペース、格納庫へと向かった。そこにはストームVTOLジェット号が置かれていた。翼にVTOLターボファンエンジンが搭載され、方向舵には騎士団のロゴであるスタイリッシュな「E」の文字が描かれている点を除けば、SR-71ブラックバードと瓜二つの飛行機だった。
格納庫に着くと、ローランは他の騎士たちと話している二人の人物、つまり両親の姿を見て驚いた。「見送りに来てくれたのかい?珍しいな」と彼は言った。
ヘレン・エカルドはローランの方を向き、「ええ、出発前に少しお話したかったの」と言った。少し落ち着かない様子で彼女は、「リアンナが養子だったことをお伝えしていなくてごめんなさい。でも、それをあなたたちに伝えるのは私たちの責任ではないように感じていたの」と続けた。
ローランは眉を上げた。 「その通りだよ。母さんの責任じゃない。それに、一番それを聞くべき人は今ここにはいないんだよ。」
「チェルシーはいつもこうだったわけじゃないんだ」とエドワード・エカルドはため息をつきながら言った。「高校時代はもっと温かくてフレンドリーだった。確かに、僕たちの中で一番真面目で堅物だったけど、マンガやアニメ、ビデオゲームに関しては、不思議なくらい情熱的でエネルギッシュだったんだ。」
「そして、その情熱をそのままリアンナに受け継がせたのよ」とヘレンは微笑みながら言った。そして、表情が真剣になった。「でも、今回の件でずっと考えていたことを決心したの。チェルシーにリアンナの親権を私たちに譲ってもらうよう頼むわ。」
ローランは驚いた。「本気?」
「冗談じゃないんだね?」とアンドリューが会話に加わった。
「本気よ」とヘレンは言った。 「チェルシーがこの件で私たちの友情を終わらせても驚かないわ。まあ、最近はほとんど友達でもないし、リアンナはもうすぐ18歳になるんだから結局は無意味な行動かもしれないけど…」ヘレンは少し間を置いて言った。「いいえ、この『王女様』騒動のことを考えると彼女はもう既に18歳ってことじゃない?」
ローランとアンドリューは驚いた。彼らはその事実を全く考えていなかったのだ。
「NYPDに電話してあのロバート・ケリス刑事にきつくお灸を据えてやろうかとも思っているんだ」とエドワードは言った。「彼がまともにならない限りどんな事件の相談にも乗らないと通告するかもしれない」
「おいおい、たった一人の刑事が父親としての務めを果たしていないからといって警察署全体を罰するのはやめてくれよ」とローランは言ったが、思わず少し笑みがこぼれてしまった。
「団長、降機の時間です」とトビーが言った。
「よし、それじゃあ行こう」とローラン。「ミッション・スタートだ!」
「おい、トビー、エリザベス。うちの坊主たちをしっかり手綱で締めておいてくれよ、頼んだぞ」とエドワードが言った。
「それが私の務めですから」とトビーが答えた。
「あの子たちのおかげで仕事が増えたんだから、昇給を頼まなきゃいけないかもね」とエリザベスは言ったが、その表情は笑っていた。
「メレディス、ついに会えて本当に嬉しかったわ」とヘレンが言った。「これからも疎遠にならないでね。カイルが子供だった頃の話なら、山ほどあるんだから」
「はい、ありがとうございます」とメレディスが言った。「楽しみにしています」
「いやあ、エンデクライオンの本部で二人と会うなんて、なんだか不思議な気分だな」とカイルが言った。「それに、俺の彼女に子供時代の恥ずかしい話を披露する役目はうちの母ちゃんのものじゃないの?」
「あら、アデレードならあなたの子供時代の話を私以上にたくさん持っているはずよ」とヘレンは言った。「そういえば、あなたたちが留守にしている間、彼女を女子会に誘ったりうちにお泊まりしてもらったりしようと思っているの」
カイルとサーラは顔を見合わせ、微笑んだ。「ありがとうございます」とサーラが言った。「ママもきっと喜ぶと思います」
騎士の面々が機体に乗り込み始めると、エドワードが声をかけた。「アンジェリカによろしく伝えてくれよ」
「任せておけ!」とローランが応える。一方、アンドリューは少し気まずそうな様子だった。
「警告! ストームVTOLジェット号、離陸準備中。警告! ストームVTOLジェット号、離陸準備中。関係者以外は格納庫から退避してください。格納庫の扉を開放します」
地上には、パインシャックル・フォレストの奥深くに広がる雪に覆われた草原があった。突然サイレンが鳴り響き、草原にいた野生動物たちを驚かせて追い払った。地面の扉が外側に向かって開き始め雪がその穴の中へと降り注ぐ。機体が通れるだけの幅が確保されるとすぐにストームVTOLジェット号は垂直に上昇を開始した。必要な高度に達するやいなや、機体は猛スピードで飛び去っていった。
エドワードとヘレン・エカルドは、格納庫の屋根に開いた穴からジェット機が飛び去る姿を見つめていた。「もし私たちのほうがリアンナを養子にしていたら、今とは何か違っていたかしら?」とヘレンが尋ねた。
「さあ、どうだろうな」とエドワードは言った。「ただ一つ言えるのは、養子縁組の書類に何と書かれていようと、リアンナはずっと僕たちの娘であり、僕たちは彼女をそう思って愛してきたということだ」。彼はにやりと笑って続けた。「それに、たとえ養子として迎えられなかったとしても、今度は『義理の娘』として迎えるという現実的な可能性があるわけだしな」
ヘレンはくすりと笑い、「それは楽しみね」と言った。
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