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【第四章連載開始!】エンデクライオンの騎士団   作者: E. C. ライリー
第二章 ミストカリアの王女

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第十話 昇星の評議会

引き続き、第二章です。お楽しみください。

 ミストカリアの首都アルクス・レガリウスは、いわば「ハイブリッドな都市」と呼べる場所だった。街の建物の多くはルネサンス様式を思わせる建築で、北欧の都市を彷彿とさせる景観を呈していた。道路の大半は石畳で自動車の姿もまばらだった。その一方で、主要な公共交通機関としては街全体を網羅するハイテクな高架鉄道網が整備されていた。


 置かれている状況にもかかわらず、リアンナはリムジンの窓から見える街の光景に、思わず心を奪われていた。「なんて素敵な街なの!」と彼女は感嘆の声を上げた。彼女が最後にヨーロッパを訪れたのは5年前、エカルド家に同行して夏の間ずっと大陸を巡る旅をした時のことだった。当時訪れたどの都市の建築にも魅了されたものだが、アルクス・レガリウスに対する彼女の反応もまたそれと同じものだった。


「ミストカリアの民は伝統を重んじる誇り高い民族です。日々の生活様式というものは、そう簡単には変わらないものですから」と、エヴァンテイル侯爵は言った。「とはいえ、我々は『超力者(サイリック)』でもあります。自らの力を正しく行使し、その力を最大限に活かす技術を発展させる術を長い年月をかけて学んできたのです」


 リアンナにとって「サイリック」という言葉は自分を含むミストカリアの人々を指すものだという以上の意味を持っていなかった。彼女はなるべく早くその言葉について調べてみようと心に決めた。「では、この街には遥か昔からの伝統が息づいているのですね?」と彼女は尋ねた。


「王国の建国以来、およそ1600年もの間脈々と受け継がれてきました」とエヴァンテイル侯爵は答えた。「アルクス・レガリウス宮殿を構成する主要な建物は何世紀にもわたって改築や建て替えが繰り返されてきましたが、その基盤は変わらず維持されています。この街はその宮殿を取り囲むようにして発展してきたのです。……おや、ちょうど到着したようですね」


 街を見下ろす丘の上に巨大で美しい宮殿がそびえ立っていた。その建築様式はリアンナがかつてヨーロッパを旅した際に見学したドイツの数々の宮殿を彷彿とさせるものだった。高くそびえる塔、広大な翼棟(よくとう)、巨大なホール、そして広い中庭。全体的な印象としては、ルートヴィヒスブルク城、ノイシュヴァンシュタイン城、ホーエンツォレルン城を独特のスタイルで融合させたような佇まいだった。しかし、リムジンが宮殿の門をくぐるにつれリアンナは身構えるような思いを抱いた。アルクス・レガリウス宮殿がいかに美しく壮麗であろうとも、そこは結局のところ、彼女にとっての「牢獄」なのだから。


 一行はやがてリムジンを降り、宮殿の主棟にある正面入り口へと足を踏み入れた。リアンナは宮殿の内部もまた外観に劣らず美しいことに気づいた。階段や壁、シャンデリア、そして豊かな光を採り込む大きな窓に至るまで、その装飾は主にバロック様式の美学で統一されていた。


「こちらへどうぞ、殿下」とエヴァンテイル侯爵が言った。彼とハンプトン子爵はリアンナを伴って廊下を進んでいった。数人の使用人や従者が好奇の目を向けたが一行が通り過ぎるとすぐに仕事へと戻っていった。リアンナは、当面の間、自分の正体が秘密にされていると聞かされていた。


「どこへ行くのですか?」とリアンナが尋ねた。


「『昇星の評議会』との会合へ向かいます」とハンプトン子爵が答えた。「殿下のご帰還をお膳立てしたのは、彼らなのです」


(私の誘拐、ということでしょう)とリアンナは心の中で思った。


「『昇星(しょうせい)の評議会』は、有力貴族の跡取りたちで構成される組織であり、私とハンプトン子爵もそのメンバーです」とエヴァンテイル侯爵が説明した。「元老院を除けば、この評議会こそが国内における最高の政治的権威なのです。我々は事実上、不在の王家に代わる役割を担っていると言えます」


 リアンナはその説明を少し奇妙に感じた。(もしこの評議会が王の代わりを務めているのなら、私を連れ戻すことは彼らにとって得にならないんじゃない?)――彼女はそう考えた。


「ここです」とエヴァンテイル侯爵が言った。彼らは巨大な両開きの扉の前に到着していた。リアンナはどんな事態にも動じないよう心の準備をしていたが、その扉の向こうに広がる光景を目の当たりにし完全に圧倒され言葉を失って立ち尽くしてしまった。


 美青年たち。


 この世のものとは思えないほどの美しさを備えた、信じがたいほどの美青年たちだった。ローランやカイル、アンドリューも十分にハンサムな男性たちであるため、リアンナにとって美男子に囲まれることは決して珍しいことではなかった。だが、そこにいる貴族たちはそれらとは次元の違う美しさを放っていたのだ。


 部屋の中には五人の男たちがいた。エヴァンテイル侯爵とハンプトン子爵を合わせると、彼ら「昇星の評議会」は七人の若き貴族で構成されていた。リアンナは以前にも気づいていたことだが、ミストカリアの平民の服装は世界の他の地域のそれと何ら変わりない一方で、貴族たちはまるでヴィクトリア朝後期の時代からそのまま抜け出してきたような装いを好むようだった。七人全員が色とりどりのウェストコートとフロックコートを身にまとい、オフホワイトのパンタロンと黒い乗馬ブーツを合わせ、首元にはクラバットかジャボをあしらっていた。一方、用意された簡素な旅装を身にまとっていたリアンナは彼らと比べてあまりに質素な格好であるように感じていた。


 その男たちの一人、紫色の瞳をした背の高い金髪の男性が彼女の方へ歩み寄ってきた。「リアンナ王女殿下」と彼は言った。彼はリアンナの前に跪くと、その手を取って口づけをした。「私はカスパール・フォン・クロフト公爵と申します」


「こ、こちらこそ、お会いできて光栄です」とリアンナはたどたどしく言った。


「評議会の他の者たちもご紹介させてください」とフォン・クロフト公爵は言った。「エヴァンテイル侯爵とハンプトン子爵にはすでにお会いになっていますね」。彼はリアンナを、その集団の中で最も背が高く、漆黒の髪をした筋骨隆々の男の元へと案内した。「こちらはヴァージル・ウェルズワース伯爵です」


 ウェルズワース伯爵は何も言わず、ただにやりと笑って指の関節を鳴らした。リアンナは不安げに微笑み、「ええと、はじめまして」と言った。


 フォン・クロフト公爵は彼女を次の男の元へ連れて行った。その男もまた、灰色の瞳をした背の高い金髪の男性だったが、髪は腰まで届くほどの長さがあり、自由に流れるように垂らされていた。「こちらはエイドリアン・ジラス卿です」。彼はリアンナの前に立つと、一礼した。


 リアンナはまばたきをして、「卿(ロード)?」と尋ねた。


「ええ。正式な爵位は『公爵』なのですが」とジラス卿は言った。「個人的には、それだけでは物足りないと感じていましてね。ですから、『卿(ロード)』と呼ばれるのを好んでいるのです」


「殿下」とフォン・クロフト公爵が言った。彼は、自分の隣に立っている明るい茶色の髪で眼鏡をかけた男性を指し示した。「こちらがベルナール・リッテンハウス侯爵です」


 リッテンハウス侯爵は眼鏡の位置を直しながら、「殿下」と挨拶した。リアンナはただ、緊張した面持ちで微笑み返すことしかできなかった。


「そして最後に、アントワーヌ・ルム男爵です」とフォン・クロフト公爵が紹介した。リアンナにとって、ルム男爵は最も意外な人物だった。彼はまだ十五歳くらいの、茶髪の少年だったからだ。


「わあ! 王女殿下だ!」ルム男爵は興奮した様子で言った。「こんにちは! 僕はアントワーヌ・ルムです。よかったら、僕のことは……」


「ルム男爵!」フォン・クロフト公爵が厳しい口調で言った。「王女殿下の御前だ、行儀をわきまえなさい」ルム男爵は言葉を切り、気まずそうにした。フォン・クロフト公爵は評議会の面々に視線を向け、こう告げた。「紹介も済みましたので、本日の評議会を開会いたします。皆様、お席にお着きください」


 リアンナは席に着きながら、心の中でつぶやいた。「これって乙女ゲーム? 日本で流行っているような乙女ゲームの世界に転生しちゃったの? いや、それはおかしいわ。もし乙女ゲームの主人公なら、もっと身分が低いはずよ。男爵家の私生児とかね。正統な王女なんて立場じゃないわ! ……ってことは、もしかして私、悪役令嬢ってこと?」彼女はつぶやきを止め、瞬きをしてから首を横に振り、「……一体、何を言ってるのよ、私」と口にした。

 

***


「昇星の評議会」の主な議題は一週間後に控えた恒例のクリスマス舞踏会についてだった。この舞踏会は実際のクリスマス当日に開かれるわけではない。ミストカリアにおけるクリスマスシーズンの幕開けを告げる行事であり、通常は本番のクリスマスの約一週間前に開催されるのだ。そしてこの舞踏会こそが長年行方不明だった王女としてリアンナが民衆の前に正式にお披露目される場となることが決まっていた。


「それじゃあ、私にはあまりやることはないってことですね?」自分の役割について質問を求められた際、リアンナはそう言った。「何度か手を振って、短い挨拶をするくらいでいいんですか?」


「ええ、そのように進行する予定です」とフォン・クロフト公爵が答えた。「あなたはまだミストカリアの流儀に慣れていらっしゃらないでしょうから負担を軽くしたいと考えたのです。台本も用意しますし、今週はリハーサルも行いますから」


「ああ、よかった。難しかったり複雑だったりすることをしなくて済むんですね」彼女は言った。「ありがとうございます。やるべきことがそれほど多くないとわかって、ずいぶん気が楽になりました」そう言いながら、彼女は感じの良い笑みを浮かべていた。


 だが、内心では激しい怒りに燃えていた。


 先ほど、彼女は「昇星の評議会」が自分をミストカリアに連れ戻すことにどんな利益があるのかと考えていた。評議会は実質的に王の代行を務めているのだ。それなのに、わざわざ行方不明だった王位継承者を連れ戻し、自らの権力を危うくするような真似をする理由が見当たらなかったからだ。会議の間、リアンナは交わされる会話に注意深く耳を傾け、貴族たちの言葉に含まれるあらゆるニュアンスや隠された意図を読み取ろうとしていた。そうして彼らの真の狙いを悟った彼女の心中は単に「不満」などという言葉では到底言い表せないほどの怒りに満ちていた。


(彼らは私を『飾り』にしようとしているのね!) 笑顔の裏で、彼女は奥歯を噛み締めていた。(私を人前に引き出し、「行方不明だった王女を見つけた」という事実を切り札にして元老院からさらなる権力を引き出そうという魂胆なのね! ふざけているの? 私を誘拐までしておいて、この浅ましい計画に素直に協力してもらえるなんて思わないことね!あなたの計画が思い通りにはいかないようにしてやるわ!)

みなさん、どうでしたか?もし面白いと思いましたらどうか応援してください。

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