第九話 カオス・ジェネレーションズの動機
引き続き、第二章です。お楽しみください。
「頼む、リアンナ!電話に出てくれ!電話に出てくれ!」ローランは必死にそう言った。スマートフォンは鳴り続けたが、応答はなかった。ローランは電話を切り、団長室内を行き来し始めた。すでに二度リアンナに電話を試みていたがつながらなかったのだ。ついに彼は、何年もかけていなかったある番号に電話をかけることにした。
「ローズウォーター法律事務所、チェルシー・ローズウォーターです」
ローランはリアンナの母親が旧姓を名乗っていることにふと気づいた。まあ、離婚して何年も経つのだから、驚くことではないか、と彼は思った。「もしもし、ローラン・エカルドです。ご無沙汰しております」
「あら、ローランくん。本当に久しぶりね」とリアンナの母親は言った。「今日はどういったご用件かしら?」
「リアンナのことなんですが」とローランは言った。「彼女に電話をしているんですが、つながらなくて。最近、彼女から連絡はありましたか?どこかへ行くといった話は聞いていませんか?」
「うーん、最後に話したのは一週間ほど前ね。それ以来、私は家にいなかったから」とチェルシーは言った。「でも、あの子は昔からしっかりした子よ。何かあればみんなに連絡するはずだわ」
ローランは彼女に向かって罵声を浴びせたい衝動を抑えた。代わりに彼はこう尋ねた。「あの、リアンナに関して個人的なことをお聞きしてもよろしいでしょうか?お答えになりたくない場合は遠慮なく断ってください」
「ええ、どんな質問かしら?」
「リアンナは養子ですか?」
チェルシー・ローズウォーターは少しの間沈黙した。やがて彼女は答えた。「あなたの言う通りよ、ローランくん。それは個人的な質問だったわね」
「失礼しました」とローランは言った。「とにかく、お忙しいところお電話して申し訳ありませんでした。それでは失礼します」
***
30分もしないうちに、ローランはリアンナのアパートの前に立っていた。私服に着替える手間も惜しみ、彼はエンデクライオン騎士の装束を身にまとったままだった。ドアは開いていたが室内の明かりは消えている。まだ夕方5時頃だったが、12月ということもあり外はすでに薄暗くなっていた。ローランはリビングの明かりをつけたが床に転がっているリアンナのスマートフォンを目にして愕然とした。(彼女はこれを持たずに出て行ったのか?)と彼は思った。
そのスマートフォンを拾い上げるとロック画面には去年の夏に「ナイツレスト・アウトレット・モール」で撮った彼とリアンナのツーショット写真が表示されていた。その写真を切ない思いで見つめた後、彼は画面をスワイプした。リアンナのパスコードを知っていたローランは難なくロックを解除したが、画面を見て驚いた。そこではリアンナのゲームアプリが起動したままになっていたからだ。「ゲームの途中で邪魔されたのか?」と彼は声に出して呟いた。先ほどよりもさらに嫌な予感が胸をよぎる。ローランは目を閉じ、深く息を吸い込んで鼻を利かせた。そして、その匂いを嗅ぎ取った。ごく微かで、ほとんど気づかないほどだったが、その匂いは確かにそこにあった。
クロロホルムだ。
激しい怒りがローランを襲い、彼の瞳が燃えるような赤色に変わった。「誘拐されたのか?」と彼は口にした。「ミストカリアの連中は彼女に選択の余地を与えなかったのか? 本人の意思に反して、無理やりミストカリアへ連れ去ったというのか?」
ローランは立ち上がると決意に満ちた足取りで炎のように赤い目を輝かせながらアパートを飛び出した。「ミストカリアへ行く!」と彼は宣言した。「ミストカリアへ乗り込み、彼女を連れ戻すんだ! これはもう救出作戦だ!」
***
どこかの薄暗いバーで、モルガナ・ブラックハートはワインを味わっていた。隣にはパートナーが座っており、その顔は影に覆われていた。「ミストカリアの連中に、私たちより先に王女を見つけられるとはね」と彼女は言った。「信徒たちを大勢失ってしまった。実に無駄な損失よ」
「いや、少なくとも収穫はあったさ。パルス発生装置の副作用を発見できたのは予期せぬ幸運だった」とパートナーは言った。「それに、王女のことはそれほど心配しなくていい。最も重要なのは、彼女がここミストカリアに連れ戻されたという事実だ。もし『カオス・ジェネレーションズ』が彼女を連れてきていれば計画はもっと容易に進んだだろうが、ミストカリアの連中が連れてきたからといって我々の計画が少しでも変わるわけじゃない」
「全くだわ」ブラックハートはそう言うと、ワイングラスを回してから一口含んだ。「少し前にアリスタ・アルカディアが解任されたのは私にとって好都合だったわね。もし『カオス・ジェネレーションズ』のためにあの王女を確保するという大功を上げれば、アルカンタラ様の次期筆頭弟子に選ばれる絶好の地位を手にできるでしょうから」彼女は隣の男に向き直り、こう言った。「でも正直なところ、パートナー。私たちの計画があなたにどんな利益をもたらすのか、私にはまだ完全には理解できていないのよ」
「最終的な目標については、すでに話したはずだ」と男は言った。「私は『レドゥーラス将軍』の称号を手にすることを目指している」
「そう、だからこの計画がどうあなたの利益になるのか私には理解できないわ」とブラックハートは言った。「『レドゥーラス将軍』はありふれた称号ではない。『カオス・ジェネレーションズ』最強の戦士だけが名乗ることを許され、大魔王様自身によってのみ任命されるものよ。それは『闇の預言者』に隷属するのではなく、対等な地位にある役職でもある。ここ数世紀、その称号を持つ者は現れていない。それを目指すと言うのかしら?」
「その通りだ」男はワイングラスを揺らしながら言った。「野心の極みとは頂点を目指すことにあると私は考えている。『カオス・ジェネレーションズ』において、それはすなわち『レドゥーラス将軍』の座だ。だが、頂点に立つには着実な歩みが必要となる。だからこそ、この計画で名を上げようとしているのだ」彼はワインを一口含んだ。「だが認めよう。君と手を組むのには個人的な理由ももう一つある。私は王女と結婚し、我が子孫をミストカリアの王に据えたいと考えているのだ。それこそがミストカリア人として私が到達したい頂点なのだよ」
「あら、実に興味深いわね」とブラックハートは言った。「その役割は象徴的なものかもしれないが、アルカンタラ様の意図は大魔王様が復活した際に王女を花嫁として差し出すことだったのよ。それなのに、あなたは彼女を自分の花嫁にしようとしているのかしら?」ブラックハートは少し考え込んだ後、こう言った。「あら、それが、あなたがレドゥーラス将軍になりたい本当の理由なの?そうすれば、アルカンタラ様の決定を覆せる権力の座に就けるでしょうから。」
「どう考えても構わない」と男は言った。「いずれにせよ、私の真の野望はカオス・ジェネレーションズの信徒としてレドゥーラス将軍であろうと、ミストカリアの王であろうと頂点に立つことだ。」彼はグラスを手に取り、ブラックハートの方を向いた。「いずれにせよこの実りある協力関係を続けようではないか。」
「確かにね」とブラックハートは自分のグラスを手に取り、「王女に乾杯。」
「大魔王様に乾杯。」
「アポカロン・カオスへ栄光あれ。」そう言って、二人はグラスをカチンと合わせた。
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