第四話 馴染みの騎士たち
引き続き、第二章です。お楽しみください。
「こんなこと、今までやったことないわ」とエリザベス・マッカーサーは言った。彼女は騎士団の医療部隊の責任者であり、彼女はエレメンティアンの治癒能力をローランの頬に向けて行使していた。
「ただの擦り傷みたいなもんだよ」とローランは軽く言った。
「銃創じゃないの!」エリザベスはたしなめるように言った。その口調には普段より強めのスコットランド訛りが混じっていた。「『サイリック・シールド』を張っていない超力者なんてただの一般人と同じよ!命を落としていたかもしれないのよ!」
「俺が知りたいのはそもそもどうやって奴らが俺のサイリック・シールドを無効化したかってことだ」ローランは言った。エリザベスの手から放たれていた光が消えると同時に痛みも完全に引いていった。ローランは手鏡で自分の頬を確認し傷跡一つ残らず治っているのを見て安堵した。
「もっと気をつけてよ!」エリザベスはきつい口調で言った。「騎士たちにサイリック・シールドを過信しすぎるなといつも言っているのはあなた自身じゃない!自分では守らないのに、人に助言して何の意味があるの?」
「あのなあ、俺の身に起きたのは例外的な事態だったんだよ」ローランはそう言いながら立ち上がり、歩き出した。「サイリック・シールドってのは攻撃を受けると徐々に弱まっていくものだろ。さっきのみたいに一瞬で完全に消え失せたりはしないはずなんだ」彼は別の少女に近づき、声をかけた。「よう、メレディス。仕事には慣れてきたか?」
「えっ?」騎士見習いであり、治癒騎士の卵でもあるメレディス・テランスはエリザベスの医療用具を清掃する手を止めて顔を上げた。「あ、ローラン……いえ、団長! ええと……はい。順調ですよ」。『カオス・ジェネレーションズ』との一件からメレディスがこれほど回復したことには驚かされるものがあった。ほんの数週間前、彼女はカオジェンの一派に拉致され、真の目的がいまだ解明されていない儀式への参加を強要されたのだ。判明しているのは彼女が上級職超力者の中でも極めて稀な「赤髪と緑の瞳」という遺伝的特徴を持っていたために標的にされたということだけだった。
「エリザベスにこき使われてなきゃいいんだがな」とローランが言った。
エリザベスは呆れたように目を回し、皮肉っぽく言った。「私がこの可哀想な子をこき使うわけないでしょ」。ローランは彼女を見てニヤリと笑った。それからエリザベスは、より穏やかな口調で言った。「メレディス、掃除が終わったならもう行っていいわよ」
「ありがとうございます、マッカーサー先生」とメレディスは手短に会釈した。
「エリザベスよ」と医療部隊長は訂正した。エリザベスの方がメレディスより一つ年下であることを考えると二人のこのやり取りはなかなか面白いものだとローランは思った。
「エリザベス」とメレディスは言い直した。彼女はローランの方を向き、「カイルを見かけませんでしたか?」と尋ねた。
「トビーと一緒にジムにいるはずだ」とローランは言った。「俺も今からそこへ行くところだったんだ。一緒に行くか?」メレディスが頷くと二人は医務室を後にした。数分後、二人はジムに入った。
二人が入ってくると「やあ!」と聞き覚えのある声が響いた。体育館の中央に設置された四角いリングでトビー・ハートウェルが前腕に爪の武器を装着した黒髪の騎士――カイル・サンダース――とスパーリングを繰り広げていた。
「腕を上げましたね」トビーはそう言いながらカイルが繰り出す爪の攻撃をすべて大鎌の刃の部分で軽々と受け流していく。「まともな戦闘騎士になってまだ数週間だというのに驚くべきことです」
カイルは笑みを浮かべ、「本気はこれからだ!」と宣言した。彼は空中に跳び上がると両手に「エレメンティアン」の風の力を集め始めた。頭上で凝縮された風を小さな空気の球体にまとめ上げるとそれをトビーに向かって放った。「くらえ!」
空気の球がトビーの肩に激突した。だがトビーはその衝撃の勢いを利用して体を回転させトランプのカードを一直線にカイルへと投げつけた。カードはカイルの額に直撃し彼を地面に叩き伏せた。
「エレメンティアンの力を制御しきれていないですね」とトビーは言った。「それには修練が必要です」
カイルはすぐに立ち上がり、戦う構えをとってニヤリと笑った。「もう一回だ!」
「ねえ、もういい加減にしたら?」近くの弓術場から、女性の声が聞こえてきた。「もう二時間近くも続けてるじゃない」それはカイルの妹、サーラだった。カイルが赤と青の武闘家風の衣装を身にまとっているのに対し、その金髪の少女は白いローブにフード付きの茶色いポンチョを羽織っていた。兄をたしなめながら彼女は弓に矢をつがえ標的のど真ん中へと放った。だが、その矢は標的に当たっただけでなく、それを完全に粉砕してしまった。「やった! 『シールド・エクステンション』のコツ、つかめてきたかも!」彼女は嬉しそうに声を上げた。
「お前だってもう二時間くらい練習してるんじゃないか?」カイルが尋ねると、サーラは彼に向かってあっかんべーをしてみせた。
「はい、そこまで」ローランが言った。「二人が腕を磨く姿を見るのはいいものだがそろそろ切り上げる時間だよ」
「こんにちは、カイル」メレディスが彼に歩み寄りながら声をかけた。
「ああ、やあ、メレディス」カイルは照れくさそうに微笑んだ。
ローランはカイルとメレディスが互いにとても近い距離に立っているのにどこか微妙な距離感があり、二人ともそわそわしながら恥ずかしそうに微笑んでいる様子に気づいた。二人が付き合い始めてからほぼ一ヶ月が経っていたがローランはメレディスが救出された時の初キス以来二人が再びキスをしたのかどうかふと疑問に思った。
「サンダースさん、サンダースさん、どう思われますか?」と彼は尋ねた。
「うーん、そうですねぇ」とサーラは真剣な口調で言った。「本を読んでいて、二人の登場人物が互いに遠回しな態度をとっているのを見て、『お互い好きなのは明白なんだから、さっさと告白しちゃいなさいよ!』と叫びたくなるような感覚ですね。ただ、この二人は既に気持ちを伝え合っているので、『もうキスしちゃえばいいのに!』という感じです。」
「二人とも、俺たちの関係に口出しするのはやめてくれないか?」とカイルは言い放った。 「おっ、RJ。どうして俺たち抜きで任務に出かけたんだ?俺たちが対処する準備は万端だって知ってるだろう?」
正直なところ、ローランはカイルとサーラを連れて行かなくてよかったと思っていた。自身の「サイリック・シールド」に起きたあの事態を考えれば二人にはまだあのような状況に対処するだけの経験が足りなかったからだ。「確かにそうだが、お前たちがいつ現場に出られるかを決めるのは俺だ。エンデクライオンの騎士たるもの、騎士団長の命令に従うことも学ばねばならんからな。まあ心配するな、明日にはかなり重要な任務が控えているんだから」
「へえ、それは一体どんな任務で?」カイルがにやりと笑って尋ねた。
「高校の進路指導だ」
***
エンデクライオン本部から遠く離れたどこかの薄暗い部屋で、一人の女性が肘掛け椅子にゆったりと腰掛け灯りの下で本を読んでいた。一言で言えば彼女はセクシーだった。艶やかなブロンドの髪が肩に流れ落ち、完璧なボディラインは黒の体にフィットしたドレスに包み込まれていた。しかし、氷のように冷たい青い瞳は冷ややかで、その微笑みには温かみが感じられなかった。
「ブラックハート殿」と、影の中から低い男の声が聞こえた。「アポカロン・カオスに栄光あれ」
モルガナ・ブラックハートと名乗るその女性は顔を上げた。「こんばんは、パートナー。アポカロン・カオスに栄光あれ」と彼女は答えた。「それで、ナイツレストのエージェントたちは標的を見つけましたか?」
「残念ながら、まだです」と男の声が言った。「だが、彼らは君に知らせる価値のある実に予想外の発見をしたようですよ」壁に映像が映し出された。「このチームは実験的な電磁パルス発生器を持ち込んでいました」
ブラックハートはプロジェクターに映し出された映像を観察していた。「ふむ、手榴弾を使いすぎたわね。全く繊細さが欠けているわ」と彼女は言った。映像が再生され続けると彼女はそれについてコメントを続けた。「まあ、もし彼らがローラン・エカルドに遭遇したのならこのチームは間違いなく全滅したと考えていいわね」しかし、次に起こったことを見て彼女は目を見開いた。「待って、あれは何?あれは今…」
「ええ、見たままの通りです」と、その男の声は言った。「どうやら、あの実験的な電磁パルス発生装置には予期せぬ副作用があったらしい」
ブラックハートは目を細めた。「サイリック・シールドを無効化できるんですね」
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