第二話 新ミッションスタート
引き続き第二章です。お楽しみください。
18年後……
リアンナ・ケリスは、ある素晴らしい夢を見てはっと目を覚ました。ヘーゼル色の瞳から眠気を追い払うように瞬きをすると彼女は自分が夢に見ていたような壮麗な宮殿ではなく聖アヴィントン私立学園の図書室にいることに気づいた。
「図書室で居眠りなんて君らしくないね」リアンナが顔を上げるとそこには眼鏡をかけにやりと笑みを浮かべた親友ローラン・エカルドの姿があった。「自習の時間に、あの『完璧な優等生』のケリス嬢がうたた寝をしていたなんて聞いたら先生方はどう思うかな?」
「もう、からかわないでよ」リアンナはうんざりした様子で言った。「またあの夢を見たの」
「え、あの宮殿のこと?」ローランは言った。「君は僕が君を知ってからずっとその夢を見ているんだね。もうどれくらいになるかな?12年くらい?」
リアンナは微笑んで言った。「本当に月日が経つのは早いわね。」
「初めて会った時のこと覚えてる?」ローランは言った。「小学校1年生、僕たちは6歳だった。入学初日だよ。」
「まるで昨日のことみたい」リアンナは懐かしそうに微笑んだ。「あなたの弟はすごく興奮していてカイルとすぐに意気投合したわね。あなたはというとどちらかというと内向的だったわ。」
「それは五十歩百歩だよ。僕の記憶が正しければ君はいつも隅っこで一人自分の倍もある分厚い本に没頭している静かな本の虫だった。」
「そして、何も変わっていないわね」リアンナは皮肉っぽく言った。
二人は顔を見合わせて笑い作業に戻った。手を動かしながらもローランは数秒おきにリアンナの方をちらりと見ていた。どうやら何か気に掛かることがあるようだ。
「あの、リアンナ。数週間前に話したこと覚えてる?」ローランが切り出した。赤褐色の髪の少女は不思議そうな表情で顔を上げた。「約束した『1ヶ月』という期間にはまだ少し早いんだけど……」
「ローラン?」リアンナが尋ねた。「何の話?」
ローランは唾を飲み込んだ。彼がいくぶん緊張しているのは明らかだった。「実はね、リアンナ。僕の本当のところは――」その言葉は、突然ポケットから聞こえてきた電子音に遮られた。明らかに苛立った様子でローランはスマートフォンらしき端末を取り出し電源を入れた。それを耳に当てると彼は吐き捨てるように言った。「今、忙しいんだよ!重要な用件なんだろうな、トビー」
「えっと、学校の図書室はスマホ禁止よ」リアンナは不意を突かれた様子で言った。
「スマホじゃないよ」ローランは呟いた。「トビー?」
「申し訳ありません、団長」通信機の向こうから声が聞こえた。「カオス・ジェネレーションズの活動が報告されています。」
「まあ、戦闘騎士の部隊に任せればいいだろう…ああ、そうだ。新米のサンダース兄妹を除いて全員海外にいるんだ。」ローランは疲れたようにため息をつきぶつぶつと呟いた。「わかった、自分で対処する。」
通信機を切ると、ローランはリアンナの方を向き、「急ぎ足で行く。任務が待っている。また後で。」と言った。
「えっ…ローラン!」リアンナは叫んだ。彼女が引き止める間もなくローランは図書館から姿を消した。リアンナは首を振りながら、「任務?」と呟いた。
***
数秒後、ローランは校庭の片隅にある人目につかない場所にいた。ひときわ奥まった場所にある木に歩み寄ると彼はその樹皮にある節の一つを叩いた。すると樹皮の一部が開きデジタル式のテンキーが現れた。周囲に誰もいないことを確認しローランはそのテンキーに一連の数字コードを入力した。シューッという音と共に大人の男性が一人入れるほどの大きな空間が木の中に開いた。ローランがその開口部へ身を滑り込ませると入り口の扉はすぐに閉まった。
ローランは高速カプセルに乗り込み狭いトンネルの中を猛スピードで移動していた。カプセルの脇を次々と過ぎ去っていくトンネルの照明など彼には目に入らない様子だった。「トビー」と彼は言った。「モリソンに準備作業に取り掛からせろ。俺は車を使う」
「承知いたしました」トビーの声が即座に答えた。
それから間もなくカプセルは停止し、ローランはエレベーターの扉を抜けてエンデクライオン本部内の「メカニック・エリア」へと足を踏み入れた。
ローラン・エカルドは、「エンデクライオン騎士団」の騎士団長を務めていた。この組織は超力者の人々を監視し、守ることを使命としている。彼らは自由と正義を重んじ超力者の平和を守るために戦う上級職超力者騎士たちの集団であった。
エレベーターから降りたローランの姿は学校にいた時とは一変していた。制服の代わりに身にまとっていたのは深いVネックの濃紺のノースリーブ・ボディスーツでそれは武道の道着を思わせるものだった。その下には深紅の長袖クルーネックシャツを着ており袖口は肘のすぐ下まである白い手袋の中へと続いていた。手袋の上からは濃紺のリストバンドが覗いている。赤いベルトでボディスーツを留め、スーツの裾はそれまでの靴に代わって履かれた鮮やかな黄色の靴底を持つ白いブーツの中へと収まっていた。赤茶色の瞳を覆っていた眼鏡はもうなかったが額に巻かれた赤いヘッドバンドにもかかわらずこげ茶色の髪は相変わらず無造作に乱れたままだった。
「報告を」ガレージ・エリアへと歩きながらローランは命じた。彼の副官である副団長トバイアス・ハートウェルがローランのもとへと歩み寄ってくる。長い金髪の下には赤いバンダナを巻き、背中には大きな鎌を背負っていた。
「団長、カオス・ジェネレーションズの信徒たちがナイツレストの町役場を襲撃したとの報告が入りました」
ローランは不意に足を止め明らかに当惑した様子で言った。「町役場だって? カオジェンが町役場に何の用があるっていうんだ?」
トビーは肩をすくめて答えた。「最近、彼らの動きにはかなり不穏な点が見受けられますから」
「ああ、だがそれは主にジェイムソン・カーンのせいだったろ。あいつはもう死んじまったしな」ローランは首を振ると、こう続けた。「まあいい。とにかくエイオン・ストライカー号を起動してくれ」
「こちらへどうぞ、団長」白衣をまとった長身の黒人男性――「騎士団」技術部隊の責任者、コーディ・モリソンが声をかけた。「団長の仕様に合わせて完璧に調整してあります。ですが団長、今回はくれぐれも慎重にお願いしますよ」
「慎重に、だと? 俺はいつだって慎重だ」
「エカルド団長、前回は車を空中に飛ばした挙句、石壁に激突させていましたよね」モリソンは淡々と言い放った。
「じゃあ今回はレンガの壁に突っ込んでやるよ」ローランはニヤリと笑った。「俺に任せろ。お前は機械いじりでも何でも好きなことをやってりゃいいんだ」
「サンダース兄妹を同行させましょうか?」とトビーが尋ねた。
「いや、カーンやソランとの一件の疲れがまだ残っているだろうからな」ローランは素っ気なく言った。「心配するな、俺一人で十分だ」
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