第二十二話 最終決戦突入
どうぞ、お読みください。 もし、難しい漢字などがありましたら是非教えください。
「やっと来たか」ローランが、自分がソランを吹き飛ばした穴を見つめる中、カイルは苛立ちながら言った。
「すまん、ちょっと遅れて」ローランは言った。「お前たち大丈夫か?」
「ええ、教団で最も危険な暗殺者の一人を倒せたので私たちは大丈夫だと思うわ」サーラは言った。
「それはすごい偉業だ」ローランは言った。「エッグゼービエル・ソランを倒した新米戦闘騎士はそう多くはない」
「あなたもその一人なの?」サーラは尋ねた。彼女はソランがローランと初めて会った時の話を彼らに伝えた。
ローランは呆れたように目を回し、こう言った。「マジで? いやいや、そこまで大げさな話じゃないって。ガキ大将連中をちょっと懲らしめたようなもんだよ。遊園地で友達と待ち合わせに向かってる途中でいきなり剣だの槍だのを振り回す連中――それも30人だぞ――に襲われたら誰だってイラつくだろ?」
「ちょっと待てよ」とカイルが言った。「それって、3年前にコニーアイランドで俺とリアンナとの待ち合わせに1時間近く遅刻した日のことか?」彼は鼻で笑いながら続けた。「どうりで、少しボロボロになってたわけだ」
「その通り」とローランドは言った。「やれやれ、ソランがあの連中の内にいたとは気づきもしなかったよ。あいつと本当に親しくなったのは……まあ、お前の親父さん絡みの件の後だったからな」彼は首を振ると言った。「よし、お喋りはここまでだ。さあ、行くぞ!」
***
2対1という状況が有利であることは否定できなかった。トビー・ハートウェルとダンテ・ゴーシャンの戦いにエヴァナンスが加わったことで戦況はゴーシャン有利へと傾いていた。だが、三つ巴の激闘が延々と続いた結果全員が荒い息をつき疲労の色が濃くなっていた。
トビーは息を弾ませながらもその邪悪な笑みをさらに深め鎌を構えた。「どうした?」と彼は息の合間に言った。「お前ら二人ともその程度か?」
「お馬鹿さんね」とエヴァナンスは荒い息を整えながら吐き捨てた。「自分が消耗させられていることにも気づかないのか? そのうち疲れが押し寄せてその不敵な笑みも維持できなくなるわよ!」トビーが突然笑い出すとエヴァナンスは「何がおかしい?」と声を荒らげた。
「俺たちは『フィジカル』なんだよ、ねえちゃん」トビーは答えその笑みをさらに傲慢なドヤ顔になった。「『エレメンティアン』と比べて俺たちが持つ最大の強み、それはスタミナだ。フィジカル同士の戦い以外では決して疲弊しないと言われるのが俺たちフィジカルだ。それなのに、フィジカル2人対1人という状況でお前ら二人が俺と同じくらい息を切らしている。それがどういうことかわかるか?」
ゴーシャンはその意味を即座に理解した。彼は怒りの咆哮を上げトビーに向かって真っ直ぐ突進した。トビーは鎌を縦に大きく振り回して突進をかわすと同時にその鎌の背でゴーシャンの後頭部を強打した。エヴァナンスはトビーの意識がゴーシャンに向いている隙を突いて彼の顔面を蹴り上げた。不意を突かれまいとトビーも即座にエヴァナンスを蹴り返す。しかし、ゴーシャンが背後から不意にトビーへと飛びかかった。ゴーシャンはトビーの鎌の両端を掴むとそれをトビーの喉元に押し当て自身の胸にトビーの頭を密着させるようにして彼を完全に封じ込めた。冷静さを保とうと努めながらトビーが鎌を押し返そうともがいていると、天井から影のような人影が飛び降りゴーシャンの顔面に強烈な飛び蹴りを叩き込んだ。突然拘束から解放されたトビーが体勢を立て直すと、そこには身を低くしたアイリーン・ローレンスの姿があった。
「わりぃな、どうやらあんたには借りができたみたいだ」とトビーは答えた。
アイリーンは彼を睨みつけ、「あなたが『邪悪ドS』モードだと知っていたらこんなことしなかったわ」と言った。
「おれが『ナイスガイ』モードだったら何か違いがあったのか?」とトビーは言い返した。「手伝いたくないなら今回は関わらなくてもいいよ」
「私に言わせれば、あなたも彼らと同じように殺人犯の可能性がある」とアイリーンは吐き捨てるように言った。
「俺には分からねえよ、誰も殺したことがないからな」とトビーは言った。「誰にでも殺人犯になる可能性はあるんだ。それに、もし俺が本当に殺人犯だったらローランは俺をエンデクライオン騎士団に入れなかっただろう」
「判断を誤ったのよ」
「いつも彼を崇拝しているくせに」
「黙れ、馬鹿ども!」とゴーシャンは叫んだ。「お前らは今すぐ死ぬんだ!」ゴーシャンは再び拳を振り上げ二人の騎士に向かってまっすぐに走り出した。
「ああ、そのセリフはもう聞き飽きたよ」とトビーは言った。彼は身をかがめ鎌を180度振り回してゴーシャンを転ばせた。アイリーンは前に走り出しゴーシャンの顔を踏みつけた後、エヴァナンスが短剣を振りかざして高くジャンプしたのと同時に空中に飛び上がった。空中で、アイリーンはエヴァナンスの顔面に飛び蹴りを食らわせた。エヴァナンスは朦朧としたまま床に倒れ込んだ。
その間に立ち上がったゴーシャンは、ガントレットでトビーの鎌の斬撃を必死に防いでいた。好機と見たトビーは身を翻して鎌を振るいゴーシャンの胸元を強打する。サイリック・シールドに刃が叩きつけられ金属的な音が響き渡った。トビーは鎌を振るった勢いのまま回転しアイリーンと激しい攻防を繰り広げていたエヴァナンスへと斬りかかった。トビーの注意がエヴァナンスに向いた隙を逃さず、アイリーンは勢いよく後ろ蹴りを繰り出しゴーシャンの腹部を直撃させた。
アイリーンが放った回し蹴りが不意を突く形でゴーシャンの顔面を直撃した。だがゴーシャンはそのままアイリーンを強烈なベアハッグで捕らえ返す。締め上げられ、アイリーンは苦しげに息を漏らした。エヴァナンスの短剣攻撃を大鎌で防いでいたトビーは、その気配に気づく。エヴァナンスを蹴り飛ばすとトビーは身を翻し手にしたカードの一枚をゴーシャンの左上腕部へと投げ放った。痛みにうめき声を上げたゴーシャンの腕の力が緩む。その隙を逃さず、アイリーンは両脚を振り上げゴーシャンの股間へと真っ直ぐに蹴りを叩き込んだ。
ゴーシャンは激痛に絶叫しアイリーンを地面へと放した。敵同士とはいえトビーは思わず顔をしかめた。男性にとって「サイリック・シールド」ですら完全には守りきれないあの部位の弱さを彼も痛いほど知っていたからだ。だが、トビー・ハートウェルは好機を逃すような男ではない。大鎌の刃先を地面に突き立てるとその反動を利用して跳躍しエヴァナンスの顎を蹴り上げた。空中で後方宙返りを決めるとそのままゴーシャンの頭上へと舞い降り両足でその頭を踏みつけたのだ。トビーは足でゴーシャンの顔面を石の床へと叩きつけ着地の衝撃で床には亀裂が走った。こうして、ダンテ・ゴーシャンは完全に戦闘不能となった。
「ダンテ!」エヴァナンスは叫んだ。「よくも私の恋人にそんなことを!」
トビーは両眉を上げた。「本当か?ふむ、そうだろうと思っていたよ。」
「毒のあるカップルね」とアイリーンは言った。
エヴァナンスは悲鳴を上げ二人に向かって走り出した。間髪入れずに二人の騎士はシャドウ・ストーカーに投擲物を投げつけた。トビーはカード、アイリーンはクナイだ。エヴァナンスは突然両腕を壁に押し付けられ二つの投擲物が袖に突き刺さった。ほんの一瞬後、トビーの左手が彼女の顔を覆った。突進の勢いを利用してトビーはエヴァナンスの後頭部を背後の壁に叩きつけ石壁に深い亀裂を生じさせた。最後の一撃で、アニータ・エヴァナンスは敗北した。
「やっと終わったな」トビーは倒れた敵を見下ろしながら唸った。彼は背筋を伸ばし、その瞬間、目に宿っていた悪意に満ちた光は完全に消え去った。「では諜報部隊長」と彼はアイリーンに話しかけ、「我々の現在の窮状を治安部隊長に伝えておいてください。残念ながら、私は先に行かなければならないので。団長は私の助けを必要としていると思いますから」トビーが走り去るとアイリーンは苛立ちながら首を振った。トビーがこんなにも急に態度を変えるのを見るのは実に困惑させられるものだった。
***
ローラン、カイル、サーラの三人は円形劇場へと続く残りの階段を急いで駆け上がった。数人の信徒が立ちはだかろうとしたがローランの敵ではなかった。騎士たちが円形劇場に通じる扉を勢いよく押し開けるとそこには祭壇との間を隔てる果てしない深淵が待ち受けていた。「くそっ、橋を焼き落としやがったか」とローランは苛立ちを露わに呟いた。
カイルにとって橋や深淵などどうでもいいことだった。彼の目に映っていたのは祭壇に縛り付けられうつ伏せに倒れている赤髪の少女の姿だけだった。「メレディス!」と彼は叫んだ。
カイルの叫び声は両腕を大きく広げて祭壇の前に立っていたカーンの注意を引いた。カーンは騎士たちを見上げ、「無能なシャドウ・ストーカーどもめ」と吐き捨てるように睨みつけたがそれでも再び目を閉じ詠唱を続けた。
「持ちこたえてくれ、メレディス! 今行くぞ!」とカイルは叫んだ。彼は深淵に向かって飛び込もうとしたがローランに制止された。
「待て待て。『騎士団』の掟で自殺は禁止だぞ」彼は火球を練り上げるとカーンに向けて放ったがそれは深淵の途中に張られたフォースフィールドに阻まれ弾き返されてしまった。「まずいな。エレメンティアン対策のフォースフィールドを張っている。俺の炎もカイルの風もあいつには通用しない」次にグラップル・ショットを放ってみたものの祭壇に届くほどの長さが足りなかった。彼はカイルの方を向き、「カイル、ロケットボードを持っているか?」と言った。
「1階に置いてきちゃったよ」カイルはうめくように言った。「サーラの矢はどうだ?」
「カーンのサイリック・シールドには効果がない」ローランは言った。「彼女が『シールド・エクステンション』の技を極めていない限りはな」
「悪いけど無理ね」サーラは言った。「じゃあ、飛び越えるのはどう?」
「俺たちはノミか何かか? 上級職超力者でも跳躍距離には限界があるしこの深淵の幅はその範囲を超えている」ローランは言った。「おそらく橋が焼き落とされたときからそういう狙いだったんだろう」
「ロケット噴射で向こう側へ飛ぶのは?」とサーラが尋ねた。
ローランは首を横に振った。「あのフォースフィールドに触れた途端、俺の炎は消えてそのまま真っ逆さまだ。グラップル・ショットが届く範囲に入る前にそうなるだろうな」
「何かいい考えはないか?時間がないぞ!」カイルは叫んだ。
ローランは少し考えた後、目が輝いた。彼はカイルの手首を掴み、「一つ!あのフォースフィールドから抜け出したら風の力を使って祭壇まで進むんだ」と言った。
「えっ?」カイルが反応する間もなくローランはカイルを空中に振り回しながらぐるぐると回転し始めた。計算された炎の噴射を使いローランは回転速度をどんどん上げついにカイルの手首を離した。恐怖に震えるカイルは深淵の反対側へと吹き飛ばされた。
『エンデクライオンの騎士団』を読んでありがとうございます。前書きにも書きましたがもし、難しい漢字などがありましたら是非教えください。物語は続きますのでこれからもお楽しみください。




