第二十一話 サンダース兄妹vs.ソラン
どうぞ、お読みください。 もし、難しい漢字などがありましたら是非教えください。
サーラは数多くの人々の命を奪い、自分の父親を死に追いやった張本人であるソランを睨みつけた。ソランは視線を兄妹の間に往復させた。
「メレディスはどこだ?」カイルが問い詰める。
「円形闘技場にいる。儀式の時刻が迫っているからな」ソランは答えた。「彼女の勇敢さには感心させられたよ。お前たち二人も同様だ。エカルド抜きでよくぞここまでたどり着いたものだ。そういえば、奴はどこにいる?」
「あなたに教えるわけないでしょ」サーラが吐き捨てるように言った。
「神殿の罠にでもかかったんだろう」ソランは言った。「奴ならもっとうまくやると思っていたがね。とはいえ、あの程度の罠など奴にとっては取るに足らない障害に過ぎない。すぐに現れるはずだ。私はただ、お前たち二人を始末して奴が来るのを待てばいいだけのことだ」
「そんなに簡単にいくと思うなよ」とカイルは吐き捨てた。「俺たちは今や正真正銘のエンデクライオン騎士だ! お前が祭りで俺を倒したみたいに今の俺たちを倒せると思うなよ。」
「ただの肩書きだ」とソランは言った。「ローラン・エカルドを除けば、私と渡り合えたエンデクライオン騎士は一人もいない。トバイアス・ハートウェルも、エカルドの弟でさえも、一人残らずだ!」
カイルとサーラは顔を見合わせた。「一体何を根拠にそう言うの?」とサーラが尋ねた。
「ほう? エカルドは一度もその話をしたことがないのか? てっきり、自分の輝かしい勝利の話を臣民に自慢げに語るものだと思っていたがな」とソランは唸った。「よろしい、では貴様らもその話を知っておいた方がいいだろう。」
ソランに気づかれないようにサーラはカイルにそっと頷いた。カイルは頷きに気づき静かに左手に蔓を巻きつけ始めた。ソランはそれに気づかず話をし始めた。
「3年前の私は、今もそうであるように、『カオス・ジェネレーションズ』最強のシャドウ・ストーカーであり預言者アルカンタラ様の直属の暗殺者、そして史上最も多くのエンデクライオン騎士を葬り去った男だった」彼はその兄妹にちらりと視線を向け、「貴様らなら理解できるだろうが」と言い添えた。「ある日のこと、私はある若き新米戦闘騎士の暗殺を命じられた。その騎士はニューヨーク地区にある『カオス・ジェネレーションズ』の各拠点で騒ぎを起こし始めていたのだ。預言者様は私に10人のシャドウ・ストーカーと20人の信徒からなる部隊を率いてその騎士を討つよう望んだ。私はそれが不合理であり任務は私一人で十分だと彼女に指摘した。だが結局、彼女は預言者様だ。私はしぶしぶ他の9人のシャドウ・ストーカーと20人の信徒を率い、見習い騎士の訓練を終えたばかりのたった一人の戦闘騎士に挑むことになった。我々に何が起きたか、わかるか?」ここでソランの顔は、純粋な憎悪と屈辱に歪んだ。「完全なる敗北だ! 『カオス・ジェネレーションズ』の30人もの戦士が15歳の新米一人に打ち負かされたのだ! 生還できたのは私を含め3人のシャドウ・ストーカーと2人の信徒だけ――それも、無事生還などと言える代物ではなかった。残りの者は全員『ヘレコン』に叩き込まれ今もそこに囚われている。あの騎士は異質だった! 奴は速かったが必ずしも最速ではなかったし、強かったが間違いなく最強でもなかった。だが、奴の技術と炎の戦術的運用に対する――まるで神の領域にあるかのような――理解力が組み合わさっていた。念動発火から放たれる圧倒的なサイリック・パワー。そしてあの瞳……我々の誰も知らないほどの激しい怒りを宿し血のように赤く燃え盛る瞳が……」
「それで、ローラン・エカルドはカオジェンたちの間で一種の『天敵』になったのね」とサーラは言った。「でも、あなたが彼をあれほど憎む理由はあの日にローランに完敗したからじゃないわ。そう、あなたが今ここに立っているからよ」
「何だって?」ソランは驚愕した表情でサーラの方を振り向いた。
「ああ、なるほど」とカイルは言った。「ローランは人を殺さない。だが、その方針を維持するためには常に相手より優れた腕前を維持する必要がある。そして、一人も殺さずに30人の暗殺者を完全に打ち負かすこと以上に自分の優位性を示す良い方法があるだろうか?」カイルはニヤリと笑って言った。「あの日、屈辱を味わうより殺された方がましだったと思っているんだろう?」
ソランの顔は怒りで歪んだ。「俺が恥辱を抱えて生きろとでも言うつもりか?」
「だって、本当のことじゃん」とカイルはニヤリと笑ったまま言った。 「そして、お前はまた敗北を味わうことになるんだぞ!」カイルは突然左腕を振り上げもう一組の爪で拘束具を切り裂き同時にソランに強烈な突風を放った。驚いたシャドウ・ストーカーが1.5メートルほど吹き飛ばされるとカイルはサーラの拘束具も切り裂き彼女も解放した。
ソランがようやくふらつきながら立ち上がったその瞬間カイルは風の力を利用して空を駆け両手に鋭い爪を構えて突進してきた。「何だと?」――ソランが反応する間もなくカイルは気合の声を上げその両手の爪をソランめがけて振り下ろした。ソランはサイリック・シールド越しにその爪の強烈な衝撃を感じ取った。
着地したカイルはそのままシャドウ・ストーカーであるソランに猛攻を仕掛けた。だが不運なことにソランのサイリック・シールドを打ち破るほどの威力はなく決定的な一撃を与えることはできなかった。態勢を立て直したソランは左手を半ば握りしめた状態でカイルの腹部に叩き込んだ。カイルが後ずさりする隙にソランは盾切りの技を繰り出そうとした。しかし、まさに刃が届こうとしたその時、一本の矢が飛来しソランの手を直撃した。その衝撃でソランの刃の軌道が逸れカイルは容易にそれを回避すると、あろうことかソランの後頭部を裏拳で打ち据えた。
足場を立て直したソランが再びカイルを切り伏せようとしたがそこへサーラがすかさず矢を放った。矢はソランの袖を貫きその勢いで彼の腕は斬撃の動作から引き剥がされた。標的を変えたソランは刃を構えたままサーラに向かって一直線に突進した。不意を突かれたサーラは悲鳴を上げたが辛うじて弓でソランの斬撃を受け止めた。
ほんの一瞬後、カイルはソランの後頭部に飛び蹴りを叩き込んだ。ソランが前方に倒れ込む中サーラはその隙に転がって距離を取る。だが、ソランはすかさずカイルの脚を掴むと力任せに担ぎ上げ彼を背負い投げの要領で壁へと叩きつけた。衝撃でカイルがひるむ隙にソランは再びサーラに刃を向けた。サーラは弓でその一撃を受け止めたものの空いた方の拳で右脇腹を強打されてしまう。息が詰まるような衝撃を受けながらもサーラはソランの左腰へローキックを放った。その一撃で生じた隙を突き彼女は転がってその場を離れる。転がりながら素早く矢をつがえしゃがみ姿勢になった瞬間にそれを放った。矢はソランの袖を貫通したがその威力は凄まじく彼は数メートル後方へと吹き飛ばされた。
「愚かな新米め!こんなことで俺をイライラさせるなんて!」ソランは立ち上がりながら怒鳴った。
「イライラさせる?俺たちはイライラさせるどころじゃないと思うけどな」カイルはそう言いながら強風を吹き上げソランを天井に叩きつけた。ソランは落下しながら苦痛のうめき声を上げた。
「それだけか――」ソランは言葉を言い終えることも床に着地することさえできなかった。カイルが再び強風を放ったからだ。今度は風が小さな竜巻となりソランを天井に叩きつけた。ソランは天井に体が擦り付けられ小さな破片が地面に落ちるのを感じながらうめき声を上げた。しかし、竜巻が収まるとすぐにソランは高所を利用して天井を蹴り上げカイルに向かって一直線に飛んでいった。サーラはなんとか矢を放ちソランの額に命中させた。矢はソランの進路をわずかに逸らしカイルは間一髪で身をかわすことができた。
「お前らごときがどうして俺にこんな戦いを挑めるんだ!」ソランは苛立ちを露わにして唸った。「俺はエリートだ。『シャドウ・ストーカー』の中でも最高の実力者なんだぞ。ただの駆け出しにこんな風に立ち向かえるはずがない!」
「それについては俺なりの考えがあるんでね」カイルはそう言うといつの間にかソランの背後に回り込み右手の爪をそのフードの背に向けた。「お前は『暗殺者』だ。影に潜み、影から飛び出し、標的を仕留めるのに必要最小限の力で一撃を加える。……お前の強さや名声の多くは不意打ちという要素に支えられていたんじゃないか? 上級職超力者だって、まさか『盾切り』で不意に殺されるなんて予想もしないだろうからな。だが、お前はあの祭りの時に俺を殺し損ねるというミスを犯した」
「何だと?」ソランが鋭く吐き捨てた。
「お前の『盾切り』は既に見せてもらっていた。つまり、この再戦においてお前の手口に驚かされることはなかったってことだ」カイルは不敵な笑みを浮かべた。「サーラと俺は『騎士』だ。子供の頃から『戦い方』を叩き込まれている。対して、お前は『殺し』のために訓練された暗殺者。確かに見事な戦果を挙げてきたんだろうが今回のような長期戦の殴り合いになればサーラと俺の方が有利だと思わないか?」
ソランは怒りの雄叫びを上げるとくるりと身を翻した。彼はカイルに向かって一直線に突進し半ば握りしめた拳をカイルの胸に叩きつけた。カイルは苦痛の声を上げ、壁へと吹き飛ばされた。サーラは急いでソランに向けてもう一本の矢を放った。だがソランは素早く身を回転させ剣でその矢を打ち返した。不意を突かれたサーラだったが辛うじてその矢をかわす。しかし、ソランの突進に備える余裕まではなかった。ソランに反対側の壁へと激しく押し付けられサーラは悲鳴を上げた。彼の両手が彼女の喉を締め付け始める。
カイルはうめき声を上げながら立ち上がろうとした。(今の攻撃はちょっと痛すぎたな)と彼は思った。(いや、待てよ……。なぜ壁のこの部分だけ他の場所よりこんなに温かいんだ?)
「お前ら新米どもがよくも俺より優れているとでも思っているのか!?」ソランはサーラの喉を締め付けながら唸った。「俺を凌駕できるなんてよくもそんなことを考えたな!?」
サーラは必死に息を吸い込み、目の前が星でいっぱいになりそうだった。なんとか体を動かし右拳をソランの顔の左側に叩き込んだ。ソランの締め付けが緩んだ隙にサーラは彼を蹴り飛ばし咳き込みながら必死に酸素を取り込んだ。「いつ…いつ…私たちが…あなたより…優れているなんて…言ったの?」サーラは息も絶え絶えに言った。
「そんなことは言ってない。ただ、俺たちが有利だって言っただけだ」カイルは言った。「もちろん、俺たちがお前より優れていなくても…こいつは違うぞ!」
カイルは目の前の壁に爪を突き刺し切り裂いた。壁は粉々に砕け散り開いた通気口が現れた。換気口の大きな開口部に寄りかかり、腕を組み、自信満々の笑みを浮かべていたのは他ならぬローラン・エカルドだった。
ソランが恐怖に震えたというのは控えめな表現だろう。「な、なんだと――」
ローランはニヤリと笑い、「遅れてごめん。お詫びの土産だよ」と言った。その直後、巨大な火球がソランを塔の壁を突き破って吹き飛ばし驚愕するシャドウ・ストーカーは塔のはるか下の海へと落下した。
『エンデクライオンの騎士団』を読んでありがとうございます。前書きにも書きましたがもし、難しい漢字などがありましたら是非教えください。物語は続きますのでこれからもお楽しみください。




