第二十話 シャドウ・ストーカーとの戦い
どうぞ、お読みください。 もし、難しい漢字などがありましたら是非教えください。
「先へ進まなくちゃ」とサーラは言った。
カイルは驚いた。「え?ローランなしで?」
「彼は大丈夫だと思うわ」とサーラは言った。「でも、彼を待っている時間はないわ。真夜中までにあの儀式を止めてメレディスを救わなくちゃ」
カイルは歯を食いしばって頷いた。「あとどれくらい時間があるんだ?」
「1時間ちょっとよ」とサーラは答え、カイルと共に螺旋階段を登り始めた。「気をつけて。途中に罠が仕掛けられているかもしれないわ」
「あるいはシャドウ・ストーカーにもな」と、二人が聞きたくなかった声がした。カイルとサーラは立ち止まった。ダンテ・ゴーシャンが影から姿を現したのだ。「これがエカルドが考え出した最善策、新米戦闘騎士か」
サーラは弓に矢をつがえ、カイルは右腕の爪を突き出した。「新米だろうが何だろうがお前らを倒せる」とカイルは吐き捨てた。
「はっ! ありえないな!」とゴーシャンが叫んだ。彼とカイルが互いに向かって突進しサーラが矢を番えたその時、突然風を切る音と共にトランプのカードが飛んできてカイルとゴーシャンの間の地面に突き刺さった。三人はその場で足を止め顔を上げるとトビー・ハートウェルがこちらへ歩いてくる姿を目にした。
「戦闘騎士)よ、我々の最優先事項はメレディス・テランスの救出だ。遅れは許されない」とトビーは言った。彼は大鎌をくるりと回すとその柄の端を地面に突き立てた。「シャドウ・ストーカーとの戦いは私が引き受ける。お前たちは任務を続行してください」
サーラは抗議するように言った。「でも……」
「私の言う通りにしてください、カイル、サーラ」
「行こう、サーラ」とカイルが言った。「彼なら大丈夫だ」
カイルはゴーシャンの横を駆け抜け螺旋階段を上り始めた。サーラは一瞬ためらったもののトビーを最後に一度だけ振り返ると兄の後を追った。
「あいつらと一緒に行けばよかったのに」とゴーシャンは得意げに言った。「ソランはまだあそこにいる。お前がいなければあいつらは生き残れない。お前もあいつらがいなければ俺に勝てないのと同じようにな」
トビーは左手で顔を覆った。「よくもまあそんなことを言いますね、シャドウ・ストーカー。エンデクライオン騎士団は任務を途中で投げ出すことなど決してません。それに…」トビーの声のトーンが変わり、髪をかき上げながら目に邪悪な光を宿し、顔には狂気じみた笑みを浮かべた。「…俺もローランが言うところの『邪悪ドS』モードを仲間たちになるべく見られたくないんでな」
ゴーシャンは、最初は驚いたがすぐにニヤリと笑って言った。「つまり、お前はもう自分の正体を否定しないってことか」
「ああ、俺が元カオジェンだって知っているのか?」とトビーは唸った。彼は鎌をゴーシャンに向け「俺は自分の正体を否定したことは一度もない。かつてカオス・ジェネレーションズの信者だったおれは、あの教団が引き起こす数々の悪行をよく知っているし見て見ぬふりなどできない」と言った。そして鼻を鳴らし、「あと単にお前のような自分の信念に固執する盲信者が気に入らないだけだ」と付け加えた。
「まだ妄想に浸って生きようとしてるのか、ハートウェル?」ゴーシャンは唸った。「まだエカルドの嘘を信じてるの? あんたは洗脳されてるんだ、馬鹿者!」
「洗脳されているのはカオス・ジェネレーションズの信者たちだ」トビーは言い放った。鎌を振り上げ左腕で顔を覆い目を細めた。「ローランに会う前から知ってたさ。あいつが俺にしてくれたのは真実を教えてくれただけだ。それに」トビーは再びゴーシャンに鎌を向け、ニヤリと笑った。「俺みたいなシャドウ・ストーカーの落ちこぼれにも敵わない腰抜けの言うことなんか聞くわけないだろう?」
ゴーシャンにとってそれは明らかに限界点だった。彼は怒りの咆哮を上げ金属製のガントレットを振りかざしながらトビーに真っ直ぐ突進した。土壇場でトビーはゴーシャンの進路をかわし鎌の鈍い側をゴーシャンの後頭部に振り下ろした。ゴーシャンはうつ伏せに床に倒れた。チャンスを逃すまいとトビーは鎌の刃をゴーシャンに向かって振り下ろした。しかしゴーシャンはくるりと向きを変え、腕を交差させてかろうじて籠手で刃を受け止めさらにトビーの腹部に素早い蹴りを2発放った。
ゴーシャンが再び飛びかかろうとする中、トビーは苦痛にうめき声を上げながら後ずさりした。ゴーシャンが次の攻撃を仕掛けるより早くトビーは大振りに鎌を薙ぎ払いその刃でゴーシャンの首の後ろを捉えた。さらにトビーはその勢いを利用して身を翻し相手の後頭部に肘打ちを食らわせる。ゴーシャンは再び床にうつ伏せに倒れ込んだ。トビーは数枚のカードを取り出しゴーシャンに向けて投げつけた。カードが床に突き刺さる中ゴーシャンは何とか転がってそれを回避した。
トビーが再び鎌を振り下ろそうとしたその時、背後に気配を感じた。素早く振り返りトビーは背後の壁に鎌の刃を叩きつけた。驚いたアニータ・エヴァナンスが壁と鎌の柄の間に首を挟まれる格好で押さえつけられた。彼女は明らかに背後から忍び寄ろうとしていたのだ。我に返ったエヴァナンスは柄の下をくぐり抜け、立ち上がったゴーシャンの隣へと移動した。「少し助けが必要みたいね」と、彼女は甘ったるい、吐き気を催すような声で言った。ゴーシャンはただ彼女を冷笑しただけだった。
トビーは壁から鎌を引き抜きながら冷ややかな目でエヴァナンスを見つめた。「二対一か。どうやら正々堂々というわけにはいかないらしいな」彼は再びその顔に邪悪な笑みを浮かべた。「いいだろう。もう手加減は無用ってことだ。そう思わないか?」
***
ローランはうめき声を上げながらゆっくりと立ち上がった。周囲を見渡すとそこは深さ約120メートル、直径約2メートルの円筒状の縦穴の底だった。彼は膝まで水に浸かっており全身びしょ濡れの状態だった。ローランは水を含んで重くなった手袋や服に目をやり、こう思った。(ったく、こいつらは本気でこんな程度の水で俺を止められると思ってんのか? まぁ、不快なことには変わりないけどな。)
ローランは目を閉じ、意識を集中させた。シュッという音と共に周囲の水が一瞬で蒸発し大量の蒸気が上へと立ち上る中彼の服はすっかり乾いていた。満足げに自分が落ちてきた縦穴を見上げ彼は首を振った。苛立たしいことに距離がありすぎてグラップル・ショットでは届きそうになかった。「グラップル・ショットだけで登るにはちょっと高すぎるな」と彼は呟いた。「途中までグラップルで登って残りは火炎能力を使って一気に上昇することもできるが……それだと力を使いすぎるかもしれない。特に、まだソランと戦わなきゃいけないとなると尚更だ」。彼は首を振り、「まあ、やるしかないか。いくぞ」と言った。これから行う急上昇の勢いに備えて気合を入れようとすぐ横の壁を叩いたが、拳が壁に当たって空洞のような音がしたところで動きを止めた。彼は隣の壁をじっと見つめた。
「まさか、こんなに簡単なのか!?」彼は叫んだ。壁に向かって真っ直ぐ火の玉を放ち、壁を吹き飛ばすとそこには神殿の換気システムへと直接つながる穴が現れた。(なんてことだ。本当にこんなに簡単だったとは。現代の換気設備に感謝だな!)
***
そびえ立つ神殿の最上部、ソラン率いる侍祭の一団が円形広場の中央へとメレディスを連行していた。メレディスは堂々と顔を上げ毅然とした態度で歩いていた。その姿に、ソランは少なからず感銘を受けていた。「もっと別の状況であなたとお会いできればよかったのですが」と彼は言った。
メレディスは少し沈黙してから答えた。「残念ながら、私はそうは思いません」
一行が円形広場へと続く橋を渡る中、ソランは「それは惜しいことだ」と応じた。広場の先にある大きな黄金の祭壇のそばでジェイムソン・カーンが彼らを待ち構えていた。
カーンは冷ややかな目つきでメレディスを観察し、「彼女を祭壇に縛り付けろ」と命じた。
メレディスは侍祭たちに抵抗しながらカーンを激しい敵意を込めて睨みつけた。だが、相手はあまりに多く、力も強かった。やがて彼女は祭壇に押し倒され拘束されてしまった。それでもカーンを睨みつけながらメレディスは問い詰めた。「私に何の用なの?」
「なぜ『上級職』の間で赤毛と緑の瞳という遺伝的特徴の組み合わせがこれほど稀なのか考えたことはあるか?」とカーンは尋ねた。「いいかね、お嬢ちゃん。お主が持つその遺伝的組み合わせはあらゆる超力者の血統の中で、たった一つの家系にしか存在し得ないものなのじゃ。単なる遺伝継承の問題だなどと思ってはいけない。あれは『大魔王様』がアルカンタラに命じたことなのだから。彼女はずっと長い間、お主の血筋を探し求めてきた。そして運のいいことに、彼女より先にわしが見つけたというわけじゃ!」カーンがメレディスの頬をなでると彼女は身震いした。「お主の血には、『カオス・ジェネレーションズ』の究極の力が宿っている。お主の中には数千年の間、世界が目にしたことのない強大な力を引き出す可能性が秘められているのじゃ。そして、あと一時間もすればその力は『わし』のものとなる!」
突然、大きな爆発音が寺院の土台を揺るがした。メレディスは拘束から逃れようともがきながら叫んだ。「聞こえた?彼らが来たのよ!私を助けに来てくれたのよ!」
「気づいておる」とカーンは低い声で言った。彼はソランの方を向き、「奴らを始末しろ」と命じた。
「殺しましょうか?」とソランが尋ねた。
「構わない。真夜中を過ぎるまで奴らをここから遠ざけておけ!」ソランが去るとカーンは信徒たちの方を向き、「下がれ!儀式を始めなければならない!」と叫んだ。
***
十数個の落とし穴をかわし、ダーツを避けながらカイルとサーラは狭い通路を抜け小さな体育館ほどの大きさのドーム型の大きな部屋に入った。「ここが塔の頂上に違いないわ」とサーラは言った。「あとは向こう側に行くだけ。そこから橋を渡って円形劇場へ…」
「待った」とカイルは手を上げて言った。「何かがおかしい」
「どうしてそう思うの?」とサーラは尋ねた。
「空気で感じるんだ」カイルは数歩進み、周囲を素早く見回してから立ち止まり、「よけろ!」と叫んだ。
しかし、警告は遅すぎた。数百本の細い蔓が突然地面から伸び出しカイルとサーラの体に巻き付いた。蔓は締め付けを強め二人を地面に引きずり倒し完全に身動きできないように縛り付けた。カイルは蔓が特に右手の爪にきつく巻き付いていることに気づいた。
「動けない…!」サーラは歯を食いしばって言った。
「それが狙いだろう」カイルがよく知っている声がした。フードを被った人物が部屋の向こう側から現れた。彼は歩み寄り兄妹を見下ろした。「このように身動きが取れなくならなければ効果的な罠とは言えないだろう」
カイルは敵を睨みつけ唸るように言った。「エッグゼービエル…ソラン」
『エンデクライオンの騎士団』を読んでありがとうございます。前書きにも書きましたがもし、難しい漢字などがありましたら是非教えください。物語は続きますのでこれからもお楽しみください。




