第十七話 新たな騎士が任命される
どうぞ、お読みください。 もし、難しい漢字などがありましたら是非教えください。
「アイリーン、今日の気象観測で何が映っていたか覚えているか?ニューイングランド沖にずっと霧がかかっているってことだ」とローランは尋ねた。彼とサンダース兄妹、そして数人の騎士たちはエンデクライオン本部の作戦指令室でメインスクリーンの前に立っていた。
「はい、団長、覚えています」とアイリーンは答えた。「ハウラン!」
「すぐに表示します、隊長」とソール・ハウランはキーボードを叩きながら答えた。数秒後、スクリーンにはニューイングランド沿岸の気象図が表示され沖合に濃い霧が発生していることが示された。
ローランはそのスキャン画像をじっくりと調べ上げた。「このスキャンの熱画像を表示してくれ」ハウランが指示通りに操作すると霧のただ中に螺旋状の塔の赤外線画像が浮かび上がりローラン以外の全員が驚きの声を上げた。「ビンゴだ」とローランは言った。「諸君、あれこそがカオジェンの神殿だよ。分院ではあるが、れっきとした寺院だ。メレディスが連れて行かれたのはあの場所だ」
「どうしてそんなに確信できるの?」とサーラは尋ねた。
「『今夜の真夜中までにはすべて終わる』なんて言ったカーンだが、あれは決して賢明な発言とは言えなかったな」とローランは言った。「カオジェンの儀式前の準備段階を考えれば、どんな移動手段を使おうと彼らが遠くまで逃げ去ることはできないはずだ。この霧に包まれた神殿はナイツレストから最も近い場所にある」ローランは考えを口に出しながら続けた。「カーンのエレメンティアンとしての力はフォースフィールドを操るものであって、霧を発生させるものじゃない。つまり、あの霧は神殿に設置された何らかの機械的なシステムによって生み出されているということだ。それが防御機構の一種なのかどうかは断定できないがそうだと想定しておくのが最善だろう。もちろん、単にその神殿の唯一の防御手段が霧であるという可能性もあるがね」
カイルはごくりと息を呑み、「い、一体どんな儀式を行おうとしているんだ?」と尋ねた。
「さあな」とローランは言った。「だが、俺はそれを阻止するつもりだ」彼は振り返ると作戦室から出て行き、トビー、カイル、サーラがそのすぐ後を追った。
「次の作戦は何ですか、団長?」トビーが尋ねた。
「言うまでもないだろう」とローランは言った。「真夜中までにあの神殿を襲撃しメレディスを救出する必要がある。次はチーム編成だ。ソランがそこにいるから俺が指揮を執る。トビー、君にも来てほしい。シャドウ・ストーカーと戦うことになるから戦闘騎士を数名連れて行く必要がある」
「団長、申し訳ありませんが」とトビーは言った。「戦闘騎士は全員現在海外におります」
ローランは苛立ちを露わにした。「なんてタイミングが悪いんだ!」と彼は叫んだ。「隠密騎士や警察騎士はどうだ?彼らを使うことはできないか?」
「信徒と戦うには彼らが必要ですが」とトビーは答えた。「正直なところ、シャドウ・ストーカーと戦うには力不足だと思います」トビーは少し考えてから言った。「もしかしたら、私たち二人だけで何とかできるのではないでしょうか?」
「ソランがいなければそれでいいんだけどな」とローランは言った。「ああ、もう、戦闘騎士があともう一人いれば。ネイサン、アンジェリカ、俺の弟、せめて強力な戦闘騎士があと一人いれば何とかできるのに!」
「ここに二人いるじゃないか」背後からカイルの声がした。ローランとトビーはびくりとして振り返るとそこには決意を秘めた表情のカイルとサーラが立っていた。
「二人とも」ローランは言った。「まだ返事はもらっていないけれど……」
「それ以上は言うな、RJ」カイルが遮った。「俺はやるよ」彼は少しの間黙り込んだ後、こう付け加えた。「ただ、ソランの件については約束できないけどな」
「その時はその時だ」ローランは言った。「それに、そもそもお前がソランとやり合う機会なんて巡ってこないかもしれないしな」
「へえ、新しく加わった騎士に対してずいぶんと信頼を寄せているんだな」カイルは皮肉っぽく言った。
ローランはカイルを無視して彼の妹の方を向いた。「サーラ?」
サーラは頷き、「やるわ」と言った。
「よっしゃー!」ローランは指を鳴らし、にやりと笑った。「さあ、二人とも装備を整えよう」
「装備を?」カイルとサーラが声を揃えた。
「当たり前だろ」ローランはそう言うと、二人を廊下の脇にある部屋へと押し込み始めた。「まさか、普段着のまま『悪』と戦うつもりじゃないだろうな? それ相応の格好をしてもらわないと」そう言って、彼は二人をそのまま隣の部屋へと押し込んだ。
「団長、本当にこれでいいのですか?」トビーが不安げに尋ねた。「二人が幼い頃から戦闘騎士になるための訓練を受けてきたことは承知していますがシャドウ・ストーカーと戦うにはあまりにも経験不足ではありませんか?」
「ああ、確信があるわけじゃない」ローランは認めた。「だが、今の状況じゃ他に選択肢がないんだ」
***
1時間ほど経ってカイルの姿を見ると服装がすっかり変わっていた。スニーカーはそのままだったが新しい濃紺のズボンを履いている。ジーンズに似ているがそれよりもはるかに柔軟で頑丈な素材だ。白い長袖Tシャツの上に鮮やかな赤色で袖のない武道着風のベストを羽織っている。ベストには黒いアクセントが施され黒い武道用の帯で留められていた。背中には金色の円の中に「風」という漢字が描かれている。
「こんな格好をしなきゃいけない理由でもあるのか?」とカイルは尋ねた。
「驚くと思うよ」とコーディ・モリソンが言った。「エンデクライオン騎士の標準装備は戦闘騎士一人ひとりに合わせて特注で作られているんだ。技術騎士たちが特別に設計し組み立てている。制服を着る警察騎士や治癒騎士とは違って、戦闘騎士の装備は各自ユニークなものなのさ。破れにくくて柔軟性が高いし、サイリック・シールドの強度を増幅させて防御力を高めることさえできる」
「それに、戦闘騎士それぞれの仕様に合わせてカスタムメイドされているんだ」と、ローランがメカニック・エリアに入ってきながら言った。「例えば俺のは完全な耐火仕様さ。露出狂になるなんて御免だからね」と彼はニヤリと笑いながら付け加えた。
「じゃあ、俺のは全天候型ってわけか?」とカイルが言った。
「あと、俺の手袋にはグラップル・ショットも仕込まれているんだ」とローランは言い、実演としてその一つを発射し数メートル先の机からソーダの缶を掴み取ってみせた。「俺の発火能力による瞬発的なエネルギーで射出される仕組みで最大50メートルまで伸びる。これを使えば離れた場所にある物を掴んだり垂直な壁を登ったりできるんだ」
ローランがソーダを飲み始める中、モリソンは言った。「あれは団長の要望に合わせて特注で作らせたものです。そういえば、頼まれていた武器もこれです」モリソンは一対の金属製ヴァンブレイス(前腕用防具)を取り出した。
「ああ、まさにこれだよ」カイルはそう言うと、その金属製ヴァンブレイスを腕に装着した。その防具は肘のすぐ下から手までを覆い、手の甲や手のひらの下部までカバーしていた。全体的に黒い色だが縦方向に銀色のスロットが4つ並んでいるのが特徴だ。「これ、どうやって使うんだ?」と彼は尋ねた。
「手のひらが当たるあたりにボタンがある」とモリソンは言った。「それを押してみぃ」
カイルは指を曲げ、右の手のひらの付け根にあるボタンを押した。すると4つのスロットが飛び出し、長さ約30センチほどの爪が4本現れた。それらは途中まで完全に真っ直ぐで先端部分だけが内側に湾曲していた。カイルはにやりと笑って答えた。「最高だ。まさに俺が望んでいた通りだよ」
横からサーラの声が聞こえてきた。「お兄ちゃん、コミックを読みすぎよ」
カイルは妹の方を向き、こう言った。「君だってファンタジー小説を読みすぎだろ。エルフのモチーフを取り入れるにしてもちょっとやりすぎじゃないか?」
サーラは膝丈の白いローブをまとい、その上から茶色の大きなポンチョを羽織っていた。ポンチョには三角形のフードがついておりそれが頭を覆うように被られ、尖った先端部分が額にかかっていた。ローブの下には黒いストレッチパンツを履きその裾は白い、つま先の尖った(ただし反り返ってはいない)靴へと続いていた。ポンチョに一部隠れてはいたが、彼女の腕は露出しており手首のすぐ上から肘のすぐ下までを覆う銀色の腕当てだけが装着されていた。背中には矢の詰まった矢筒と美しい刺繍が施された長さ約1メートルほどの白い弓が背負われていた。
「私はこのモチーフ気に入ってるの」とサーラは言った。
「ああ、そう」とカイルは言った。「でもサーラ、真面目な話、弓矢?サイリック・シールドにはあまり効果がないと思うけど。それにフードまで被ってるの?」
「トビーが使える技を教えてくれたの」とサーラは言った。「まだ使いこなせる自信はないけど。でも、たとえ技がなくても矢は敵の注意をそらしたり周囲の環境を利用したりするのにかなり役立つわ。フードについては、まあ、被害妄想かもしれないけど悪者たちが私を狙っているのは私が女の子だからという気がしてならないの。フードを被れば少なくともその事実を少しは隠せるはずよ。」サーラはカイルをちらりと見て、「でも、お兄ちゃんは?爪?」と尋ねた。
「忍者の鉤爪だよ」とカイルは弁解するように答えた。
「確か、お兄ちゃんの主なスタイルは少林拳だったわよね?」
「わかった、わかった。この素晴らしい兄妹愛の証は大好きだけど次の話に移ろう」とローランは言った。「さあ、二人とも、俺の前にひざまずけ」
カイルは眉をひそめて尋ねた。「どうして?」
「だって俺は騎士団長だからな」とローランはニヤリと笑って答えた。「さあ、ひざまずけ。俺には夜通し時間があるわけじゃないんだぞ」
カイルとサーラは呆れたように目を丸くしてローランの前にひざまずいた。その時、二人はローランが剣の形をした包みを持っていることに気づいた。ローランは兄妹を見下ろし顔からユーモアの痕跡は消え失せていた。
「カイル・ウィリアム・サンダース。サーラ・ノエル・サンダース。お前たちはエンデクライオンの印章と騎士の称号を受けるにふさわしいと認められた。受け入れるか?」
「は、はい、受け入れます」とカイルは言った。
「受け入れます」とサーラは言った。
ローランは頷きながらヘッドバンドを外した。「わかった。では、私の後に続いて誓いの言葉を唱えてください。」
悪を打ち倒し、無辜の民を守るために
騎士の剣が振るい、騎士の名誉が戦う。
正義の力のために、万民の利益のために。
正義の栄光のために、騎士たちよ、集結せよ!
ローランが言葉を言い終えると彼の額で何かがまばゆい光を放ち始めた。それは「騎士団」の象徴である「E」の字を模した稲妻の紋章だった。カイルやサーラが反応する間もなくその紋章は閃光と風を切る音と共にローランの額から飛び出し二人の額へと移り込んだ。
「な、何だ?」カイルは驚いて声を上げた。
「こらこら、また跪くんだ」ローランに言われ、カイルは少し気まずそうな様子で再び膝をついた。「よし、それじゃあ。ここにお前たち二人を『エンデクライオン騎士団』の騎士に任命する」そう言って、ローランは布に包まれた品を手に取り二人の肩に触れさせた。「よし、これで完了だ。堅苦しい儀式はこれでおしまい。さあ、カオジェンの連中を叩きのめしに行こうぜ!」
『エンデクライオンの騎士団』を読んでありがとうございます。前書きにも書きましたがもし、難しい漢字などがありましたら是非教えください。物語は続きますのでこれからもお楽しみください。




