あしがら山の大ピンチと巨大な岩
大グマの墨丸が仲間になってから、数ヶ月が経ったある秋の日のことです。
あしがら山は、赤や黄色の美しい紅葉に包まれていました。
金太郎と動物たちは、冬に備えて木の実を集めたり、枯れ葉のベッドを作ったりして、毎日大忙しで、かつ楽しく過ごしていました。
ところが、そんな平和な山に、突然大事件が起こりました。
その日の午後、山のふもとにある村の方から、何やら困ったような、悲しそうな人々の声が、風に乗って山の上にまで聞こえてきたのです。
耳の良いお鹿さんが、耳をピクピクと動かして言いました。
「金太郎、なんだかふもとの川のあたりが騒がしいよ。みんな泣いているみたいだ」
「本当かい? それはいけない。みんな、行ってみよう!」
金太郎はまさかりを肩に担ぎ、墨丸やお猿、お鹿さんを引き連れて、山の斜面をものすごい速さで駆け下りていきました。
ふもとの川に到着すると、そこには村の人たちが大勢集まり、頭を抱えて泣き崩れていました。
「これでは、畑にお水がいかなくなってしまう」
「飲み水も足りなくなって、村のみんなが病気になってしまうよ。どうしたらいいんだ……」
金太郎が川を覗き込んでみると、なんと、山の上の崖から転がり落ちてきたと思われる、一軒の家ほどもある「巨大な黒い岩」が、川の真ん中にどっしりと居座っていました。
その大きな岩のせいで川の水がせき止められ、村へと流れるはずの水が、すべて別の方向へ溢れ出てしまっていたのです。
村の力自慢の男たちが何十人も集まり、太い綱を岩に結びつけて「うーん、うーん」と引っ張っていましたが、岩はびくともしません。
「みんな、どいておくれ! 僕がやってみるよ!」
金太郎が元気よく声をかけると、村人たちは驚いて振り返りました。
「おや、あしがら山の金太郎じゃないか。いくらお前が力持ちでも、こんなに大きな岩は無理だよ。大人が何十人集まっても動かないんだから」
「大丈夫、任せて!」
金太郎は一歩前に出ると、肩からまさかりを下ろして地面に置きました。
そして、真っ赤な肌の腕まくりをして、大きな岩の前に立ちました。
金太郎は、岩の底に両手を深く差し込みました。
そして、山の土をしっかりと足の裏で踏み締め、お腹の底から、山全体に響き渡るような大声を上げました。
「えい、えい、えーーーーーいっ!!!」
金太郎の体に、みるみると力がみなぎっていきます。
前掛けの「金」の文字が、まるで太陽のようにピカピカと輝いた気がしました。
すると、どうでしょう。
大人が何十人集まっても動かなかった巨大な岩が、「グラリ」と音を立てて動いたのです。
「う、動いたぞ! 金太郎が岩を動かした!」
村人たちから地鳴りのような歓声が上がります。
金太郎はさらに顔を真っ赤にしながら、両腕に力を込めました。
「ぬうううおーーーっ!!」
ズズズ、ズズズズズ!大きな音を立てて、巨大な岩が川底から持ち上がっていきます。
金太郎はその岩を頭の上まで差し上げると、そのまま「ふんっ!」と、川から離れた安全な空き地へと投げ飛ばしました。
ドーーーーン!!!地響きとともに岩が地面に落ちると、せき止められていた川の水が、勢いよく本来のルートへと流れ出しました。
きらきらとした美しい水が、乾き始めていた村の畑へと、勢いよく流れ込んでいきます。
「万歳! 万歳! 川の水が戻ったぞ!」
「金太郎、ありがとう! お前は村の救世主だ!」
村人たちは大喜びで、金太郎のまわりを取り囲み、胴上げをしました。
動物たちも、自分たちのリーダーが褒められているのが嬉しくて、みんなで手を取り合って踊りました。金太郎は、村のみんなの役に立てたことが嬉しくて、お母さんの言葉を思い出していました。
「強く、正しく、優しい子になるんだよ」
金太郎は、これからもその言葉を胸に、この大好きな足柄山と、そこに住むみんなを守っていこうと、心に深く誓うのでした。




